ネット監視が崩壊する日 第四章 人力経済の夜明け
ネットワークによる検閲と支配から逃れた人々はどうなるのだろうか?
【西国立川、崩壊後の経済】
崩壊から三日が経過した。街はまだ完全に機能不全だがパニックは収まりつつあった。それは茂たちが構築した『泉』の冷静な情報と、それをアナログに増幅する「人力ネットワーク」のおかげだ。
元無線技師が運営する『崩壊後の西国立川FM』では、茂たちの情報に加え元記者たちが地域の人々の声を収集し事実を報道していた。
「本日の市場情報です。大手スーパーやチェーン店などは電子システム停止のため休業中ですが、駅前の八百屋、肉屋、魚屋は営業を再開しています。現金又はツケ払いが基本です。顔見知りでない方や現金をお持ちでない方は現物(米、缶詰、乾電池)との交換になります。ご注意ください。」
人力が主体となった経済は極端な格差を強制的に是正し始めた。
大金を握りコンプライアンス厳守と利便性向上の名の下に経営者がAIによって築いた人々を誘導し洗脳を続けていた大規模なオンラインプラットフォームは消滅し、残ったのは人間の顔と顔の繋がりだ。
最低賃金の労働者だったスーパーの店員は電卓と暗算という「手」のスキルによって突如として街の流通の要となり、その労働の価値は格段に向上した。
茂の元に集まった元新聞記者達のグループは、手書きで情報を整理し、古い印刷機を使って壁新聞『西国立川・泉日報』を発行し始めた。
彼らは、街の商店の在庫情報、人手不足の求人情報、そして何よりも「突っ込んだ取材」を再開した。
「本日の一面です。『元大手銀行支店長、地域での信用ゼロ』。AIのスコアリングに頼り住民との関わりを軽視していた彼の金庫は今となっては誰も開けることができません。信用を金で買おうとした者は今となっては最も信用を失いました。」
記事は資本主義の論理に支配されていた街の新しい価値観を突きつけていた。
【教育:手で覚える授業の復活】
崩壊後に小学校ではタブレットが一斉に撤去された。
「先生、宿題は? アプリの課題は?」と混乱する子供たちに、教育を諦めていたベテラン教師が数年振りにチョークを手に黒板に向かった。
「今日は、字を書く。キーボードではなく自分の手で。そして、歴史を学ぶ。AIが『安全でない』と検閲して教科書から消した真実の歴史を。」
教師は手書きの文字を子供たちに教え始めた。その教師の震える手は技術に置き換えられていた「教育者の情熱」を取り戻していた。子供たちは映像で見せられる情報よりも、教師の肉声とチョークの音から発せられる情報に不思議な重みと集中力を感じ始めた。
山田茂は、自宅のPCから『泉』を通じてこの生まれ変わった学校の教師たちに検閲されていない時代の資料をテキストデータで密かに送り続けた。彼は自分のコードが未来の自由な人間を育むための土壌になっていることを実感していた。
街は不便になり人々は以前より肉体的に疲労するようになった。しかし、誰もが自分の役割を取り戻し自分の労働が誰かの役に立っていることを直接知るようになった。
茂は窓の外を見た。暗くなった街路に誰かが灯したロウソクの光が揺れている。電力とネットワークは微弱だが、人々の繋がりは太くそして強固になっていた。
今、彼の目の前のPC画面はこれから何をすべきかを考え実行する為のコマンドを待っている。
最近某検索エンジンもhitする内容が自由とはかけ離れた広告主義に走り、情報を与えてくれると言うより誘導させられてる気もしますね。そんな事を感じています。
ついでに話がちょっと纏まってない気がしますね。




