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かつて神童と呼ばれた89位聖女。ハニトラ勇者伝説の真実を暴いて見せます!  作者: けけりーな
第三章 野に咲く聖女に、守る力を教わりました
35/100

35 名もなき村の聖女

〇名もなき村


ミアは国外追放こそ受けているものの、いつまでに国外に出るように…と指定されているわけではない。

ならば、マーサの申し出を断る理由など、どこにもなかった。


マーサの紹介により、村人たちはミアを「教会期待の若きシスター」として迎え入れた。

このフレーズであれば、村のならず者達も簡単にはミアに手を出すことはできないだろう。

あの日、下劣な顔で襲いかかってきた男も、マーサの影におびえて縮こまっている。



「魔法はね、奇跡を見せるための道具じゃなくて、今日を生きるための知恵なのよ。

ミィさん、見ていなさい」


マーサが使い古された杖をかざすと、第一神界魔法の光が農耕馬を優しく包んだ。


(これは・・・バフ魔法??)


ミアが今まで自分や騎士の瞬発力を上げるために使う魔法だが、マーサはそれを馬の持久力に充て、農作業の効率を劇的に高めてみせた。

さらに、ミアが驚愕したのはその後のことだ。


「さあ、次は苗にバフ魔法をかけましょう」


「えっ、農作物に魔法を? そんなこと学園の教科書には・・・」


「毎日少しずつ魔力を馴染ませれば、寒さや病に強い、栄養たっぷりの作物が育つのよ。

これを王都に運べば、普通の倍以上の値で売れるわ。村の貴重な収入源なのよ」


(すごい・・・ 魔法の出力を極限まで抑えて、毎日少しずつバフをなじませていくなんて・・・派手さはないけど、相当な技術だわ)


(少し早いけど、今日はそろそろ終わりかな?マーサ様ハードすぎる・・・)

魔法を使った作業が終わり、流石にぐったりと倒れそうになるミア。

しかし、マーサの仕事量はそれを許さなかった。


ここからが本番と言わんばかりに、村の掃除や洗濯、病人の家への往診、そして夜の炊き出し。

今度は体力を使う仕事が始まる。


(聖女時代も私はよく動いている方だと思っていたけれど、マーサ様の足元にも及ばないわ・・・ これを毎日、お一人で・・・?)



夜、質素な夕食を囲みながら、ミアは思い切って尋ねてみる。


「あの・・・マーサ様は、どうしてこの村に?」


「ふふ、私もミィさんと同じで、昔は聖女学園の生徒だったのよ。最終順位は21位だったかしらね」


「21位! スゴイ・・・ 超エリートじゃないですか!」


「いいえ、それでは聖女候補にも教会幹部候補にもなれなかったわ。

卒業後は王立中央病院の魔法回復員のオファーがあってね。そこで数年間働いていたのよ」


王立中央病院と言えば、国王の主治医なども受け持つレベルの最王手の総合病院である。


「す、すごすぎます…」


「ただ、あの病院は、王族や貴族。お金を持ってる人たちを優先するから、自分のやりたかった事とは、何か違う気がしてね

私も若かったのね、病院を辞めて、巡礼の旅に出たわ」


「・・・・・・」

己の信念に反するという理由で、王立中央病院の魔法回復員と言うビッグな看板を捨てて、巡礼に旅に出て、その後、シスター不在が続いていた、この名もなき村の教会のシスターになったと言うマーサの言葉は、ミアの胸に深く響いた。


「巡礼の旅で、私は多くのことを学んだわ。ミィさんも、今回の旅でこれからの人生の支えになる何かを、きっと見つけられるはずよ」


「はい! ありがとうございます!」


経験なのか、人柄なのか… マーサの笑顔には人を前向きにする、魔法よりも強い力があった。

地位も、名誉も、89位という数字も、ここでは何の意味も持たない。

ただ、目の前の人の笑顔のために魔法を使う。


(私もこんなシスター、マーサ様のような聖女になりたい!)


ミアが本当の意味での『聖女』としての小さな一歩を踏み出した、静かな夜だった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


良ければ、次のお話もよろしくお願いいたします!

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