71 念入りすぎる検問
〇バサラークの街・入口
バサラークはバルカ帝国に併合される前は、バサラーク王国の首都だった。
その名残もあって、街の中には大きな王城が残っており、街の周りは立派な城壁で囲まれている。
そんなバサラークの巨大な城門の前には、馬車と人の列が続いていた。
どうやら、街に入る検問を受けるための列のようだ。
その最後尾に並ぶミアの心臓は、期待と緊張で少しだけ早く脈打っている。
「よし、次! …ん? 巡礼中の女神教会のシスターだと?」
検問官の男は、ミアが差し出した銀のクロスには目もくれず、その整った顔立ちと修道着越しの体のラインを舐めるように眺めている。
「簡単なボディチェックをさせてもらうが、構わんな?」
「あ、はい! ・・・どうぞ」
前に並んでいた商人が、特にボディチェックなどされていなかった事に違和感を覚えつつも、ミアは素直に応じる。
しかし、兵士はわざわざ鎧の籠手を外し、剥き出しの手でミアの体に触れ始めた。
「・・・っ」
薄い布地の上から胸や腰を執拗に触れられ、ミアは顔を真っ赤にして唇を噛む。
声が出るのを必死に堪えるが、そのチェックはやけに長く執拗だった…
「…よし、いいぞ! 問題なし。通れ!」
ようやく解放され、安堵して門をくぐろうとするミアに、検問官がニヤリといやらしい笑いを浮かべながら声をかけてきた。
「シスター。教会で寝泊まりするつもりか? 教会は王宮のすぐ横だ。迷わんようにな」
「あ、はい! ありがとうございます」
深々と頭を下げて街へ入るミア。
「意外と親切な人だったのかしら ・・・検問だし、念入りに調べられるのは仕方ないわよね」
ミアは気づいていない。背後で自分を見送る検問官の瞳に、単なる職務ではない、獲物を品定めするような欲望が潜んでいたことに…
言われた通り、王宮の隣に教会は立っていた。
バザルのそれとは比較にならないほど壮大だった。高い天井に、緻密な装飾。
ミアは早速、教会に入り、聖堂にある女神像に膝をつき、祈りを捧げた。
「巡礼のシスターですか?」
落ち着いた声に顔を上げると、そこには薄いライトグリーンの髪をボブカットに切りそろえた、いかにも清楚で真面目そうな、美しいルックスのシスターが立っていた。
「あ、はい! ミィと言います!大教会の証明書が無くて・・・ 代わりにこれを。」
ミアは慣れた手つきで銀のクロスを襟首から取り出して差し出した。
しかし、相手のシスターはクロスに手を伸ばすことはなかった。
彼女はただ、驚きの表情でミアの顔を凝視している。
「ミィ…って、あなた…」
「っ!?」
(しまった…!)
ミアの全身に冷たい汗が流れた。
タリンの緩さ、そしてバザルでの平穏な日々に毒され、
自分の顔が割れている可能性をすっかり忘れてしまっていたのだった。
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