108 王国の聖女
〇街外れの森・野営地
「家に案内してくれるのかも。ついて行ってみましょうか……」
アンナはそう言うと、ずぶ濡れの修道衣を翻し、少女の後を追った。
少女は無言のまま街を抜け、整備された馬車道を外れると、腰まである草原を横切り、深い森の奥へと突き進んでいく。
歩くこと数時間。ようやく足を止めた少女が、事もなげに言った。
「さてと……今日はこのあたりで野宿じゃな。おぬしらもその辺で適当に寝るのじゃ」
「ちょっと待ちなさいよ!!」
アンナが大声でツッコミを入れる。
「家はどこよ!?あの言い方なら数分で着くと思うじゃない!数日がかりの旅路だったの!?」
「なんじゃ、騒がしい奴じゃな……
このあたりは魔獣もおるから、襲われてもワシは助けてやらんぞ。
というか、ワシは戦えんから真っ先に逃げるしな……」
少女は悪びれる様子もなく、手際よく枝を集め始めた。
「このあたりで寝ればいいんですよね……?」
ミアは苦笑いしながら、大きな岩のふもとに腰を下ろそうとする。
「なんでアンタも妙に適応力高いのよ!?」
アンナの叫びが夜の森に虚しく響いた……
やがてパチパチとはぜる焚き火を囲み、三人の影が揺れる。
「で、アンタがエルミアってことでいいわけ?」
アンナが探るように尋ねた。
「まあ、そうじゃな。おぬしらのこともよう知っておるよ。
聖女ミアに、聖女学園で今年の8位卒業のアンナじゃな?」
「え!?ミアのことはともかく、アタシのことまで知ってるって……あんた何者よ?教会の関係者か何かなわけ?」
驚くアンナの横で、ミアは自嘲気味に微笑んだ。
「私は『元』聖女ですけどね……」
すると、エルミアが心底呆れたような表情を浮かべる。
「はぁ?なにを言っておる。おぬしは今も、王国の聖女じゃろうが」
「いえ、私は聖女の地位を剥奪され、王国を追放されています……」
「剥奪だと?誰に剥奪されたんじゃ?無理やり誰かを後継に指名させられたのか?」
「???」
ミアとアンナは顔を見合わせます。話が全く噛みあいそうにない。
「あー……えーと、おぬしらにはどこから話せばよいのじゃ?」
エルミアが頭を抱えました。
「どこからって言われても、最初から全部聞かせてもらわないと!」
アンナが少し喧嘩腰になっている。
「いいか、王国の聖女は他の国の聖女とはわけが違うんじゃ。
特別な存在……システムそのものと言ってもよい」
「まあ、聖女候補のトップが王国の聖女になって、負けた人が他国に派遣されるんだから、別格だってのはわかるけど……」
アンナがそう返すと、エルミアは深い溜息をつき、静かに語りだした。
「なんじゃ、その程度の知識しかないんか。
……よいじゃろ、おぬしらが信じている『聖女』というものの正体を教えてやろう」
焚き火の光に照らされたエルミアの顔が、ふと真剣になった。
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