28 アルフォンス王子の帰還
王宮の空気を一変させる鐘の音が鳴り響いた。
「アルフォンス王子殿下、ご帰還ーー!!」
馬車の轍の音が石畳に響く。バルカ帝国への留学を終え、毒を盛られた父の待つ王宮へと、ついに王子が帰ってきたのだ。
〇王宮・謁見の間
帰還を祝うトランペットが止み、重厚な扉が開かれる。
快復した国王の隣に、ミアは聖女として静かに控えていた。胸の鼓動が、かつてないほど激しく打ち鳴らされている。
入室してきたのは、凛々しくもどことなく覇気に欠けるような青年と、その横に寄り添う一人の女性。
彼女は、ミアの柔らかな美しさとは対照的な、冷たく鋭い美貌の持ち主だった。
「父上! ただいま戻りました!」
「おお! 我が子アルフォンスよ! よくぞ帰ってきた!」
アルフォンス王子は、父王の血色の良い顔を見て、一瞬だけ目を見開いた。
「ち、父上もご健勝で何よりです… 体調が優れないと聞いて心配しておりましたが…」
「うむ。それに関しては、こちらの新聖女ミアが癒やしてくれての。
最近はすこぶる調子が良い。むしろ、毎朝のミアの魔法のおかげで、以前より血気盛んなほどよ! はっはっは!」
「新聖女……ミア……」
王の横に立つミアに目を向けるアルフォンス。
「アルフォンス王子殿下、お初にお目にかかります。リリィ様に代わり聖女を務めております、ミアと申します。以後、お見知りおきを」
「あ、ああ…よ、よろしく頼む」
完璧な礼法で挨拶をしたミアに対して、なぜか視線を泳がせ、歯切れの悪い返事を返したアルフォンス。
「で、アルフォンスよ。そちらの美しい方を、そろそろ紹介してくれんかな?」
待ちきれない様子の国王に促され、王子が女性の手を引いて前へ出す。
「はい!こちらは、私が留学先で出会い、共に歩むことを誓ったフィアンセ。イザベラです!」
「イザベラと申しますわ、陛下……」
その瞬間、ミアの全身に鳥肌が立った。
イザベラ。つい昨日セレスティーヌから聞いたばかりの、帝国に渡ったバルカ帝国聖女の名前である。
彼女の微笑みは美しいが、その瞳の奥には、すべてを飲み込むような闇があった。
「イザベラ! もしや、かつて帝国へ送ったあの聖女候補か!」
そう言って、イザベラの顔を見て驚く王。
「覚えていてくださったなんて、光栄ですわ、陛下」
ミアは、めまいに似た衝撃を感じていた。
(そんな・・・イザベラ様が、王子の婚約者として戻ってくるなんて・・・
バルカの聖女である以上、長期間バルカ帝国を離れる事はできないと思うのだけれど・・・)
考え込んでいると、イザベラの視線がミアに向けられた。
「あなたが、リリィの代わりの聖女様ね… ええ、ええ… 噂通りの、透き通るような美しいお顔ですこと。
でも、聖女に必要なのは見た目だけではなくてよ?」
ミアとイザベラ。これが二人の出会いであった。
最後まで読んでいただいてありがとうございます!
アルフォンス王子とバルカの聖女が婚約していただなんて…
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