7 聖女リリィの決定
〇聖女学園・講堂
壇上に立った聖女リリィは、厳粛な空気などお構いなしに、ぴょこんと飛び跳ねて、目の横でピースを作り、ポーズを決めた。
「みんな!卒業おめっ!」
パチリとウィンクを飛ばす。
しかし、会場は水を打ったように静まり返り、多くの卒業生たちが口を半開きにしてポカーンとしている。
「……あれ? ウケない!?最近の若い子ってこんな感じのノリじゃないのっ!?
というか、ひょっとして今のノリは古すぎたの!?なにこのオバハンとか思ってる!?」
生徒たちの見る目が(この人が聖女様じゃないわよね?)と言いたげな視線に変わってきており、焦るリリィ。
「お偉いさん達の話って、なっがいわよねー!ずっと立ってる方の身にもなれってのよねー、あはは、はは……」
「……」
必死に話題を変えたつもりだが、何の効果も無いようだった。
横で大臣が頭を抱えている。
構わず続けるリリィ
「コホン!長い式典だったからみんなも疲れてるだろうし、聖女候補もすぐに発表したいんだけど、その前にちょっとだけ確認させてね!」
リリィはドレスの裾を豪快に持ち上げると、壇上からぴょん!と軽やかに飛び降りた。
そのまま早足でステージ最前列まで歩み寄り、主席エレナの正面に立つ。
「せ、聖女様!前へ出過ぎです!」
慌てて、護衛数人が彼女の周りを囲むが、リリィはお構いなしだ。
「ふむふむ…… あなたがエレナちゃんか……」
リリィはエレナの顔をじろじろと品定めするように覗き込む。
エレナは緊張に顔を強張らせながらも、敬意を表して深く頭を下げた。
しかし、リリィはそれ以上言葉をかけず、そのまま後ろの卒業生の列の中へと突っ込んでいった。
「えっ!?」
「きゃっ!!」
ざわめく生徒たちをグイグイと押し分け、リリィは迷うことなく突き進む。
そして、最後列にいたミアの目の前でピタリと足を止めた。
(……えっ、ええっ!?)
慌てるミアであったが、すぐにその真意の予想を立てた。
(……なるほど。
かつての『九歳の神童』を、最後の確認に来たってわけか……
でも、残念ながら、聖女様には期待外れと言った所だったでしょうね……)
ミアが自嘲気味に目を伏せようとした、その時。
リリィはミアの顔をじっと見つめ、何かを確信したようにニンマリと、いたずらっぽく微笑んだ。
「??? 」
(今の顔…… どういう意味なんだろう……)
リリィは満足げにひとつ頷くと、踵を返して再び壇上へと駆け上がっていった。
聖女が再び祭壇中央のマイクのような魔道具の前に立つ。
生徒たちは依然として困惑の中、列を整えてその口が開くのを待った。
「それじゃあ発表します!
今年の王宮付きの聖女候補は…… ダラダラダラ……、ダンッ!!」
自分の口でドラムロールを刻み、リリィは会場の端にいる少女を強く指差した。
「ミア・ルミエールちゃんで決定します!!」
静寂
そして一呼吸置いて、大講堂がひっくり返るような絶叫とどよめきに包まれた。
「えっ!?」
「嘘でしょ!?」
「主席のエレナさんじゃないの!?」
ミアは何が起こったのか理解が追いつかず、ただ壇上の聖女リリィを見つめるのだった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
聖女リリィがミアを聖女候補に指名しました。
よろしければ、次の話もよろしくお願いします。




