29 聖女ミアの躍動
〇王宮・女神像の間
朝の柔らかな光が、大聖堂の女神像を照らしている。
ミアは一人、静かに祈りを捧げていた。
毎日の聖女による祈り… それが無ければ、この世界の大地は枯れ果てていくと言われている。
(昨日は雨を降らす天候系の魔法が三か所・・・ すべてが上手くいって良かったわ。エレナちゃんのバフがまだ生きているうちは三回までは何とかなるわね・・・
馬車とは言え、一日何か所も長距離移動するのは疲れるけれど、農家の人たちが喜んでくれるのを見たら、疲れるとか言ってられないわね・・・)
今日の予定もぎっしりだ。近隣の村の川の水質改善。
ミアは魔法で浄化するだけでなく、村人と一緒に泥を掻き出し、石を並べて自然の濾過機能を整える。
第一神界魔法しか使えない彼女が考えた、魔法+各分野の専門知識を取り入れたやり方。
これまでの歴代聖女達であれば、年に1~2回来て、見たこともないような上級の魔法で一気に改善して帰っていく。見た目は派手だが、このやり方だと根本が解決されておらず、すぐに川は再度汚染していく。
対してミアのやり方は地味だが、川の汚染は本質的に改善していくのだ…
ミアが聖女になって半年近くたつが、王国民からの評価はうなぎのぼりに高くなっていた。
(この数か月で、王都周辺の大地が少しずつ力を取り戻している気がする。私のやってきたことは、間違っていないはず)
〇聖女の間・夕刻
泥にまみれ、腰をさすりながら部屋に戻ったミアは、そのままベッドにダイブした。
「あー もう一歩も動けない・・・ でも、お風呂入らなきゃ、巫女装束が泥だらけだわ・・・」
ベッドに寝た状態のまま、巫女装束を脱ぎ捨ててしまうミア。
「聖女様、今少しよろしいですかな?」
部屋の外から大臣の声が聞こえた。
「きゃああぁ!? だ、大臣!? ダメです!今は入ってこないでください!!」
慌ててベッドから跳ね起きて、巫女装束を拾い上げ羽織りなおそうとするミア。
「む!?今の悲鳴!聖女様、失礼!!」
無理矢理、部屋に入ろうとする大臣
「い、今は入ってこないでください! 私、裸ですからぁ!!」
なんとか巫女装束を羽織りなおして、落ち着いたミア。大臣を部屋に入れる。
「聖女様、やはり明日から、最低限の次女はつけていただきますぞ。」
「は・・・はい」
顔を真っ赤にして俯くミア。
実は、自分の身の回りの事ぐらい自分でやるからと、部屋の外の護衛以外の、室内の次女は必要ないと突っぱねていたのだ。
「それで大臣、私に何か用事があったのですよね?」
「申し訳ございません、聖女様。緊急を要する件でしたので。お伝えしたいのは明日の夜の件です。アルフォンス王子の帰還記念パーティーが開催されます。聖女様も、王国の象徴としてご参加をお願いいたします」
「パーティー・・・ はい、わかりました。夜であれば、公務もほとんど終わっているでしょうし予定は何とかできると思います。
イザベラ様もいらっしゃるのね?」
「もちろんです。王子のフィアンセとして、彼女が実質的な主役となるでしょうな。 …では、明日はよろしくお願いいたします。」
大臣が去った後、ミアは再びベッドに倒れ込んだ。
頭をよぎるのは、昨日の謁見の間で見たイザベラのあの不気味な瞳。
そして、毒を盛られ続けていた、かつての国王の衰弱した姿。
(イザベラ様は、リリィ様に聖女争いで選ばれなかったことを事を恨んでいるのかしら・・・?
彼女は何の関係もない可能性だってあるのだけれど・・・ なぜか、気になってしまう・・・)
窓の外では、王都の夜が静かに更けていく。
しかし、その静寂は、明日訪れる激動の嵐の前触れに過ぎなかった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
いよいよ王子の帰還記念パーティーが始まります。
もし、よろしければ次回もよろしくお願いいたします!




