60 夜空で深まる二人の絆
〇山間の平地
カレンが再び漆黒の翼を広げ、弾丸のような速度で飛び出して行った。
それに続く魔族たちも、先ほどまでの疲弊が嘘のように、獰猛な力強さで敵陣へと突っ込んでいく。
「ば、馬鹿な… あの女は本当に人間なのか? 人間一人の魔法でこれほどの… がはっ!?」
動揺したメガネ魔族のみぞおちを、強化されたカレンの蹴りが的確に撃ち抜く。
完全に戦況は逆転した。
黄金の雨に打たれ、無敵の軍勢と化したカレン軍、逆にメガネ魔族の配下たちは、デバフの効果で力が出せず、四苦八苦している。
空中から地面にたたきつけられ、ミアの目の前で消滅していく敵の魔族たち。
「ひけ、ひけー! 撤退だ!! カ、カレン様!必ずあなたを魔界に連れ戻し、巫女姫の居場所をはいてもらうぞっ!!」
捨て台詞を残してメガネ魔族は、命からがら空中へ逃げ出し、残った手下たちと共に夜の闇へと消えていいった。
あっけなく戦闘は終了。
途端に、先ほどまでの死闘がウソのように、静まり返った山岳地帯。
ミアは安堵のため息をつき、杖を支えにその場にへたり込みそうになる。
空から舞い戻ってきたカレンが、ミアの肩をポンと叩く。
「あ、カレンさん。皆さん、お怪我はありませんか?」
ミアが疲れ切った笑顔で尋ねると、カレンは呆れたように笑って首を振る。
「あなた。さっきの魔法、ガリウスってのが言ってた『黄金の雨』そのものじゃない?」
「え、えへへ……まあ、似たようなものです」
「…ねえ。『89位』って何の順位なのよ? この世界の全ての人間の中での有能ランキングなわけ?」
「まさか! 学園の卒業生の順位ですよ」
ミアは困ったように笑い返した。
「でも、良かったです。皆さんが無事で。……私、お役に立てましたか?」
その屈託のない笑顔に、カレンの顔の緊張も少し和らいだ。
「おかげで生き残れたわ」
「あの・・・お聞きしたい事が・・・」
おずおずとたずねるミア。
両手を肩の横で広げて、呆れたポーズをとるカレン。
「報酬をよこせってわけね? いいわよ、話せることは話してあげるわ」
「で、では、先ほど襲ってきた魔族の事を・・・」
「あいつの名前はヴィンセント。あんなやつでもね、お父様には忠実なワンちゃんだったのよ…
でも、アイツはお父様が封印されたのが、お母様のせいだと思ってる…
お父様とお母様は純愛だったんだから!
それを、お母さまのせいにするとか、アナタもおかしいと思うでしょ?」
┏━━━━━━━━━━━━━━┓
┃カレンの話に賛成しますか? ┃
┃➡はい ┃
┃ いいえ ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━┛
まるで、ゲームのこんな選択肢を迫られている気分のミア
カレンはハニートラップの事を知っているのだろうか…?
しかし今は、それについては触れない方がよさそうだ。
「あ、愛し合ってる方達の恋愛を邪魔するのは良くないですよね・・・」
困り笑いで『はい』を選択する。
ミアの賛同を聞き、なんだかご機嫌のカレン
「でしょ?私とあいつは、そもそも考えが合わないのよ。お父様が復活したら、うんとおねだりしてあいつは処刑にしてもらうつもりよ」
娘のおねだりで、忠臣の一人を処刑になんてするものなのか?
冗談なのか本気なのか、よくわからないミア。
「では、巫女姫様と言うのは・・・?」
先ほど、ヴィンセントの口から出た名前…
どうやら、カレンがどこかに匿っているようだが…
「私の妹よ。お人好しなところがアンタと、どことなく似てるわね…
さっきのヴィンセントたちは、あの子の能力を利用しようとしているのよ
だから私が、変に悪用されないように匿ってるの」
「そ、そうなんですね・・・」
「質問タイムは、おしまいかしら?」
「では、最後に・・・カレンさんが人間界に来た目的を教えてください。
お母さまの故郷を見に来ただけなのですか?」
「まあ、それもあるけど… 聞かない方が良いんじゃない?それは…」
そう言って、カレンはミアの腰に手を回してくる。
「え?わ、わわ。」
慌てるミアをよそに、カレンはミアを抱いて大空に飛び立つ。
「そろそろ、帰らないとあの商人たちに怪しまれるしね」
「は、はい~」
カレンの目的は聞けなかったが、話せない理由があるのだろう。
しかし以前に、母エレンの愛した、この世界の人々を苦しめるつもりは無い。と言いきったカレンを
ミアは信用しても大丈夫だと思い、上空で彼女を強く抱きしめるのだった。
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