104 太陽のようなシスター
〇宿場町
数日いるだけで、アンナの魔力は、その輝きを強めていた。
もちろんベアトリーチェに、少しでも良いところを見せようとするアンナの頑張りもあったが、
このべアトリーチェというシスター、さすがに元主席で聖女を支えた実力者。ただモノではないようだ。
ある日の午後、今日も馬車の誘導に勤しむミアとアンナ。
街の入り口で、以前アンナと激しい喧嘩を繰り広げた貴族の馬車が再び通りかかった。
「あ、アナタは! 以前、ここで喧嘩しちゃった旅行者の貴族!」
「貴様はあの時のシスター! またお前か……
ん? 少し雰囲気が変わったか?」
身構える貴族に対し、アンナは迷いなく、ぺこりと深く頭を下げました。
「その節は失礼しました! もう、お帰りですか?」
顔を上げたアンナの笑顔は、まるで雲間から差し込む太陽のような眩しさだった。
それは、相手の無事を願う、純粋なシスターの輝き。
「あ、ああ…… あの時は、こちらも悪かったね……
巡礼中のシスター?……アンナというのか。
まあ、私の街に来る時には、屋敷に顔を出していきなさい。頑張りなさい」
驚いたことに、高圧的だった貴族が表情をやわらげ、労いの言葉をかけて去っていったのだ。
「じゃあな嬢ちゃん、もう喧嘩すんなよ!」
御者の横に座る用心棒も、笑顔で去っていく。
「どうも~」と言いながら、アンナは笑顔で去り行く馬車に手を振っている。
ポカーンと口を開けて、呆然と立ち尽くすミア。
「わ、私……あんな声をかけていただいたこと、一度もないんですけど……」
もちろん、優しい言葉をかけてもらうためにやっているわけではないが、
なんだかひどく、うらやましく感じてしまうミア。
「ま、人徳の差ってやつじゃない?」
アンナはニシシと笑ってミアの肩をポンと叩くと、次の馬車へと元気に駆け寄っていった。
その様子を見たミアは、かつてリリィ様が「魔力より笑顔で人を癒した」と言われた姿に、どこか重なるものを感じていた。
昼は教会のシスターとしての激務、夜はベアトリーチェによる魔法の猛訓練。
寝る頃には二人とも泥のように眠る日々だったが、その疲れは心地よい充実感に満ちていた。
しかし、巡礼の旅は止まれない。
ついに、行かなければならないと二人が決意した朝。
「そう、行ってしまうのね…… 今日まで手伝ってくれてありがとう、二人とも」
ベアトリーチェが、慈愛に満ちた瞳で二人を見つめた。
「ベアト様ぁ〜!」
アンナが堪えきれず、ベアトリーチェの胸に飛び込んだ。
その頭を、ベアトリーチェは大きな母のような手で優しく撫でる。
そして、ベアトリーチェはミアにも、静かに手を差し伸べてくれた。
「あ……ベアトリーチェ様……」
ミアもまた、その温もりに導かれるように、彼女の胸に飛び込むのだった。
何度も手を振って、宿場町を後にする二人。
目指すは、ジークハルト温泉。
そこでジークハルトの子孫、エルミアと言われる人に出会う事で
勇者伝説は、すべて明らかになるのか?
ミアとアンナの足取りは軽やかだった。
第七章【完】
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
今回で第七章は完了になります。
さらに、累計4500PV突破!これもいつも読んでくださる皆さまのおかげです!
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