51 カレンの推し聖女
〇 ガリウスの別荘
「さあ、我が屋敷に到着いたしましたぞ! とりあえず中に入ってくつろいでいただいて!」
王都と港町ルナポートの中継地でもあるソルテラスの街。
ガリウスに案内されたのは、この街でも指折りの豪華な屋敷だった。
ミアとカレンはそれぞれ隣り合った広い個室を与えられる。
王宮を追われて以来、これほど柔らかいベッドと清潔な部屋を目にするのは初めてのことで、ミアは思わず目を輝かせてしまう。
「あの! お風呂や洗濯などをさせていただければ・・・」
控えめに申し出ると、メイドは快く承諾し、ミアをお城の浴室にも引けを取らない立派な大浴場へと案内してくれた。
「お召し物はここに置いていただければ、こちらで洗濯させていただきます。」
そう言って、お辞儀をして出ていくメイド。
「ど、どうも・・・」
やっと、風呂に入れる喜びで子供のよう浴槽にドボンと飛び込みたいミアだが
なんとか自制して、まずは体と髪の毛を洗うところから始める。
そして浴槽へ。
「ああ~・・・生き返るぅ・・・」
名もなき村の教会に風呂は無く、教会裏の泉で身を清めていた。
ミアにとっては、お城を出て以来の久々の温かいお風呂の湯。
ミアが湯船の縁に頭を預けて、うっとりとしていると、脱衣所の方からメイドの声が聞こえてきた。
「ミィ様、入浴中に失礼いたします。カレン様も入浴を希望しておられるのですが、ご一緒でもよろしいでしょうか?」
「どうぞ、構いませんよ!」
ミアが微笑んで答えると、ほどなくしてカレンが静かに入ってきた。
「悪いわね。一人で楽しみたかったんじゃない?」
「大丈夫です。ここのお風呂は一人では広すぎますもの」
カレンが手際よく体と髪を洗う姿を、ミアは湯船の中からぼんやりと眺めていた。
濡れた彼女の漆黒の髪と、その滑らかな白い肌は、ミアの目を惹きつける…
「カレンさんは、どこの出身なんですか?」
思い切って尋ねてみる。
カレンは「…遠いところよ」と短く答えるだけだった。
拒絶というよりは、説明してもわからないだろう、という感じだった。
(あまり話したくないのかしら・・・)
会話が途切れ、パチャパチャと湯をかく音だけが響く気まずい時間。
(そうだわ!こういう時こそ)
「カ、カレンさんの推し聖女はどなたかしら?私は、やっぱり初代聖女マリアベル様かな!」
『聖女学園あるある』 まずは推しの聖女を聞いてお互いを知る!
聖女学園での交友関係は、まず歴代聖女の誰を尊敬しているかを聞くところから始まる。
カレンだって、同じ女神魔法の使い手なら、必ず歴史に名を連ねる聖女の誰かに憧れを抱いているはず
カレンのような気の強そうな人だと、やはりミラ様かな?などと考えるミアだったが
湯船に入ってきたカレンの口から出たのは、ミアの予想を超える名前だった。
「推しの聖女…ね。そうね、第二十三代聖女様…かしら」
「え・・・・・・」
ミアは茫然とカレンを見つめた…
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