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かつて神童と呼ばれた89位聖女。ハニトラ勇者伝説の真実を暴いて見せます!  作者: けけりーな
第八章 聖女のすべてを知り、覚悟を決めちゃいました!
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115 聖女の矜持

〇バルカ城・謁見の間


数日後、ミアとアンナは懐かしきバルカ城の謁見の間に帰還していた。


「よくぞ戻った、シスター・アンナ。それにシスター・ミィよ!」


玉座から立ち上がり、バルカ皇帝が二人を温かく迎える。

だが、アンナの口から飛び出したのは、再会の挨拶ではなく切実な願いだった。


「陛下、早速なのですが、王国北へ向かう船を出してほしいのです!」


事情を説明するアンナの声を聞き、皇帝は珍しく眉根を寄せて押し黙った。


「なるほど……うーむ……」


「どうかなさったのですか?国王陛下」


ミアが怪訝そうに尋ねると、皇帝は視線を泳がせた。


「いや……何でもない。あい分かった。船はすぐにでも準備させよう」


「国王陛下!」


ミアが一歩前へ出る。

その瞳には、隠し事を見逃さない鋭い光が宿っていた。


「私には、陛下に助けられた大きな恩義がございます。

もし何かお困りごとがあるのなら、お話しください。

私にお力になれることがあるかもしれません」


「ちょっと、なんでアンタはそんなに何にでも首を突っ込みたがるのよ」


アンナが呆れたように横を向くが、皇帝の煮え切らない態度に、堪り兼ねた大臣が横から口を挟んだ。


「実は、現在バルカ国内が――」


「大臣!静かにしておれ!」


王の制止も、ミアの耳を塞ぐには遅すぎた。


「バルカ国内で何があったのですか?陛下!お話しください!!」



観念したかのように、バルカ王が重い口を開いた。


「実は、イザベラが王国へ行ってしまったため、このバルカには聖女不在の期間が数か月続いている。

女神教会本部には新たな聖女の派遣を打診しておるのだが、一向に返答がない。

……バルカの土地も、随分と荒れてきておってな」


ミアの脳裏に、エルミアが語った「聖女システム」の話が浮かぶ。

(……もしあの話が本当なら、聖女がいないこの数か月、バルカの豊穣の力の取り分は『ゼロ』っていうことになるんだわ)


バルカ王は、すがるような眼差しでミアを見つめた。


「シスター・ミィよ!このバルカ帝国の聖女になってはくれんか!?

そなたの実力と実績であれば、バルカの聖女を十分に務め上げてくれよう!」


「もちろん、王国のような不当な待遇は致しません!

国を挙げてバックアップいたします。お約束します!

ミィ様でしたら、国民から愛される聖女になっていただけるはずです!

なにとぞ、よろしくお願いいたします!」


大臣も必死に頭を下げる。


ミアは思考を巡らせた。

教会が聖女を派遣しないのは、王国からの指示が入っているのかもしれない……

指名手配犯である自分を匿ったバルカへの「報復」かもしれない。


自分が無関係とは思えない……


このバルカ帝国を放置するわけにはいかない。

短期間だけでもこの国の聖女を務めて持ち直すべきか……


だが、王国側のシステムを正常化させなければ、世界全体の豊穣の力そのものが枯渇してしまう。


王国へ行ってイザベラと豊穣の力の根本を何とかする事……

まずは目の前のバルカ帝国を何とかする事……


同時に進めたい……優先順位が分からない……

ミアが、目を閉じてしまった、その時だった。



「しゃーない!私がバルカの聖女をやってやるわよ!!」



朗々とした声が響き、ミアも王も驚いて声の主――アンナを見た。


「ミア!アンタは王国に帰って、やるべきことをやってきなさい!

バルカのことは私に任せて!いつまでもよそ者のアンタに、おんぶにだっこってわけにもいかないでしょ!」


アンナは胸を張り、堂々と言い放った。


確かに、純粋な魔力出力だけであればアンナはミアを凌駕する。

何より彼女は、近年最高と言われた神童世代の卒業順位第8位、あらゆる魔法を使いこなすスーパーエリートなのだ。


「アンナちゃん……!」


「ふむぅ……」


皇帝も迷っている……


アンナは、迷うミアの事を思いやり、この国のシスターのプライドを見せてくれた……



ならばミアも見せねばなるまい。


聖女の矜持を!!



「陛下!今まで偽っており申し訳ございません!

私の本当の名は王国の聖女ミアです!!



第五十八代聖女、ミア・ルミエールが、アンナをこの国の聖女に推薦します!!」



若き二人のシスターが見せつけた矜持。

無視できるバルカ皇帝ではなかった。


「ふむう……確かに……いつまでもミィ殿に頼りっぱなしというわけにもいかんか」


「陛下!アンナちゃんなら間違いありません!彼女の力は私などより遥かに上です。

バルカの聖女として、イザベラ以上の奇跡を見せるでしょう!」


「あい、わかった!バルカの新聖女はアンナとしよう。

聖女ミアよ、小型の高速船ならすぐに出せる。今すぐ出航するか!?」


「はい!ありがとうございます、陛下!!」



バルカ中央港。


準備もそこそこに、ミアは小さな船に乗り込もうとしていた。

岸壁には、見送りに来たアンナが立っている。


「ミア……本当はついて行きたかったけど……ごめんね?」


アンナが寂しげに微笑み、ミアの頬にそっと触れた。


「いいえ、アンナちゃん。本当にありがとうございました。バルカのこと、お願いしますね」


「もちろん!アンタも、王国のこと頼んだわよ!」


ミアは無言で襟首を引っ張ると、胸元からのクロスを取り出し、アンナの前に掲げた。

それを見て、アンナもまた、悪戯っぽく笑って自分のクロスを取り出す。



――カチン!



二人のクロスが触れ合い、高い音が港に響いた。

それは、同じ志を持つ聖女たちの、魂の約束だった。



高速船が港を離れる。

陸地で手を振るアンナの姿が、みるみるうちに小さくなっていく。


再び、あの王国へ。


偽りの聖女イザベラ。

王の容態も心配だ。

マーサ様が持っていたという、ジークハルトの手記・第五巻……


やるべきことは山積みだ。


ミアは胸のクロスを強く握りしめた。

離れゆくバルカの大地を見つめるその瞳には、未来を切り拓く覚悟の光が宿っていた。


逆巻く波を切り裂き、高速船は一路、因縁の王国へと突き進んでいくのであった。



第八章【完】

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


今回で第八章は完結です。次回から第九章に進みます。

さらに累計1500UU・6000PV到達!

ありがとうございます!感謝です!


それでは、よろしければ、次のお話もまたよろしくお願いいたします。

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