49 豪華な馬車と凸凹コンビ
〇林の街道
二人の娘に話しかけるミア。
「大丈夫だった?二人とも」
父親も無事だったこともわかり、二人の娘にミアが優しく声をかけると、震えていた二人の少女は吸い寄せられるようにミアを見上げた。
リリィが言っていた「美男×美女から生まれたサラブレッド」という言葉が頭をよぎるほど、二人は整った顔立ちをしている。
ふと父親を見ると、こちらは人は良さそうだが、小太りで失礼ながら美形とは程遠い……
(……お母様似なのかしら?)
そんな場違いな想像に、ミアは思わずクスリと微笑んだ。
月明かりに照らされたその笑顔のあまりの美しさに、二人の少女は恐怖も忘れ、ミアの顔を、ほう……と見とれてしまう。
父親が泥を払いながらミアたちに近づき、深々と頭を下げる。
「私は、港町ルナポートで貿易商を営んでおりますガリウスと申します。
こちらは娘のアリシアとメイです」
ミアが、近づいてきたガリウスの身体に回復魔法をかけると、彼の体中のダメージは嘘のように一瞬で消し飛んだ。
おお……これは……と驚くガリウスだったが、すぐにミアに敬意の目を向け、さらに頭を下げた。
「交易品を王都で売ってきた帰りに、運悪く野盗に……お二人は、なぜこのような危険な街道に?」
どうやらこの親子は、ミアが追放された元聖女だとは気づいていないようだ。
「私はミィと言います。巡礼の旅の途中で……あなた方を見かけて、助けに入りました」
「おお!シスター・ミィ殿とおっしゃるのですか。これはまさに女神の使いだ!」
ガリウスが感激して手を合わせると、その横で見ていた黒髪の少女が鼻で笑っている。
「ミィ?猫のような名前ね」
「け、結構いますよ!世界中のミィさんに謝ってください!」
ミアが頬を膨らませて反論すると、殺伐としていた場に、ようやく和やかな空気が流れて、娘たちも笑顔を見せる。
「……で、そちらの黒髪のお嬢様は?」
ガリウスが恐る恐る尋ねると、彼女は無造作に髪をかき上げました。
「私の名前はカレン。この地方の人間じゃないわ。この道を通って王都に向かう途中だったのよ」
「そうでございましたか。
お二人には、本当になんとお礼を言ったらよいのやら……
ぜひ正式にお礼をしたいので、最寄りの町までご一緒いただけませんか?」
ガリウスの提案に、ミアとカレンは顔を見合わせる。
「いえ、必要ないわ。お礼が欲しくてやったわけじゃないし。
最寄りの町まで戻ると、王都とは逆方向になるしね」
カレンが断ると、ミアもそれに続いた。
「私も、巡礼中の身ですので。馬車に乗って楽をするわけにはいかないのです。歩く事もまた祈りですから」
しかし、ガリウスの商人の意地も譲らない。ガリウスは交互に二人を見て、大仰に身振り手振りを交えて食い下がった。
「それではワタクシの気が済みません!娘たちの命の恩人にこのまま何のお礼もせずに、野宿をさせたなどと知れたら、私は商売仲間たちの笑いもの、一生の恥です!
さあ、遠慮はいりません、乗ってください!」
「えっ?ちょ、ちょっと!」
「わわっ!?」
結局、恰幅のいいガリウスの勢いに押し切られる形で、ミアとカレンは豪華な馬車へと半ば無理やり押し込まれることになってしまった。
馬車がガタゴトと揺れて進み始めた。向かい合わせに座る、お忍びの元聖女ミアと、謎の魔導士カレン。
(……逆方向だって言っていたのに。カレンさん大丈夫なのかな?
ガリウスさんに無理やり押し込まれてた感じだったけど……)
ミアが隣のカレンを盗み見ると、カレンもまたミアが抱えるマーサの杖をじっと見つめていた。
その瞳には、単なる好奇心以上の鋭い観察を感じるミア。
人の命を何とも思わないような恐ろしい魔法を使うカレンとの出会い。
バルカ帝国につながるミアの旅は続く。
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