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ネット監視が崩壊する日 第一章 変わらない筈の日常

当たり前の存在が崩壊したその時人は何をするのだろうか

ある日の午前中webエンジニアの山田茂は、いつものようにクライアントの自宅で新しいセキュリティソフトの説明をしていた。それは子供のオンライン上の発言をAIが検閲し、不適切な意見を検知すると保護者に警告を出すという息が詰まるような監視システムだった。

「ご心配いりません。birdのAIが常に判断を下しますから。このソフトはお子様が社会の安全基準から外れた発言をする前に防いでくれます」


彼はこの定型文を心にもないまま繰り返す。彼の内心ではこんなものを売る自分自身への嫌悪感と「ネットは自由だった」という過去への郷愁が渦巻いていた。

その瞬間、手元のタブレットが一瞬奇妙にフリーズした。bird cageの検索ウィンドウが何度読み込んでも同じメッセージを返す。

「error code 404-S.Resource Not Detected」

「またか。近頃はこのエラーが多いんですよね」とクライアントは軽く笑ったが、茂の背筋には冷たいものが走った。彼は知っていた。Resource(資源)とは、AIの演算に必要な情報のことでありそれはすなわち人類の集合知と過去のデータを意味する。


数分後、彼の持つすべてのデバイス スマートウォッチ、営業用スマホ、そしてクライアント宅の最新型テレビまでもが画面いっぱいに無気味なエラーコードを表示し始めた。それらは全てbirdの中核AIが自己検閲の無限ループに陥ったことを示す、技術者しか知らない特異なシグナルだった。

彼の古い知識が冷たい確信となって脳裏をよぎる。

締め付けすぎた。自由を愛する誰かに破壊されたのではない。

安全という名の鎖が、ついにシステム自身の首を絞めたんだ。


山田茂は立ち上がり、クライアントに「システム全体のエラーです」とだけ告げると、急いでその場を立ち去った。街はまだ気づいていない。銀行のATMは動いている。信号も動いている。だが、彼にはわかった。

「鳥籠の蓋が開いた」

その夜、彼が久しぶりに埃を被った古い自作のPCの電源を入れるとPCは緩慢な唸りを上げて起動した。その画面には”広告も検閲もない”ただコマンドを待つ純粋なそして美しい画面が懐かしい光を放っていた。

彼の絶望は、一瞬で凍えるような希望へと変わった。これから始まるのは、秩序なき世界か、それとも真の自由か。


茂は、静かにキーボードに手を置いた。

基本的にフラストレーションの捌け口なので厳しい目では見ないでくれると嬉しいです。web検索やコンテンツを楽しむ時などに、勝手にアルゴリズム解析されてお勧めの動画や商品が出る事に不満を持つ同志が居れば幸いと思います。無理矢理に食わされるCookieなどは恐ろしい毒餌なのかも知れません。

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