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悪役転生。ハーレムものRPGに転生‼…え?俺は憎まれ役の方?ソイツ、ムービーで死ぬヤツじゃん!改訂版  作者: 乙女座の一等星
ドラゴンステーションワゴン第一章アフレルゾ大陸編

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第38話 盗賊と修道女。賢者と情報収集

 さて、今回も公式設定資料集を紐解こう。

 ピックアップするのは勿論、ソフィア。

 

 ソフィアは心優しい修道女。身長は160㎝、エメラルドグリーンの髪色でいつも修道服を着ている。

 彼女の祖父は水門の管理人だったが、ソフィアが物心をついた一年後に死去しているが、その祖父と血の繋がりはない。

 だから彼女の出生は不明だ。修道院での生活は彼女にとって、辛いものだった。

 そのせいか、基本的には人間不信である。

 大人の嘘を見抜き、時には人の心を見透す。

 ソフィアの前で嘘を吐くと、嫌われるかもしれないぞ。因みにドS。


     ◇


「スキル・解錠(ピッキング)。レイモンドって、お約束のように盗賊スキル。ソフィアは灯りの魔法(シーリングライ)。修道女と盗賊ね。」

「私のこと、本当に知っているんですね。分かっていたつもりですが、驚きました」


 ソフィアの灯り魔法で、修道院の地下通路を歩く。

 麓の井戸に繋がっている秘密の道。

 蝋燭で灯されているから、明るくする必要はない。

 ただ、ここは別。


「あった。この部屋だ。牢獄だ」

「こんなところに部屋が…?流石に、ウチの修道院はこんなこと…」

「意味はない。いつ行っても、終盤に行っても、何もない地下牢だよ」


 ただの雰囲気作り。

 でも、絶対にワザと


「ソフィアは神聖魔法『天使の翼(エンゼルウィング)』は覚えている?」

「すみません。その魔法はまだ……。聖なる煙(センコ)なら」

「そういうところでも、勇者のレベルが分かるのか…」

「レベルかわ?どういうことですか?」

「勇者が訪れた時の強さが、ある程度反映される設定なんだ」


 この地下牢の考察を捗らせた理由は、アンデッドモンスターが出現するからだ。

 どうして彷徨える魂が出てくるのか。


「それもセッテイ…。聖なる煙(センコ)!」

「ただ、今は未加入。上手くいけば、約四倍の経験値。今のうちにソフィアを使えるヒロインに育てる」

「レイ、私をいつでも使ってくださいね」

「ん…。えっと」


 何もない空間が存在する修道院地下通路。

 だから色んな考察が捗る。


「心配いりませんよ。こんなこと、レイにしか言いませんから」

「そ、そうか。…このまま、アンデッド狩りだ。あいつら、気持ちよさそうに逝ってる。悪い気はしないな…」

「聖なる煙(センコ)!聖なる煙(センコ)!」


 浄化されていくアンデッドと同じように、心が洗われる。

 そして、現れる気持ち。

 

