1 順位発表
〇聖女学戦・大講堂前
重厚な石造りの廊下。
女神の力を使える極めて貴重な存在、女神魔法の使い手たちを育成する学校
『聖女学園』
壁には歴代の聖女たちの肖像画が並び、受験生たちを優しく見守っているかのように見下ろしている。
掲示板の前には、白い制服に身を包んだ女子生徒たちが群がり、悲鳴や歓喜の声を上げている。
ミアは群衆の後ろで祈るように胸の前で手を組んでいる。
鮮やかなピンク色のふわっとしたロングヘア。不安に曇っていても、なお周囲の目を引くほどの美貌の持ち主……
だが、本人はそれどころではない。
三年生最後のテスト結果。その上位100名が張り出された。
(心臓の音がドクンドクンとうるさい…… 今の私の暫定順位は107位。
もし、今回のテストで50位以内に入れれば、総合順位100位の壁を越えられる。そうすれば……)
聖女学園での卒業時の総合順位。
主席は、王国の聖女候補生の一人として城に入り、現聖女様から直々の指導を受ける。
上手くいけば次の聖女になることができるのだ
もし、主席になれなくても、この世界での聖女学園のネームバリューは相当に大きい。
10以内であれば、近隣の国家から重要なポジションで引く手数多だし、30位以内であれば女神教会の幹部候補としての仕事に就くことも可能だ。
二桁に入っていれば、病院や、魔導回復施設の職員として働くこともできる。
何より、貴重な回復魔法の使い手は、冒険者チームから引っ張りダコになる。
一桁の順位であれば、いきなりSランク冒険者からスカウトされることもある程だ。
しかし、100以下になると、その扱いはガラッと変わる。
いかに聖女学園卒業生と言えども、早熟で魔力の枯れた負け組。というレッテルが張られてしまう。
ミアにとって、今回の最終試験の順位は人生を決めると言っても過言ではないほどに重要なものだった。
かつて『9歳の神童』と謳われた面影は、今の彼女にはない。
あるのは、才能の枯渇というレッテルに必死に抗う姿だけだった。
張り出された上位成績者一覧表の前にはすでに多くの女生徒たちが集まっており、結果に一喜一憂している。
生徒たちが少しずつ散り始め、掲示板への道が開ける。
張り出されている100位以上の上位者が記載されているリスト。
ミアは意を決して一歩踏み出し、震える指先で、なぞるようにリストを下から見ていく……
51~100位の名前が書き出された紙。まだ自分の名前は出てこない……
ミアの心臓は張り裂けそうになる。
50位以上の紙に目をやるが、ここ数年で50位以内になど入った事がないミア…
ミアの目にはすでに涙が潤んでおり、指先は震える。
(筆記試験はテスト勉強の山が当たってたのに……)
今回100位に入れなければ、当然最終順位100以内の夢もたたれるのだ。
33位 ミア・ルミエール
「……あった。試験結果、33位!」
ミアは目を見開き、さらにその横の「総合順位」へ視線を移す。
「……89位。 ……入った。二桁に入ってる!」
張り詰めていた糸が切れ、ミアは自分の膝が、わずかに震えているのを感じた。
周囲では、上位に入った生徒たちが「Sランクパーティに誘われたらどうしよう」などと
華やかな会話を繰り広げているが、ミアにとっての『89位』は、彼女たちが手にした栄光と同様に重い。
(やった……! 89位なら、大きな病院の看護師とかは高望みかもしれないけど、
街の薬屋さんの売り子さんとか、調合助手とかなら雇ってもらえるかもしれない!
……お仕事にありつけるんだ!)
ミアはこみ上げる喜びを抑えきれず、遠慮がちながらも力強いガッツポーズを作る。
その顔には、18歳の少女らしい、純粋で輝くような笑顔が浮かんでいる。
「よしっ! お祝いに、今日は少しだけ良い茶葉でお茶を淹れようかな!」
弾むような足取りで歩き出すミア。
これが、後に三大聖女の一人として歴史に刻まれる少女、ミア・ルミエールの波乱に満ちた物語の幕開けであった。
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