18 庶民派の聖女
〇王都・城下町
抜けるような青空の下、王都・城下町のメインストリートは活気に満ちあふれていた。
かつて「神童」と呼ばれた少女が、先日の壮行会で「黄金の雨」を降らせたという噂は、尾ビレがついて王都中に広まっている。
国民にとってミアは、長年続いた「谷間世代のふざけた聖女リリィ」の時代を終わらせる、待望の救世主であった。
聖女学園の内情は機密事項が多い。
彼女が八十九位であったことも、第一神界魔法しか使えないことも、知らない国民がほとんどだ。
彼らが見ているのは、美しく、そして誰よりも慈悲深い聖女の姿だけだった。
ミアは今日も、自分の自由な時間を使い、城下町へ巡回に出ていた。
本来、聖女とは雲の上の存在。
歴代の聖女たちの多くは、城の奥深くで女神への祈りを捧げることのみを職務としてきたが、ミアは違った。
「聖女様!弟の村が日照り続きで、作物が届かなくて困っておるのです……」
城下町の住民に声をかけられるミア
「それは大変!すぐに王宮の調査員を向かわせるよう手配します。
必要なら、私も後で直接伺って雨を降らせますからね!」
「おおお……!ありがたや、ありがたや……」
ミアの返答は迅速で、何より他人事として扱わなかった。
全てをまるで自分の悩みのように聞いてくれる。
広場では、膝を擦りむいて泣きじゃくる少年の前に、ミアが優しく膝をつく。
「男の子でしょ?転んだくらいで泣いてはダメ。
あなたは、お母さんや家族を守っていく騎士様になるんだから」
ミアが呪文を唱えると、柔らかな光が少年の傷を瞬時に塞いだ。
「わあ、ミア様、ありがとう!」
何度も振り返り、元気に手を振って去っていく少年。
ミアはその姿が見えなくなるまで、慈愛に満ちた笑顔で手を振り返し続けた。
街が夕焼けに染まり始める。
しかしミアの巡回は終わらない。
酒場での酔っ払い同士の喧嘩に仲介して、諌めていく。
運河の掃除をする人々に差し入れを持っていく。
「おい、見たか?聖女様、さっき川の泥上げを手伝おうとして、騎士様に必死に止められてたぞ」
「ああ、先代のリリィ様じゃ考えられねぇな。
あの方はポテチを食いながら、ぶらぶら散歩してただけだったからな……」
「ミア様は初代聖女マリアベル様の再来じゃないのか。間違いない」
そんな声が、ミアが通るたびに波紋のように広がっていく。
実力は第一神界魔法までしか使えない。
学園の成績は下から数えたほうが早い。
けれど、誰よりも歩き、誰よりも人々の声に耳を傾けるその姿は、
高位魔法を乱発するどの聖女よりも、王国民にとっては『聖女』らしく見えていた。
数週間も経つ頃には、王都の人々は確信していた。
「私たちの新しい聖女、ミア・ルミエール様こそが、希代の大聖女である」と。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
ミアは庶民派聖女として一歩を歩み出したようです
良ければ次回もよろしくお願いいたします。




