26 バルカの聖女イザベラ
〇王宮・聖女の間
お城に帰ったミアは、まずは大臣を捕まえてイザベラの事を聞いてみる事にした。
リリィのお守り役だった苦労人の大臣は、ミアの質問に記憶をたどりながら答えてくれる。
「イザベラ様でございますか……
確かにかつて、聖女候補の一人におりましたな。真面目で礼儀正しい方でした。
リリィ様のライバルというよりは、第56代聖女オルテンシア様、リリィ様のお二人が直々に目をかけ、次期聖女に育てようとされていた、いわばお二人にとって愛弟子に近い存在でした。」
「な、なるほど……」
「……ですが彼女は、リリィ様の傍に控える道よりも、帝国の聖女として自ら一国の頂点に立つ道を選ばれたのです」
(となると、リリィ様に恨みはなかったと言う事かしら……)
「オルテンシア様が、リリィ様を次の聖女に選ばれたという事は、イザベラ様はリリィ様には劣る能力だったのですか?」
「いえ……能力的には、リリィ様より上だったと聞いておりますな。」
「え?それではなぜ……」
「やはり聖女様も、そう思われますか!
もしイザベラ様が聖女になられていれば、私もリリィ様のお世話で毎日苦労をすることもなく……くくうぅっ!」
泣きだす大臣
「あああ!いえ、そういう話じゃなくですね……」
だがミアはなんとなく、理由はわかっていた。
ミアは大臣が泣き止むのを待ち話した。
「リリィ様の、悩んでいることが、バカバカしくなってくるようなあの笑顔。
それは、教義や能力を磨いて手に入るものではありません。
オルテンシア様は、リリィ様のそう言った、技術よりも『魂のあり方』に
次代聖女の可能性を感じたのでは?と思います」
それを聞いた大臣は少し優しげな笑顔を見せた。
「お優しゅうございますな、聖女様は…… しかし理由は恐らくそれだけではないのです。」
「……???」
「イザベラ様は、女神教会幹部に大きなつながりを持っていると噂されていたのです。」
セレスティーヌも言っていたことである。
「そうなんですね……それはいけない事なのですか?」
「本来なら問題はありませんし、実際にそう言ったコネを使って、王宮に入った聖女候補も、過去にいないわけではありません。
ただ……彼女が繋がっていたのは、王国から見て最も危険分子と言われていた教皇派だったのです。」
「…………」
大臣は周囲を一度だけ確認し、声を落とした。
「教皇派は、女神教会・教皇こそが世界を導く唯一の存在であり、
王国の王家も、聖女すらも必要ないという考えの輩の集まりです。
そんな危険な考えの派閥とイザベラ様は繋がりを持っておられたのです……」
大臣からはこれ以上は当時の事は聞けなかった。
ただ、収穫はあった。
ミア「……あの、ところで大臣。王子様の留学先というのは、もしやバルカ帝国ではありませんか?」
大臣「左様でございます。さすがは聖女様、察しが良い」
ミアの胃のあたりが、冷たく、どす黒い手で握られるような感覚で締め付けられる。
国王の毒。帝国の聖女。そしてそこに留学している王子の帰国……
それらの事象の全ての点がつながり、一つの巨大な蜘蛛の巣のように張り巡らされているような予感がした。
そして、自分もその蜘蛛の巣に羽根が引っかかってしまっているのではないか?
窓を打つ風の音が、死を司る蜘蛛の嘲笑いのようにミアには聞こえたのだった……
最後まで読んでいただきありがとうございます!
イザベラがどんな人物だったのか、なんとなく見えてきました。
24話のイザベラが内通していた派閥を「大司教派」から「教皇派」に変更しました。
スミマセン(;´・ω・)
よろしければ次のお話も、またお願いいたします!




