19 ミアの診察
〇王宮・謁見の間
重厚な扉が開かれた先、広大な広間の奥に置かれた玉座。
そこに座る国王は、数年前の面影もないほどに痩せ細り、呼吸ひとつにも苦労している様子だった。
両脇には近衛兵と医師が付き添っている。
それでも優しげな表情で語る国王。
「リリィ……そして、新聖女ミアよ、よく来たな……」
「陛下、無理をなさらずに」
リリィはいつものふざけた態度ではなく真剣な面持ちで玉座へ駆け寄る。
「リリィよ……お前には本当につらい思いをさせてしまったな。
聖女として、この城に縛り付けてしまった。
……Sランク冒険者になって世界を渡り歩きたいというお前の夢も、
女神の力を使い果たした今となっては、もう叶うまい……」
「……何をおっしゃいます陛下。
これからはこのミアが、次代の聖女としてこの国を支えます。
彼女は力不足だった私とは違います。ミアであれば、王様を悩ませることもございません。
どうかご安心ください」
リリィは寂しげに微笑み、ミアを促した。
ミアは一歩前に出ると、深く礼をする。
「新たな聖女ミアよ……我が国に尽くしてくれるか?」
「もったいないお言葉です陛下。
至らぬ身ではございますが、誠心誠意、この国と人々のために努めさせていただきます」
リリィがミアに話しかける。
「……ねぇ、ミアちゃん。あなたの力で陛下の回復は無理かしら?
私の体力回復や病気治癒の魔法では、陛下のご病気は一向に良くならなかったのよ……」
リリィの瞳には、かつて救えなかった人々への後悔と、ミアの底知れぬ力への望みが混じっていた。
「やってみます」
ミアは王様の傍らに膝をつき、瞳を閉じた。
(私は第一神界魔法しかつかえないけれど、9歳の時から使い続けている。
誰よりも数だけはこなしている自信はある……
身体の内臓など部位ごとに、あらゆる種類の回復魔法をかけて、違和感を探し出す……)
ミアは、国王に向かいさまざまな基礎魔法を一つ一つ丁寧に試していく。
すると、ある魔法をかけた瞬間、国王の顔にわずかに赤みが差した。
「おお……少し、胸が楽になったような気がする……」
謁見を終え、聖女の部屋に戻ったミアとリリィの二人。
「ミアちゃん、流石だわ ……さっきの魔法は一体何だったの?」
真剣なまなざしで聞いてくるリリィ。
「……『解毒』の魔法です」
「解毒!?陛下は病気ではなく、毒に侵されていたというの!?
その可能性は私も考えて、以前に解毒魔法はかけてみたけれど……?」
リリィが声を裏返して驚く。
「私は、何種類もの解毒の魔法を心得ています。
私が使った魔法の中にはおそらくリリィ様が使ったモノとは別のタイプの解毒魔法もあったのでしょう。
私の第一神界魔法では完全な中和はできませんでしたが、
解毒専門の術師の方をつけ、適切な処置を行えば、陛下は快方に向かわれる可能性があります」
「早速、手配しましょう。
……けれど、毒だなんて。一体どこから?」
「過去に盛られた毒の蓄積ではありません。
……おそらく、現在進行形で毎日、少しずつ盛られているような類の毒だと思います。」
「となると食事!?
でも、陛下の食事は厳重な毒見が確認しているはずよ……」
不思議そうにするリリィ。
「食事以外で、毎日口にするもの……あるいは、毎日触れるもの」
ミアの言葉にリリィは難しい顔をして考え込んでしまった。
王に恨みのある者のしわざなのか?
あるいは、王国のクーデターを狙う何者かの陰謀なのだろうか?
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
お時間があれば、次の話もよろしくお願いいたします。




