101 強欲のイザベラ
〇宿場町・教会
「イザベラは気が強い子ではあったのだけど、真面目でとても熱心な子だったわ。
そもそも彼女の実家はご両親ともに相当熱心な女神教の信者だったの。
彼女はそのご両親の期待を背負い、誰よりも熱心に修行に励んでいたわ。
オルテンシア様もその努力は認めていた。けれど……聖女様に選ばれたのは、魔力で劣るリリィ様だった」
ミアは、エレナと自分の関係を思い浮かべてしまい、複雑な気持ちになる。
「能力で勝っているのに選ばれない。それが彼女の何かに火をつけてしまったのかもしれないわね。
バルカ帝国の聖女として派遣された時、彼女は名誉だと、素直に喜んでいたけれど……
留学に来ていたアルフォンス王子と国を出て行ってしまった……」
「結局、聖女の使命なんてその程度のものだったんでしょ?
皇太子妃という権力に目がくらんだ、ただの強欲女よ!」
アンナが吐き捨てるように言う。
しかし、ミアはそれだけではないような気がしてならなかった……
「ベアトリーチェ様。イザベラは王国に何か恨みは……あるいは、何か別の目的はなかったのでしょうか?」
「……私にも断言はできないわ。
ただ、彼女が去った後のバルカ帝国は、女神教への不信感だけが残ってしまったわ……」
「そういえば……今ってバルカ帝国の聖女は不在ですけど、大丈夫なんですか?」
ミアの言葉に、アンナも不安げに眉を寄せた。
「一応、王国の女神教会本部に派遣依頼は出しているみたいだけど……
王国も聖女学園の子達の失踪事件とかあるんでしょ?
その状況で、すぐにまともな聖女を寄越すとは思えないわね……」
ミアは、自分を助けてくれたバルカ帝国の現状に、胸が締め付けられる思いだった。
「あなたたち、次はジークハルト温泉まで行くのよね?」
ベアトリーチェが二人の顔を覗き込む。
「あ、はい。そのつもりです」
「でしたら、エルミア様にお会いしてみてはどうかしら?
きっと、あなたたちの巡礼の旅の助けになってくれるはずよ」
「……誰です、ソレ?」
アンナの頭の上に「?」マークが浮かんでいる。
バルカ国のお抱えシスターである彼女にも、その名は馴染みが無かったようだ。
「かつてこの大陸を救った、戦士ジークハルト様の子孫と言われている方よ。
今は温泉街の奥で、静かに暮らしておられるわ」
「戦士ジークハルトの子孫……」
神話や歴史の教科書に必ず出てくる英雄の名。その末裔が、今の時代に生きている。
「あの魔族ゼニアが言っていた『巫女姫』や、イザベラの変貌の謎。
エルミア様なら、何か知っているかもしれないわ」
エルミアとは一体…
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