「聖なる煙(センコ)!聖なる煙(センコ)!聖なる煙(センコ)!聖なる煙(センコ)!まだ、逝けそうですか?」

「こんなに逝けるのかってくらい逝ってる…って!そろそろ止めようか!」


 ほんと、ソフィアの設定を見直した奴の顔が見たい。

 色々と捗らせて拗らせすぎだ。


 俺も色々拗らせすぎか…


「もう、色々捗ってるから。ソフィア、さっきの魔法って、そろそろ行けそう?」

「はい!」


 同じことを繰り返している。

 今回もヒロインを自分に懐かせて、その状態でアルフレドに押し付けるのだろう。


 俺から歩み寄らないと、デスモンドすら危うい。


「レイ。…大丈夫ですか?」

「大丈夫。今はこっちに集中しよう。スキル『強奪』八連!ソフィアの可愛さに癒されろ!」


 レイモンドは強奪スキルだって持っている。

 スケルトンから大事なものを奪う。例えば頭蓋骨。

 それがレイモンド流だろう。


「天使の翼(エンゼルウィング)‼」


 なんと羨ましい昇天だろうか。

 範囲魔法の有効距離に集めたスケルトンの頭蓋骨を詰め込む。

 彷徨える魂だって、頭部に彷徨える脳があるのだろう。

 眼球があるのだろう。


 ソフィアの神々しさを皆で鑑賞しながら、天国に行く。


「凄い…です。この感覚…、凄くいいです…」


 MP回復が出来ないから、やっぱりこの世界ならではの効率プレイをやっている。

 初期のレベルは推定14レベルで、リアルタイムアタック並みに低い。

 エンジョイプレイだと大体20レベルでここを通過する。

 そして、ソフィアは全体治癒魔法(ミナケイミル)をさっきので覚えた。

 推定レベルは25で、全体回復はかなり重宝する。

 だから彼女の存在価値は格段に高くなる。


「なんだか、清々しい部屋になってしまいましたね。私…、モンスターを退治するの初めてで…。すごく感謝です!」


 ソフィアは何かに確信するように、うんうんと頷く。

 見慣れた風景にレイは肩を竦める。


「ソフィアのお陰で彼らの生涯は救われたんだ。」

「素敵です!詩的です!」

「どうだろう。それより、ソフィア。お金、どれだけ増えた?」

「今度は下世話ですね!私…、お金はそんなに…、え?えええ? なんか、小金持ちになってます。私、下世話な人間になってしまいました!」


 そういうシステムだ。

 レイは、中毒性の高い経験値魔物にハマっていたから、余りお金を持っていない。

 宿に泊まりたくなかったから、HP回復薬とMP回復薬を買い込んで森に籠っていた。

 逆に所持金が溶けたまである。パールホワイトスラドンは法で縛った方が良い。

 MP回復薬を買い過ぎたせいだけど、ここで使えたから買っておいて良かったと言える。


「ま…、あの戦いで入ってしまったんだけど。600G」


 大カラス『ガーランド』三匹で600G。

 

「私、ただ魔法を詠唱していただけなのに…、すみません。」


 今回でもお金は入ってきた。

 その比率は9:1。勿論、9がソフィアだ。

 いつも実験で言うと、経験値とお金は同じ比率で割り当てられることが分かった。

 つまり、アルフレドは特別な存在なのだ。


 レイがアルフレドになることは出来ない。

 今回も…


「レイ、汚れた手で顔を触ってはダメです。はい、ハンカチ。これを使ってくださいね。」

「あ、ありがとう……」


 お、俺は目を丸くし、顔を赤くして受け取った。

 推しキャラだから、…それもある。

 でも、違う。これはソフィアルートの映像なのだ。

 アルフレドにならなくても、ヒロインルートを歩める?


 それはさておき、この世界のイベントスチルはヒロインに紐付けされているらしい。


 考えてみれば、当たり前かもしれない。

 恋愛ゲームのイベントスチルは、主人公が映っていないことの方が多い。

 それがこのゲームにも当てはまるらしい、これは嬉しい情報である。


「でも…、それ。お気に入りのハンカチなのです。だから平和になったら、ちゃんと返してくださいね」


 そのセリフまで同じだった。

 ちなみにこれを売ると二周目以降ならバッドエンドだ。

 だから二周目の選択肢が解放されたこの世界で、俺がこれを売ったら、その瞬間に世界滅亡が決まる。

 ただ今は、彼女に返す未来が本当に来るのか、という不安の方が強い。

 

「よし、それじゃあ、そろそろ祭りもいいところだろう。正面から出て行ってやろうじゃないか。」


 そして、レイばかりが得をしたこの地下通路も終わる。

 ソフィアが絡むと、ネタバレが多いのでこれくらいが潮時だろう。


     ◇


 村の歓迎会は佳境に入っていた。


 アルフレド達の前には目を見張るほどのお酒や食べ物が並んでいた。

 その後は街の中心部で、『女神メビウスと光の勇者の物語の舞台劇』、それを見て欲しいと言われた。

 だから今は、中央の舞台に置かれた豪奢な椅子に腰を下ろしている。


『魔王が降臨し、世が乱れし時、西より金の勇者が現れる。その勇者の名はアルフレド。山のように大きなドラゴンを一刀両断する鬼神の如き強さを持ち、聖母のような優しさを持つ男。彼が駆るのは神龍の翼『ステーションワゴン』。文武両道才色兼備、多彩な魔法と多くの武技を使いこなす水色の才女フィーネ。細くしなやかな美しい腕でも、なんのその。岩をも砕く天才剣士にして赤色の美少女エミリ、倒れた民に慈愛の奇跡をもたらし、美麗な体術も使いこなす桃色の麗女マリア。彼らは女神メビウスの導きにて、東へ向かう。神の翼を羽ばたかせ、次に向かうはデスモンド。黒髪の理系女子の手を借りて、海を乗り越えアーマグへ。平和の象徴、我らがリディア姫を奪還し、魔王ヘルガヌスを倒す者なり』 


