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かつて神童と呼ばれた89位聖女。ハニトラ勇者伝説の真実を暴いて見せます!  作者: けけりーな
第七章 幼い翼のひな鳥たちは、本物の聖女の翼を知りました!
103/114

103 馬車誘導はシスターのお仕事!?

〇聖女の「自炊」と知恵


ベアトリーチェのもとでの修行は、魔法だけではなかった。

料理が得意なミアの担当は朝食づくり。

ベアトリーチェは、限られた予算と、どこにでもある野草を魔法のように美味しく、滋養溢れる一皿に変える知恵をミアに授けてくれる。


「ミアさん、潤沢な寄付がある教会ばかりではないわ。

どんな荒野に放り出されても、隣人を癒し、自分を生かす術を持っておきなさい」


ここはジークハルト温泉へ向かう富裕層や商人が行き交う街。

過去に炊き出しをしようとして街の景観が悪化すると見なされ、

街の観光協会から、きつく注意されたというベアトリーチェの苦い経験談を聞きながら、

ミアは実践的なシスターの在り方を学んでいった。


一方、掃除担当のアンナは、ミアの予想をはるかに超える働きを見せていた。


「もう!ここのタイルの隙間の苔が許せないわ!」


文句を言いながらも、小さな体をフル回転させて教会中をピカピカに磨き上げていく。


(いつもみたいに文句ばっかり言ってるようなら、お尻を叩かなきゃいけないかも……

なんて思っていたけれど、アンナちゃんも必死なんだなぁ……)


憧れのベアトリーチェに褒められたい一心で、額に汗して働くアンナ。

エリートのプライドが、今は完璧な掃除という形に昇華されているようだった。


そんな、アンナを見て、ミアはかつて自分が、マーサに褒められたい一心で

村人と兵士のトラブルの仲裁に一人で向かってしまったことを思い出し、少し悲しい気分になる。



午後はシスターとしての本番。

女神への祈りを捧げ、簡易回復所を設営し、街に溢れる旅行者たちのトラブルを仲裁します。


特にこの街の独特のメインの仕事が、馬車の誘導だった。


この街には馬車を止めておく旅行者用の駐車場のようなものがあるが、

ここに来るような貴族はプライドが高く、止める位置ひとつとっても、一番中央の良い場所や、宿に近い場所を譲ろうとしない者も多い。


その為、この街の駐車場では、常に大小のトラブルが発生している。


それを諫めて、上手く誘導するのもこの街のシスターの役目のようだった。



「貴様、ここは我主様が、この宿場街に泊まる度に、いつも馬車を止めている場所だぞ!」


「何を言う!それはこちらとて同じこと。先に止めたのはこちらだろう!!」


早速、高級な馬車の御者同士で喧嘩している。

慌ててミアが駆け付ける。


「まあまあ、お互い旅の途中ですもの。

こちらの方は今回は向こうで止めていただけませんでしょうか?


中央からは離れますが、明日の朝には出発しやすい位置になるかと思いますので。

お互いに譲り合えば、きっと、今夜の夕食がもっと美味しくなりますよ!」


ミアが穏やかに微笑むと、殺気立っていた御者たちも毒気を抜かれたようになる。


すると、後から来た馬車の御者が馬車の中の貴族と何か話している。


「悪かったね。我主は女神教を信仰しておられるのだ。シスター殿の言うとおりにするようにとの仰せだ。

それではシスター殿、その場所に誘導していただけるかな?」


「いや、こちらこそ、悪かった。では今回はこの場所はこちらが使わせてもらうとしよう」


ミアは誘導が初めてとは思えないほどに潤滑に進めていた。



一方、アンナの方は……


「ちょっと!そこに馬車を停めたら、他の馬車の通行の邪魔よ!

見りゃわかるでしょ!どきなさいよ!」


貴族の用心棒に突っかかっていく。


「あぁん?ガキのシスターは引っ込んでろ!」


「ガキ!?あー、言ったわね!あんたのその馬車の馬、麻痺魔法で動かなくしてやろうか!?」


「なんだこのガキは!?本当にシスターなのかよ!?」


「あーもう!アンタじゃラチがあかないわ!!」


そう言って、馬車の窓を荒っぽくドンドンと叩き、中の貴族と話そうとする。

慌てて、用心棒に馬車から引っぺがされ、二人で取っ組み合い寸前の喧嘩になってしまう。


馬車の中から怒った貴族が出てきて、大トラブル寸前になり、慌ててベアトリーチェとミアが駆け付けて、必死に謝罪する……


夕方には、アンナはベアトリーチェに、こってりと絞られるのが日課となってしまった……


「アンナ、力でねじ伏せるのはシスターの仕事ではありません。

それに、麻痺魔法は、自己防衛、あるいは慈悲による使用(他人を助ける)以外に使う事は、きつく禁じられているでしょう?」


「うう……ベアト様ぁ、でもアイツが……」


正座させられ、しゅんとしているアンナの横で、ミアはクスクスと笑みをこぼす。


「あ、あんた!今、笑ったわねっ!?」


「アンナ!!」


「は、はいぃ……」


ミアに突っかかろうとするが、ベアトリーチェに一喝され、またもしゅんとするアンナ。


かつての学生時代には、誰とも群れずつるまず、いつも一人だったアンナが、

こうして泥臭く人間味を溢れさせて成長していく姿が、ミアには愛おしく感じられるのだった。

最後まで読んでいただいてありがとうございます!


よろしければ、次のお話もよろしくお願いしますね。

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