12 聖女の心
〇王都・城下町オープンテラス
午後の柔らかな日差しが降り注ぐカフェ。
ミアは一人、冷めかけた紅茶を前に座っていた。
賑やかな街の喧騒が、今の彼女には遠く感じられる。
(私は聖女になるためにここに来た。
そのチャンスが、今、目の前にある……
なのに、どうして私はこんなに躊躇しているの……?)
みんなを助けたかった……
傷ついている人を助けたかった。
自分はそれができる女神に選ばれた人間だと思っていた……
「ううぅ……」
卒業式でも見せなかった涙が、ポロポロとテーブルに落ちる。
才能が枯れたから、第一神界魔法しか使えないから、だから人を救うのもやめるというのか。
それでは、自分が今まで学んできたことは何だったのか。
ただ、高い能力を持って人から崇められたかっただけなのか。
11歳の頃、ミアがエレナに語っていた言葉。
『初代聖女マリアベル様は、元々は小さな教会のシスターだったのよ。
でも、その魔力をすべて人々のために使おうとした姿勢が支持されて、みんなが彼女を『聖女』と呼ぶようになったの。
聖女とは与えられる称号じゃない。必要なのは能力の高さじゃない、救いたい心と実行力だけなのよ!』
「……そうだよ。そうだったじゃないミア!」
ミアは立ち上がり、涙を乱暴に拭った。
能力が伸びなかったことを言い訳にして、一番大切な『聖女の心』まで失いかけていた。
(私が間違ってた。能力の高さなんて関係ない。一からやり直そう!)
ミアは王宮に向かって走り出した。
風を切り、ピンク色の長い髪が鮮やかに揺れる。
(今すぐ聖女の話はお断りしよう。
まだ間に合うはず。私より優秀な生徒はいくらでもいるのだもの!
私は…… 私は一から、もっと真摯に一つ一つ教会や医院や薬屋に当たっていこう……
どんな小さな場所からでもいい。
一人ずつ、目の前の人を助けることから始めるんだ!)
今の自分に足りなかったのは、高い魔力や第二神界魔法ではなく、地に足をつけて人々に向き合う覚悟だった。
走り続けるミアの顔には、迷いは消え希望に満ちた笑顔が溢れていた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
ミアは自分で何とか心の整理ができました。
よろしければ、続きのお話もよろしくお願いします。




