表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

120/124

120 魔獣の森の隠れ家にて

〇魔獣の森


森の奥、突如として視界が開けた場所。


古びた祭壇。

その中央に鎮座していたのは、禍々しい気配で石のように固まった魔王の姿。


その顔に刻まれているのは、この世の破壊を望むような呪いと、愛した者に背かれた深い絶望。


「こ、これは……?」


ミアは膝の震えを抑えられず、その場に崩れ落ちそうになった。

だが、横にいるガオは屈託のない笑顔で胸を張る。


「魔王様だぞ!表情が格好良いだろ!?」


「ガオちゃん。格好良くはないでしょ……

アマネが苦笑しながら、魔王……封印されている父を見つめた。


「お父様は復活間近……

お姉ちゃんはお父様が復活したら、すべてが上手くいくと言っているけれど……


……私はそうは思わないわ」


「そうは思わないというのは、どういう意味ですか?」


問いかけるミアに、アマネは少し悲しげに笑う。


「お父様は、お母様に裏切られたと勘違いしたまま封印されてしまったわ。

もし復活すれば、まずはお母様を殺しに行くでしょう……

でも、お母様はもういない。そうなれば、次に彼が何をするか、わかるでしょ?」


(人間全体への復讐か……あるいはこの世界そのものの破壊)


ミアの背筋がゾッとなる感覚を覚えた。


そして、そんな危険な魔王の調査の旅に出た、かつての友の事を思い出した。


「……勇者パーティは、ここには来なかったのですか?魔王の調査のために」


「もちろん来たわ。

でも、私の幻影術でここへは辿り着けないようにしておいたの。

彼らにはただの『魔獣が多い森』にしか見えなかったはずよ」


アマネは少し遠い目をして続ける。


「パーティの僧侶の女性だけは、ずっと違和感があると言っていたけれど……

最後まで勇者には聞き入れられなかったみたいね

彼女の意見が受け入れられていれば、私の幻影の術も破られていたかもね……」



(エレナちゃん……)



湖畔に佇む小さな小屋へと案内された。

そこが、アマネとガオの隠れ家のようだ。


「ガオはカレン様から、アマネを守るように言われてるんだぞ!

アマネはガオの親友だしな!」


ガオの言葉を聞きながら、ミアは自分の右手の痺れを思い出していた。


五忠臣ゼニアの猛攻でさえミアの防御壁魔法にひびを入れるのは、相当な数の打撃が必要だった。

もちろん、あれからさらに研鑽されている。


それを、ほぼ一撃で粉砕したガオの拳。

このガオの攻撃力が、とてつもないのは間違いない……


なるほど、このガオはカレンが用意した、最強のアマネナイトと言ったところか……



小屋の中で、テーブルにつき、お茶を出される。


出されたお茶は、エルミアが淹れる怪しい薬草茶(?)とは違い、かつて王国で嗜んでいた懐かしくも香り高いものだった。


ミアは、自分が聖女の座を追われ、その後の巡礼の途中でカレンと出会った事。

二人で共闘し、五忠臣ヴィンセントと戦った事。

その後、バルカ帝国で五忠臣ゼニアと戦った事。


「……でも、カレンさんから、この世界に来た本当の理由は聞けなかったんです」


真剣に耳を傾けていたアマネが、何かを決心したように口を開く。


「私の力は……」



その時、アマネの足元の影が、生き物のようにゆらりとうごめいた。

影は瞬く間に立体化し、深いローブを纏った一人の老人が、ミアとアマネの間に割って入るように現れた。


「……ッ!?」


「わが名は、オウル。そこのガオ共々、魔王様の五忠臣が一人」


いきなりの自己紹介に驚くミア

つい、自分も礼儀正しく、挨拶を返してしまう。


「あ、私は王国の聖女、ミア・ルミエールと言います……」



……ガオはとてつもなく強いが、少し純粋すぎるところがある。

そこで、戦闘力だけでなく知力も高そうな、このオウルも護衛に配置しているのだろうか……


カレンが、このアマネを相当に大切にしているのがよくわかる……



思わず名乗ったミアの挨拶を無視し、オウルは厳格な面持ちでアマネに問いかけた。


「アマネ様。このミアと名乗る聖女……信じてもよろしいものでしょうか?」


アマネは一度ミアを見つめ、それから迷いのない声で答えた。


「私は……彼女を信じても良いと思っているの」


ミアは、アマネが信じても良いと言ってくれたことが、

なぜかとても嬉しいことのように感じるのだった……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