46 世界中の多くの人々に祝福を
〇名もなき村・広場
マーサの葬儀は、村人たち全員に見守られながら執り行われた。
ミアはシスターとして、震える声を抑えて祈りを捧げた。
参列した村人の誰もが涙を流し、彼女がいかにこの村で愛されていたかを物語っていた。
「シスター・ミィ、どうかこの村に残って、マーサ様の代わりに教会を守ってくれないか」
宿屋の主人や村人たちからの、切実な願い。
一瞬、ミアの心は揺れた。この温かな村で、マーサの意思を継ぎ、彼女のように人々に寄り添って生きる道もあるのではないか?
しかし、ミアの脳裏にはマーサが最期に遺した言葉が響いていた。
「世界中の多くの人々に祝福を…」
それこそが、同じシスターとしてマーサの意思を継ぐこと…
それに、自分は国王から追放を命じられた身だ。
もし騎士団が本気で自分を追ってくれば、この村を戦火に巻き込んでしまう可能性もあるだろう。
自分は、ここに留まるべき人間ではないのだ。
「・・・ごめんなさい。私、行かなければならないんです。」
〇村の近くの峠道
旅立ちの朝。
ミアの手には、マーサが最期に握らせてくれた古びた杖があった。宝石などの装飾は何一つない、ただの木を削り出しただけの地味な杖。
けれど、握りしめると、そこにはマーサが長年込めてきた「多くの人々を守るための祈り」の温もりが宿っているように感じられた。
ミアは一度だけ振り返り、朝日に照らされる小さな教会と村を見つめた。
そして、風になびくピンク色の美しい髪を手で押さえて、前を向いた。
目指すは、バルカ帝国。
新聖女イザベラの不穏な思惑。歴史から消された第二十三代聖女の真実。
そして、目の前で困っている人達を助ける事…
すべてを奪われた89位聖女が自分の足で歩き始める。
一歩、また一歩。
ミアは今、果てなき巡礼の旅路へと歩み出したのだった。
第三章【完】
最後まで読んでいただいて、ありがとうございます!
今回で第三章は完結です!
ここまでお付き合いいただきありがとうございます!
次からは、新章・第四章に突入します。
よろしければ次のお話も、またよろしくお願いいたします!




