22 教会のセレスティーヌ
〇聖女の間
国王の毒殺未遂。
ミアは、女神教会が絡んでいるのではないか?と推測していた。
もし陛下が倒れ、経験の浅い王子が即位すれば、国の実権は一時的に不安定になる。
古くから王族と権力を拮抗してきた女神教会にとってこの上ない好機のはずだ。
(でも、今の私が証拠も持たずに一人で教会に乗り込んで問いただしても、軽くあしらわれて終わりね。
逆に危険にさらされる可能性だってあるわ……
なんとか教会に取り入ることはできないかな?)
脳裏に浮かぶのは、深い森の静寂を思わせる、濃緑の髪を揺らして微笑む、一人の少女の姿。
その少女の名前はセレスティーヌ・アルジャン。
卒業順位第3位。
彼女もまた一般の子供が天啓を受けるより一年早く、14歳で女神の力に目覚めた天才少女だった。
ミアがどんどん成績を落とし、『神童の成れの果て』と落ちぶれていくのとともに
それまで、ミアから知識を学ぼうと近づいてきていた学生たちは、
みな腫れ物に触れるのを避けるかのように離れていった。
しかし、このセレスティーヌと言う少女だけは、変わらずミアを友人として最後まで付き合い続けてくれた。
卒業後はその卓越した実力が認められ、将来の最高司祭候補として、女神教会の本部へと配属されたと聞いていた。
(セレスちゃん…… あの子なら、きっと教会の中でうまくやっているはず。
……ううん、あの子のことだから、真面目すぎて周囲と衝突していないかしら?)
ミアは机に向かい、王国のシンボルが刻まれた高級な便箋を取り出した。
(今後、私が聖女として立ち回るには、女神教会を放置と言うわけにはいかないのでしょうね……
だったら教会とのパイプは必要不可欠。
彼女のような、お互いの情報交換ができるような、信頼できる人が教会幹部への道を歩んでいるのなら、
これほどに心強いことはないのかもしれない。)
もちろん、純粋に友として彼女の近況も気になっていた。
女神教会内は王宮以上にヤバい場所であることは、外から見ても明らかな事である。
基本的に控えめな性格だったセレスティーヌ。ミアにとってのリリィのような頼れる存在は、教会内にいるのか……?
そして、ミアにとっても、考えていた以上に山積みにされている難題の数々。
今のミアには、かつての学友の優しい声が、何より必要だったのかもしれない。
「よし…… 明日の謁見の時に陛下に直接お願いしてみよう。『新聖女としての外交の一環として、教会本部の友人と面会したい』って」
ミアは手紙を書き始めるのだった。
〇謁見の間・翌朝
国王は、ミアの申し出を快く、かつ少し驚いたように受け入れた。
「ほう…… 教会の最高司祭候補セレスティーヌ嬢か。
若き聖女が自ら教会との融和を図ろうとする姿勢、実に見事。
よかろう、余から教会本部へ正式な書状を送らせよう」
「ありがとうございます、陛下!」
「……だがミアよ、気をつけなさい。教会内は純粋な信仰の場と言うわけではない。
十分に気を付けて行くのだぞ。」
国王の警告にミアは表情を引きしめた。
教会の内部にいるセレスティーヌは、果たしてかつての心優しい友人のままなのだろうか。
それとも……
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
次回、ミアは聖女として、始めて教会に踏み入ります。
良ければ次回もよろしくお願いいたします。




