15 勇者パーティ壮行会
〇王都・大広場
晴天の空の下、城下町の大広場では、勇者の壮行会が盛大に行われていた。
熱狂的な群衆の声が、地響きのように王都を揺らしている。
壇上には、王族、そして女神教会の高官たちが居並び、その中に現聖女リリィも呑気に笑って座っている。
その対面、石畳に片膝をつくのは勇者一行。
列の端には『僧侶』として装備を整えたエレナの姿もあった。
王国と女神教会は協力という形をとりつつも、お互いに権力の中心に立ちたがっている。
近年は長年王国側が主導権を握ってはいるが、長い歴史の中では女神教会側が主導だった時代だってある。
聖女の力と言う莫大な能力者は現在、王国内で力を発揮しているものの、その管理・教育自体は教会側が担っている。
教会はその気になればいつでも王国に対してクーデターをおこせるレベルの力を有し、虎視眈々とその機を窺っているのだ。
そんな中で、今回の『89位の聖女候補の抜擢』は、教会にとって格好の攻撃材料だった。
歴代でも上位の成績のエレナを蹴って、89位のミアを引き上げたのだから、聖女リリィ様ご乱心!と王国に難癖をつける好機。
王国と教会関係者。今日の為にやってきた近隣諸国の王族や大臣。そして多くの国民たち。
それらが見守る中、ミアが、ゆっくりと階段を上がり、壇上に姿を現した。
〇壇上
リリィが用意させた正装は、薄地の純白の巫女装束。
それはミアのしなやかで抜群のスタイルを余すところなく強調していたが、そのルックスがあまりに神々しく、民衆は下品な感情を抱くことさえ忘れて息を呑んだ。
「あんなに美しい聖女様、見たことがない……」
「……女神様の化身だ」
ミアは国宝の杖を手に取り、まずは女神像から力を受け取る形式上の儀式を滞りなく進める。一つ一つの所作が、完璧で美しく洗練されていた。
「聖女ミア・ルミエール様による、女神の祝福であります!」
司会進行の男が思わず口にしてしまった「聖女」という呼び名。
本来ならすぐに訂正すべき大失態だが、会場の誰もが、彼女が聖女と呼ばれたことに違和感を感じないほどに、その場の空気をミアは支配していた。
ミアが静かに、そして凛とした美しい声で、現代で女神魔法の詠唱を始める。
「……天つ恵み、地を潤し、光の雫となりて勇者の道を照らさん……」
空がにわかに暗転し、王都全域に柔らかな雨が降り注ぎ始めた。
「天候系……!?まさか本当に天候系魔法を使いこなす聖女だと言うのか!?」
ミアの天候系魔法を使用するという情報を信じていなかったのか、教会関係者が度肝を抜かれている。
(何度も何度も使ってきた第一神界魔法。結局、今だにその壁を越えれてはいないけれど
誰よりも多く使ってきた、この第一神界魔法の精度だけは、他の人には負けない)
ミアの魔法に力がこもる
(エレナちゃん。私を助けてくれたあなたへの、私からの想い……)
エレナから貰たバフ魔法がかかった今ならできる。自らの超高精度な魔法と編み合わせ、癒しと強化の言霊を重ねていく。
刹那、降り注ぐ雨が、金色の光を帯びて輝き出した。
「……これは。傷が消えていく……いや、それだけじゃない!力が、底なしに湧いてくるぞ!」
驚く勇者パーティの面々
雨に触れた民衆たちも、口々に叫び始める。
持病の痛みが消え、老いた体から疲れが吹き飛んでいく。
それはもはや『演出』などというレベルではない。
文字通りの『奇跡』だった。
「バカな……!八十九位の落ちこぼれだと報告を受けていたのだぞ!?
この魔力量、そして多重魔法!落ちこぼれどころか、これは……!」
雨に濡れた巫女装束がミアの肌に張り付き、その美しいシルエットを露わにする。
しかし、天を仰ぎ、両手を広げる彼女の姿は、あまりに尊く、神聖そのものだった。
「勇者様方に、女神の祝福を――!!」
ミアの声が王都の空に響き渡った瞬間、一人の民衆が震える声で叫んだ。
「聖女ミア様……!聖女ミア様ばんざい!!」
その声が引き金となり、熱狂の渦が爆発した。
「うおおおおおおお!!聖女ミア様!!勇者様!!」
大地を揺らすほどの大歓声の中、ミアはただ、無事に役目を終えられた安堵に胸をなでおろしていた。
この時のミアはまだ、自分がたった今『伝説』になったことに気づいていないのだった。
第一章【完】
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
第一章完結です。
第二章も書きます。




