54 聖女ミアvsシスター・ミィ
〇ガリウスの屋敷・食堂
贅を尽くした料理が並ぶ中、ガリウスがワイングラスを置き、感心したようにミアを見据える。
「しかし、ミィ様のお力はかなりのものですな。あの賊の刃も通さぬ防御魔法に、ワタクシを瞬時に癒やしてくださった回復魔法… 聖女学園での成績も、さぞや上位だったのでしょう?」
「え? あ・・・ 学園の成績は・・・アハハ・・・」
ミアはスープを掬う手を止め、困ったように首をかしげた。
しかし、ガリウスはまだミアの口から発せられる結果を期待している。笑って誤魔化せなかったようだ…
仕方ない。
「そ、そこまで上位というわけではありませんでしたよ」
成績上位者の順位表にも載れなかった日々… 事実を述べたミアでしたが、ガリウスは納得がいかない様子で眉をひそめます。
「ふーむ、そうなのですか… いえね、数年前に『聖女学園を30位で卒業した』という流れ者を護衛に雇ったことがあるのです。
ですが、その者の魔法といえば、時間をかけて小傷を治すのが精一杯。ミィ様のものとは、同じ女神様の力かと疑うほど天と地の差がございました」
「どうせ、300位かなんかなのを騙されたんじゃないの?」
カレンがバカにするように言うが、ガリウスは必死に反論している。
「何をおっしゃいますやら!こちらとて、高い金を払って雇ったのです。最終成績表や卒業証書は確認しましたとも!」
オーバーな身振り手振りをしながら話すガリウス
「ですので、これほどのお力を持たれるミィ様は、実は相当な上位での卒業生なのでは?と娘たちと話しておったのです」
「卒業年によってレベルが違いますし・・・」
と必死に弁明するミア
だが、その隣からガラスで突き刺されるような視線を感じる。
恐る恐る横を見ると、カレンが「話が違うじゃない」と言わんばかりの強烈なジト目でミアを凝視している。
(うぅ・・・睨まれちゃってる・・・)
生きた心地のしないミアだが、そこでガリウスが膝を打ち、何かに気づいたように声を上げる。
「ミィ様は巡礼が初めてとおっしゃる。…まさか、あのミア様と同じ神童世代なのでは!?」
「っ!?」
ミアの心臓が跳ねあがる。同時に、カレンがピクリと反応して、興味津々と言う反応だ。
(・・・どうしよう)
ミアは覚悟を決め、小さく頷きました。
「え、ええ・・・実は、そうなんです」
「キャーッ! 本当に!?」「あの話題の黄金世代なのね!」
娘たちが色めき立ち、食堂が華やぎます。ガリウスは気の毒そうに肩をすくめた。
「それは運が悪うございましたな・・・ 他の世代であれば間違いなく上位に入れたでしょうに。
相手があのミア様では、流石のミィ様も霞んでしまいましたか」
「そうなんです! 私、髪もミアさんと同じピンク色ですし、名前も『ミィ』ですから、よく彼女と勘違いされて困ってしまって・・・ あはは・・・」
疑われる前に先手を打って「似ているだけの別人」を演じるミア。
ガリウスは「はっはっは! それは災難でしたな!」と豪快に笑い飛ばした。
(良かった・・・ なんとか誤魔化せたみたい・・・)
ホッと胸をなでおろしたのもつかの間、
隣から、低く冷ややかな声がミアに突き刺さった。
「……で? そのミアってのと、会ったことはあるの?」
カレンのジト目はさらに深まり、逃がさないと言わんばかりにミアの横顔を捉えている。
「え? え、ええ・・・ まあ・・・いい子でしたよ? 彼女」
ミアは目を合わせられず、視線をサラダの豆の艶の観察に集中させる。
「ふーん… なーんか怪しいわね?」
カレンの追求を遮るように、ガリウスが再び声を上げた。
「ああ…戴冠式の『奇跡の雨』は、是非この目で見たかったですなぁ」
「奇跡の雨?」
カレンが聞き慣れない言葉に反応する。
「ああ、異国におられたカレン様はご存知ないかもしれませんな。
実はミア様というのは、齢九歳にして女神の力に目覚められた神童でしてな…」
ガリウスは得意げに、聖女ミアがいかにして勇者パーティの壮行会で人々を癒やしたかを、詳しく語り始めた。
その美談が熱を帯びるほど、カレンのミアへのジト目は強まっていく。
(睨んでる!すごい睨まれてる!!)
自分自身の伝説を目の前で語られ、正体を疑う少女に監視される。
ミアにとって、豪華なディナーどころではない時間となってしまうのだった。
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