 取ってつけたような勇者パーティの名前と特徴が入った歌と踊り。

 勇者であることも、今いる仲間たちが必要なことは、既に知っている。

 だから、嬉しい気持ちもないし、くすぐったくもない。


 それでも、彼は身を粉にして頑張り続ける。


「そういうこと…か?」


 歌を聞き、アルフレドはある発見をしていた。


「黒髪のなんとか系女子っていうのがキラリのことね」

「アーマグは東の大陸だっけ」

「リディア姫様‼そっか掴まってるんだ…」


 殆ど知っていたけれど、大事なことは、歌にヒントが残っていたこと。

 やはり、こういう話は各地に残っている。

 それを纏めた本が『設定資料』かも、とアルフレドが思い始める。


「アル。設定資料は要らないかもしれないわね」

「え…。いや、だってこれは」


 そしてフィーネは更に一歩踏み込んだ考察をしていた。


「これはおそらく設定資料は存在するって証拠…」

「あぁ、そうだよな!」


 当然肯定する勇者。ただ、賢者の卵の考え方は少し違った。


「私たちもこの歌を聴いていたら、エミリもマリアも見つけられた。この歌は伝承でしょ。その証拠に私たちの名前が登場した」

「名前?それは俺達が…」


 レイの独り言で時々聞こえていた『設定と資料』

 アルフレドは一番近くにいたから、何度も聞いている。

 ソレを使って、ここまで導いた。ここから先もそのつもりだっただろう。


 だが、彼が恋する水色の才女フィーネは首を傾げる。


「ねぇ、アルフレド。この村でもう一人仲間が来る、その話はどうなったの?」

「それは確かに思った。これは気になるわよね」


 この村にはもっと多くの情報があるのではないか、という考えに至る。

 レイが語る『車がないといけない』理由もそこにあるのかもしれない。

 二重の記憶の意味も分かるかもしれない。

 アルフレドがするべきは、レイという存在に頼らない勇者になることだ。

 フィーネの隣に立つ資格を得ることだ。


「ちょっといいかな。今の歌は原文のまま、なのか?」


 アルフレドは立ち上がって、伝承を歌っていた女性に詰め寄った。

 イケメン勇者に迫られて、歌い女はよろめいて尻餅をつきかけたが、颯爽と彼女を支えられない彼ではない。

 すると、今度は拍手が飛んだ。

 勇者はその拍手に興味を示さず、歌い手にもう一度聞く。


「俺の名前を追加でつけたり、何かを飛ばしたりと、随分俺に聞きやすくアレンジしているように思えたんだ」

「えっと。それは……」


 伝承の勇者様に手を握られ、興奮したのもつかの間、女の目がすーっと泳ぐ。

 そこに居たのは村の長だった。


「そういうものです。それに…流石に今は」

「今知りたいんだ、村長。ここに『設定資料』があるんだろ‼」

「ゆ、勇者様…、きょ、今日はお酒を随分お飲みになられたようですな」

「いや、俺は」

「アル。流石に焦り過ぎ。でも、丁度いいわね。皆さま、挨拶が遅れました。彼が私たちのリーダー、勇者アルフレドです」


 おおおおおおお!きゃああああああ!パチパチパチ、ドドドドドドと、大歓声が上がる。

 ネクタの人口の半分に減ったとはいえ、ネクタの時とは違う

 彼らはこの村を救ったのだ。後ろの後ろまで人がいる。


「ね。聞ける人間はこんなにいる。今なら一度で全員に聞けるわよ?」


 アルフレドはフィーネの行動に目を剥きそうになったが、グッと堪えた。

 彼女の言う通りとしか言えない。全員に聞いて回るのは大変だし、今は村を救ったあとだから、協力してくれるに違いない。


「あと…、これも──」


 美しい顔がグッと迫って、賢者の卵からの耳打ち。

 既に賢者の片鱗が見え隠れする。

 賢者とは勇者を導く存在、アルフレドの泡立った心が和らいでいく。

 今やるべきことは、情報集め。


「みんな、今日は本当に大変だった。全員を救えなかったことを許して欲しい…」


 そして、 アルフレドは生まれた村の話を交えて、魔王軍の脅威を語った。

 絶対に討たねばならないと力説した。

 ミッドバレイの村民も、同じ気持ちで、泣きながら聞いている者もいた。


「俺はまだ勇者として未熟だ。だから、少しでも情報が欲しい。今の詩も参考になった。でも、まだ足りない。分からないことが多い。未熟な俺に誰か‼少しでも情報を‼」


 勇者と称えられた後に、自分は未熟と言い放つアルフレドの発言に、一同はざわざわと困惑した。

