105 愚か者の算段と不気味な笑み
〇王宮・謁見の間
「お……王子……」
大臣が、王座に座るアルフォンスのもとへ駆け寄る。
その顔色は、かつてないほどに悪い。
アルフォンスはその大臣の顔色に、ただ事ではないと気付く。
「どうした!?言ってみろ」
「女神教会最高司祭であるセシリア様が、陛下と公式の会談がしたいと……」
聞き終えるなり、アルフォンスの顔がみるみる青ざめていく。
理由は明白だ。
荒れゆく大地。聖女学園で続く生徒の神隠し事件。
そして、一番の理由。聖女ミアの王国側の独断による追放。
女神教会にもいくつか派閥はあるが、
最高司祭派は、初代聖女マリアベルの全人類に無償の慈悲を……と言う考えの元、
聖女こそが女神の化身・女神教会の象徴であり、全人類に慈悲を与える事の出来る、究極の存在と言う考えだ。
なぜ聖女が、女神教会内ではなく王国にいるのかと言えば、
建前上は、王国との友好関係の証に、聖女自らが降臨し、国を正しい方向に導いている。
という事になっている。
その聖女を王国側の判断で一方的に追放するなど、女神教会からしてみれば、
象徴を汚されたという、ありえない事態。
今日までは、何かミアに考えがあるのかも……と言う事で、
いわば聖女ミアの顔を立てて、黙認してきたが
もはや、それも我慢の限界、タイムリミットと言う空気を醸し出している。
特にセシリアは、歴代でもトップクラスに「聖女絶対至上主義」の持ち主である。
教会側のトップから、国のトップとの公式の会談を申し込んでくる時点で、
聖女学園生徒の神隠し事件に、王国が何も手が打ててない事も含めて、怒り混じりなのは明白…
「ち、父上はご病気だ。
会談は遅らせていただくようにお伝えしろ……て、丁重にな……」
青ざめた顔で、視点が定まっていない状態のアルフォンス……
「……かしこまりました」
深々と頭を下げる大臣。
ようやくリリィのお守りから解放されたというのに、この男も苦労人である。
「そんな事より、偽聖女のミアだ!
まだ捕らえられないのか!?奴さえ!奴さえ捕らえる事が出来れば、すべてが丸く収まるのだ!!」
玉座のひじ掛けに、拳を振り下ろすアルフォンス。
「殿下……恐れながらお尋ねいたします。ミア様がお帰りになられた際には、どうするおつもりで?」
「フン!奴は大罪人だ。
奴には実際の聖女を続けさせて、魔力が尽きるまで一生祈り続けさせる。
そして国民の前では、このままイザベラを聖女として活躍させるのだ!
ミアの口から適当な理由を説明させれば、教会の連中も大人しくなるだろう」
「…………」
大臣は絶句した。まさかここまで愚かだったとは。
その話を柱の陰で聞いていたイザベラは、満足そうに笑っていた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回から第八章に突入します!
次回からはミアとアンナの話に戻ります。
よろしければ、次のお話もまたよろしくお願いいたします。




