48 謎の黒髪少女、襲来
〇 林の街道
ミアは震える手で、マーサの杖を地面に置いた。
「よーし、いい子だ。次はそのおかしな術も解くんだ。
早くしやがれ!このガキがどうなっても構わねーのかっ!!」
術を解けば、自分も、足元の姉も、人質の妹も、すべてがこの男たちの餌食になる。
しかし、喉元に食い込むナイフの恐怖に泣きじゃくる少女を見捨てられるはずもなかった。
ミアが絶望に目を閉じ、魔力を解こうとしたその瞬間――
上空から、大気を切り裂くような鋭い一陣の風が吹き抜けた。
「あごぉっ!?」
悲鳴を上げる暇もなかった。人質の少女を抱えていた野党の腕が、一瞬で切り飛ばされたのだ。
少女はその場に無傷で倒れ込み、男は断面から血を噴き出しながらのけ反り、悲鳴を上げる。
「そっちの守りは任せたわよ」
司令官が部下に命令を出すような、しかし美しい声。
気がつけば、ミアの視界に一人の少女が立っていた。
腰まで届く漆黒のロングヘア。ミアよりも背は高く、大人っぽくて厳しくも整った顔立ち。
その鋭い眼光で残りの野党をにらみつけている。
思わず見とれてしまうミア。
「ねえっ!」
「あ、はいっ!!」
ミアはあわてて杖を拾い上げると、転がった妹の方の少女を、素早く自分の傍に引き寄せて防御壁の魔法を張りなおす。これで姉妹の安全は確保されるはずだ。
直後、黒髪の少女が奇妙な印を結び、短く呪文を唱える。
すると、野党たち一人一人の周囲に、突如として半透明な立方体の光の壁が出現し、彼らを閉じ込めてしまう。
「な、なんだこれは!? 出せ! 出せぇ!!」
パニックに陥った男たちが内側から必死に拳で叩くが、光の壁はびくともしない。
黒髪の少女が、無慈悲に掌をゆっくりと握り込んでいく。それに呼応するように、光のキューブが、ミシミシと嫌な音を立てて収束――小さくなっていく。
「や、やめ……ぎゃあああああああ!!!」
少女がグイッと拳を固めた瞬間、光の箱は一点にまで圧縮された。
凄まじい圧力に潰された肉体から、霧のような血の雨が地面に降り注ぐ。
あまりに無機質で、あまりに圧倒的な力。
王宮の騎士たちの戦いとも、マーサの守る魔法とも違う。それは、人の命を何とも思っていない者が使う、ただ効率的に命を摘み取るための技だった。
ミアは防壁の中で、その光景に腰を抜かして座り込んでいた。
野党の全滅を確認した少女は、涼しい顔で向き直り、ミアを見下ろした。
「その防御壁…女神魔法かしら?」
「え、ええ・・・ 助けていただいて、ありがとうございます・・・」
ミアは、はっと我に返り、まだ少し震える声でお礼を言った。
少女が何かを言いかけ、ミアのピンク色の髪に目を細めたその時…
「お、お二人共、ありがとうございます!! おかげで娘たちが無事で済みました!!!」
ボロボロになりながらも、父親である中年の小太りな男が立ち上がり、必死に声をかけてきた。その声で、荒野に漂っていた血の臭いが、わずかに軽減されたように思えた。
ミアは立ち上がり、姉妹を抱き寄せる父親の姿を見て胸を撫で下ろしたが、目の前の黒髪の少女が放つ、底知れないプレッシャーに、肌がチリチリと焼かれるような感覚を覚えていた。
この少女は何者なのか。そして、王国では見たこともないこの魔法は・・・?
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これも、いつも読んでくださっている皆様のおかげです!
めっちゃ嬉しいです!本当にありがとうございます!!
引き続き、頑張っていきます!!
ミアの光の壁と同じ魔法のはずなのに、まさに真逆の使い方をする、謎の少女が現れました。彼女の正体とは…?
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