 この行動は、当然ゲームの中には存在しない。

 でも、この世界は生きているのだから、レイが持つ設定も効果がない。


「ありますぞ」


 アルフレドはその言葉に目を剥く。

 そして、人ごみの中から一人の老婆が現れて、村長を軽く睨みつけた。


「今の詩ですじゃ。大方、修道院長が要らぬことをしたのかと」


 思わず、アルフレドもオオムギーを睨みそうになるが、隣に立つ賢者の肘鉄で、その気持ちを呑み込む。


「そうだったのですね。今の詩に何かが。…ご婦人、聞かせて頂けますか?」


 徐に頷き、老婆は語る。


「抜けておりましたのじゃ。あの詩、桃色の麗女の後に、こう続きますじゃ…。人々に愛されし、エメラルドの髪の優しき修道女、と。アレはソフィアに違いありません。噂は聞いております。オオムギーが要らぬことを…」

「ちょちょちょっと、困るよ。さぁ、勇者様、こちらへ…」

「待ちなさい。まだ、勇者様の話は終わっていないわ。それに私たちは修道院の考えも尊重しています。ね、アル」


 村長の介入を予期していたフィーネは、片目を閉じて、彼にサインを送った。

 ソフィアを連想させるヒロインが伏せられていたことに、動揺を隠せなかったアルフレドは、そのウィンクを見て、一旦大きく息を吸った。


 フィーネが聞きたかったのは、恐らくこっち。

 長年の付き合いだから、アルフレドにも分かっていた。


「あぁ。あと、デスモンドについて知っている方はおられませんか?特に黒髪の理系女子について、噂程度でも構いません。何か情報を」

「勇者さまーー‼そ、それなら俺が知ってるかもしれないっす」


 民衆の奥の奥の方、配置は前側の席に座っている人間ほど高位。

 老婆は後ろの後ろだったけれど、服装から修道院関係だろうと予想が出来た。

 その更に奥、見た目は商人風の男が両手を振ってアピールをした。

 アルフレドは即座にフィーネに視線を移したが、彼女は目を剥いていた。

 そして同時に、僅かにほほ笑んだ。


「俺、知ってるかもなんです!俺、デスモンドに親戚がいて」

「ちょ、ちょっとアンタ」

「勇者様は俺達を頼ってくださってんだぞ。勇者様、噂程度しか知りませんが…」

「う、噂で構わない。是非、教えてくれ」


 これが情報収集、と勇者は歓喜する。

 同時に自身を恥じた。自分には情報収集の才能がない。

 でも、フィーネにはそれがあった。


「はい!デスモンドは人間と魔物が共存する街で…」

「な…、そんな街が…」

「そうだったのね。それで黒髪の理系女子も魔物だったり?」

「えっと…、理系女子ってのが良く分からないっすけど…街で噂だったっす」

「アンタ、勇者様にお伝えするなら、もっとしっかりなさい」

「だってよぉ」


 商人の男の隣に、彼の家族か妻かが立っていて、彼女もデスモンドに詳しい様子だった。

 とは言え、ミッドバレイの教えでは魔物は悪魔。

 だから、ソフィアの情報は隠されてしまったのだろう。


「ここからは私が。デスモンドは人間も魔物も共生する街です。その中でも異質…というか、浮いている少女がいたんです」

「異質…?浮いている?いったい、どんな子なのでしょう?」

「いつも白衣を着て、いつもお爺ちゃんと一緒に街を歩いているの」


 今度はフィーネが話を聞く。

 商人カップルの話し手が女性に変わったから、ではなくアルフレドが一歩引いたからだった。


「…ん?白衣は確かに目立つかもしれないけど、お爺ちゃんと一緒に歩くだけで異質?それだけで人間と魔物の街で浮くようには思えないわね」

「そうじゃないんです。街中で噂になってます。機械に向かってお爺ちゃんて呼びかけているんですから。家族もいないって話だし…、あんまりこんなこと言っちゃいけないんでしょうけど」


 機械という漠然とした言葉。

 でも、勇者パーティは似たようなものを所持している。

 そして、アレがデスモンドに拘っていたことも知っている。


「多分、その子ですね。名前はご存じありませんか?」

「名前…、さぁ…。あんたは聞いてない?」

「あぁ、悪ガキどもが言ってたぜ。ガキだから面白がってちょっかい出したんだろうなぁ。えっとそれが本当の名前か分かんねぇけど、ガキどもはあの変人女をキラリちゃんって呼んでたっけな」

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