25 ミアとセレスティーヌ
〇セレスティーヌの私室
扉が閉まり、廊下から足音が遠のく。
ピンと張っていた背筋が同時に緩み、重々しい法衣の襟元を緩める。
数秒前までの『聖女』と『次期候補』はどこにもいなかった。
「「あははは!!」」
部屋に入るなり、どちらからでもなく手を取り合いピョンピョンとはしゃぎ合う。
数分前までの張り詰めた空気が嘘のように、部屋の中はかつての学生寮のような、
温かく賑やかな空気で満たされた。
そのまま感極まって抱きしめ合う二人。
「本当に良かった……!心配していたのよ。
セレスちゃんは勘が良いし賢いけれど、控えめでしょう?
教会なんて未知の世界で、妙なことに巻き込まれていないかって……」
そういうミアにセレスティーヌも返します。
「ふふ、それはこちらのセリフですから……
ミアさん。前聖女リリィ様は相当いい加減な方だと聞いていましたから……
真面目すぎるあなたが聖女様に説教をして不敬罪で投獄でもされていないかと、
いつも心配していたんだもの」
二人は顔を見合わせ、噴き出すように再び笑い合った。
聞くと先ほどは、久々に目を合わせるのが恥ずかしくて、俯いてしまったのだという……
すっかり落ち着く二人。セレスティーヌの部屋で二人でお茶を飲む。
「リリィ様はね…… 確かにいい加減なところもあったけれど、それ以上に心優しさが勝る方だったわ。
あと一年も一緒にいたら、あのだらしなさに本当に毎日お説教していたかもしれないけれど……」
ポテトチップスを片手に「美人は得よねー」と笑うリリィの姿を思い出し、胸の奥に温かい気持ち広がった。
……無理やり聖女にされたあの日、あんなに反発していたはずなのに。
けれど、気づけば実の姉のように感じてしまっていたのだ……
「そのリリィ様から、イザベラ様のことを聞いたことはありませんか?」
「……全く。リリィ様、ご自分の過去のことはあまり話したがらない方だったから。
今思うと、私、彼女のことを全然知らないのね……
ご出身の村の名産品が駄師匠味のポテトチップスってことぐらいかしら…… お聞きした事って」
本当に困った人だが、憎み切れないから不思議だった……
「……毒の件も含めて、陛下に直接お伺いするのが一番早いかもしれないわね。
陛下なら当時の聖女の引継ぎの事情もご存じなはずだから」
部屋の窓から、夕闇に包まれ始めた王都が見える。
「ミアさん……どうか無理はしないで。私が教会内部から必ずあなたを支えるから」
「それはこちらのセリフよ、セレスちゃん。危険なことだけはしないでね。
何かあったら、すぐに王宮の私を呼んでほしい」
魑魅魍魎が跋扈するこの世界で、
固く結ばれた二人の友情だけは、永遠であるように思えたミアなのであった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
セレスティーヌは教会でおかしな目に遭ってなくて良かったですね!
よろしければ、次もまた、よろしくお願いいします。




