16 太陽のような笑顔
〇王宮・聖女の間
壮行会での『奇跡』から一夜明け、王都はその話題でもちきりだった。
しかし、当事者であるミアは、絶望のどん底にいた。
「良かったねー!無事に聖女の引き継ぎが終わって!完璧、完璧!」
リリィはソファの上で足をバタつかせ、これ以上ないほど満面の笑顔を浮かべていた。
「良かったねー!じゃないですよ!!なんでトントン拍子で私が聖女をすることになってるんですか!?
壮行会が終われば、私は自由っていう約束だったじゃないですか!!」
「おお、半泣きで怒った顔もかわいいねー。やっぱり美人は何やっても得ねー。絵になるわぁ」
「ふざけないでください!本当に怒りますよ!!」
「もう怒っとる怒っとる……」
ミアの剣幕にタジタジになりつつも、リリィはどこか楽しげだ。
ようやく落ち着いた二人は、ソファに向かい合って座り直した。
「いや、アタシもさー、そのつもりだったのよ。約束は守るつもりだったの!
でもさ、王国民たちがそれを許さなかったわけ。
あの『黄金の雨』を見ちゃったら、もう『代行でした』じゃ済まないでしょ?
国民の声には聖女も弱くてさー!」
ジト目でリリィを見るミア
「……なんか、すごく嬉しそうに見えるんですけど」
「気のせい気のせい。
……とにかく、アタシの引退とアンタの新聖女就任は確定しちゃったから。もう諦めてよ!」
リリィは手をひらひらさせて笑っている……
「うぅ…… こんなはずじゃ……」
ミアは顔を覆ってテーブルの上に突っ伏した。
89位の元神童としてひっそり生きるはずが、一国の象徴に担ぎ上げられてしまったのだ。
リリィは少しだけ真面目な顔になり、部屋を見渡した。
「アタシもさ、そろそろお城を出て行く準備しなきゃ。
いつまでもここに残って先輩聖女面してたら、アンタもやりづらいでしょ?」
「えっ!? ……私のことを裏から助けてくれないんですか!?」
「えっ!? なんでアタシがそんなめんどそうな事しなきゃいけないのよ?」
「うぅぅ…… この人に期待してた私がバカだった……」
本気で泣きそうになるミア。
「まあまあ、そんないじけないで」
「誰のせいだと思ってるんですか!
……と言うかリリィ様、故郷にお帰りになるんですか?」
なんとなくミアは聞いてみた。
聖女を引退したものはどうなるのかが気になったのかもしれない……
「そうねぇ……アタシも地方の弱小田舎貴族の出だからね。そこに帰ろうかなぁ。
遠いわよぉ、王都から馬車で一週間以上はかかるし」
窓の外を見ながらリリィは答えた。
その横顔を見てなんだかミアもしんみりとした気分になる。
「そうなんですね…… 寂しくなりますね」
するとリリィは、ミアの顔を見てまるで少女のように目を輝かせて笑う。
「でも、あっちはポテチが新鮮で美味しいのよ!
『関西だししょうゆ味』とか、食べたことないでしょ?」
「カンサイダししょー……?なんですか?その呪文みたいな名前」
「落ち着いたら送ってあげるわよ!めっちゃ美味しいんだから!!」
屈託のない、太陽のような笑顔。
ミアはその眩しさに、一瞬言葉を失った。
(……きっと、この人は、この笑顔で、何万もの人たちの絶望を救ってきたんだろうな……)
「あ、そうそう!最後にミアちゃんを王様にだけは会わせとかないとね!」
「お、王様……!?」
聖女就任。
今までとは全く違うミアの生活が始まろうとしていた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
ミアが、勝手に聖女にされてしまいました。
よろしければ次の話もよろしくお願いします。




