30 聖女ミア国外追放
〇王宮・大晩餐会
パーティ会場には、多くの貴族たちも参加している。
ミアは立場的には王様と対等である聖女として、こういう公式の場では王様の玉座の横の椅子に座る。
イザベラ、アルフォンス王子、王様、ミアの並びで座っている。
会場を埋め尽くす貴族たちの視線は、主役であるはずの王子やフィアンセのイザベラではなく、ただ一人、純白のドレスを纏ったミアに注がれていた。その美しさはまさに女神の降臨と呼ぶにふさわしく、
貴族達の挨拶は、王子やイザベラへのものよりもミアへの挨拶に熱がこもっており長い。
ミアの前にあっという間に貴族たちの行列ができてしまう。
これは非常に良くないと感じるミアだが、王子たちは全く気にしていないようだった。
パーティも終盤に入る。
(特に何もなかったみたいね・・・ 私の取り越し苦労だったかしら?)
ミアがそう思い、ホッと胸をなでおろしかけたその時である。
突如、アルフォンス王子が立ち上がり声を上げた。
「今日集まってくれたみなのモノたちよ。聞いてくれ!!」
「???」ミアも王子の言葉に耳を傾ける
「本日この時より、この国の聖女はイザベラとする!」
「え?」意味が分からず流石に固まってしまうミア。
王様も固まっている。
会場が静まり返る。ミアは手に持ったグラスを落としそうになりながら、王子の顔を凝視した。
「偽りの聖女ミアよ! お前は今日限りで聖女の地位を剥奪し、国外追放とする!」
慌てて王様が立ち上がり、ミアとアルフォンス王子の間に入る。
「何を言っておるアルフォンス! 気でも触れたか!?」
「父上は下がっていてください。…ミア、貴様の聖女学園卒業時の成績が89位という落ちこぼれであったことは調べがついている。使えるのも第一神界魔法のみ。」
「!!!」
「そんな無能に、我が国の命運は任せられん!」
迷いなく言い放つアルフォンスに王が反論する。
「待て! ミアの力は本物だ。誰にも治せなかった余の病を治したのは彼女なのだぞ!」
王子は勝ち誇ったように笑い、柱の陰へ合図を送った。
「聖女候補イリアよ! お前の感じたことを正直に話すがいい!」
姿を現したイリアは、俯きながら震える声で告げた。
「…彼女の学生時代の魔力から考えると、今の聖女様の魔力は不自然に高いのです。…あり得ない数値です」
「おーほっほっほ! 聖女の座にしがみつくために、怪しい術か薬で魔力を偽装しているのでしょうね。無能なリリィには見抜けなかったようですが… どちらにしても怪しすぎる話ですわ!」
イザベラの毒に満ちた言葉が会場に響き渡る。
「僕はな、自分の魔力を偽ってまで聖女の座にしがみつこうとするその姿勢が気に入らんのだ!
もちろん、献身的に働いており、国民からの評価が高いという話も聞いている。
だが結局それも、自分を偽り王国民を騙しているに過ぎん!そんなヤツは信用できない!!」
アルフォンスの目は冷たく、周囲の貴族たちの視線も一変して疑惑の色を帯び始めた。
「聖女ミアよ!何かの間違いだな!?そうであろう?」
信じられないといった表情で王様がミアに問いかけてくる。
ミアは俯き、唇を噛み締めた。
(否定できない。私の今の魔力には、エレナちゃんのバフ魔法による1.5倍の底上げがかかっているのは事実・・・
たとえ、それが友情の証であったとしても、偽っているという事実に変わりはない!)
「・・・事実です」
「ば、バカな……」
ミアの絞り出すような肯定に、国王は力なく玉座に崩れ落ちた。
「よーし!決まった。偽りの聖女ミアは国外追放!
本日から新聖女はイザベラである!!」
勝利を確信したイザベラと王子は、広間に響き渡る声でミア追放を宣告した。
〇王宮正門前・深夜
数か月前、リリィを送り出したあの門を、今度はミアがくぐろうとしていた。
けれど、そこには楽団も、見送る群衆もいない。
馬車すら用意されず、用意されているのは小さなリュックのようなカバン一つ。
「ミア様…このようなことになってしまい、申し訳ございません。私一人では、どうすることも…」
「いいえ、大臣。今までお世話になりました。・・・どうか、陛下をよろしくお願いいたします」
ミアは深く頭を下げ、月明かりの下、独り歩き出した。
王都の喧騒が遠ざかっていく。
希代の大聖女から国外追放の身への転落…
一歩、一歩どんどん、お城から離れていく。
『89位の聖女』の、本当の旅がここから始まるのでした。
第二章【完】
最後まで読んでいただきありがとうございます!
今回で第二章完結です!
ついに追放されてしまったミア。
第三章ではいよいよタイトルにある『ハニトラ勇者伝説』のお話も出てくる予定です。
よろしければ次のお話もよろしくお願いいたします!




