3 現聖女リリィ
〇王宮・聖女の間
天蓋付きの豪華なベッド。
その上には、流行のファッション雑誌と、あちこちに散らばったお菓子の屑。
現聖女リリィは、行儀悪くうつ伏せでベッドに寝そべりながらポテトチップスを口に運び、鼻歌を歌っている。
そこへ、重厚な扉が勢いよく開き、国の大臣が入ってくる。
「聖女様、失礼いたします!!」
「うわわっ!ちょっと、ちゃんとノックして、私の返事を待ってから入ってきてって、いつも言ってるでしょ!!」
リリィは慌てて飛び起きて、ポテトチップスの袋を隠そうとするが、手が滑りベッドの上に中身をぶちまけてしまう。
その姿を見て、頭を抱えて深いため息をつく大臣
「……リリィ様。あなたの先代の聖女様は、それはそれは優秀で、献身的に国民を愛し、慈悲深い方でした。
それなのに、あなたは……」
「もー、またその話!?私だって先週はめっちゃいっぱい回復魔法使ったでしょ!
そんなに小言ばっかり言うなら、もし他国との戦いになっても、もう助けてあげないからね!
王様に言いつけてやるんだから!
『大臣がいじめるから、もう仕事しません』って!」
頬を膨らませて抗議する彼女だが、そのルックスは愛らしく、幼い言動も相まってどこか憎めない。
背は低く、ぱっちりとした目元が可愛らしい童顔。金髪のロングヘアが美しい。
彼女こそが、この国の生命線を握る『現聖女』であった。
リリィの言い分は無視して話を進める大臣。
「……リリィ様。本日は、今年の聖女学園の卒業生の成績上位者リストを持ってまいりました。
この中から、今年の王宮に入る次期『聖女候補』を一人選んでいただかなければなりません」
そう言って、大臣が羊皮紙のリストをテーブルに置く。
「え~…… めんどくさい。どうせ毎年、主席の子って決まってるじゃん」
「例年は左様でございます。今年で言えば、エレナという卒業生。
全試験において総合一位。
情報によれば、すでに第三神界女神魔法の一部を行使できるとか……」
「すごっ!第三神界!? じゃあ、その子でいいじゃん。
っていうか、もうその子を聖女にして、私、引退しちゃダメかな?」
少しジト目をリリィに向ける大臣
「今の発言は聞かなかったことにいたしましょう。
……では、このエレナを聖女候補として城に呼び入れる。ということで決定でよろしいな?」
リリィは退屈そうにリストをパラパラとめくる。「一応、確認しましたよ」というアリバイ作りのための、わざとらしい行為だ。
「ふーん……」
しかし、ふと彼女の指が止まる。
「あ、そういえば……」
人差し指を立てて、何かを思い出したような表情のリリィ
「は?」
不思議そうな大臣に、リリィが身を乗り出して尋ねる。
「あの子!昔、九歳で入学したっていう超天才の子いたでしょ?
あの子、今年が卒業じゃない?
このリストにそれっぽい子が見当たらないんだけど?」
大臣も少しハッとした表情を見せる。
「そういえば、左様な娘もおりましたな。
九歳で第一神界女神魔法の多くを使いこなしたという……
確かに、彼女ほどの者がこのリストに入っていないとは考えにくいですが……」
大臣の言葉を聞き、腕を組んで考え込むリリィ
「気になる。ちょっと学園に確認してきてよ」
「承知いたしました。学園側に現在の彼女の状況を問い合わせて参りましょう」
大臣が一礼し、部屋を出ていく。
扉が閉まるや否や、聖女は「パンパン!」 と景気よく手を叩いた。
「おーい!新しいポテチ持ってきてー!うすしおねー!」
崩れた姿勢で再びベッドに沈み込む聖女。
その瞳には、退屈な日常に投げ込まれた、小さな興味の光が宿っていた。
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現聖女リリィが登場しました。
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