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悪役転生。ハーレムものRPGに転生‼…え?俺は憎まれ役の方?ソイツ、ムービーで死ぬヤツじゃん!改訂版  作者: 乙女座の一等星
ドラゴンステーションワゴン第一章アフレルゾ大陸編

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13/201

第12話 一人反省会を開く。悲しいです。

 宿場町に着くこのタイミングで、新島礼が所有している参考文献を紐解く。

 今回はエミリ。


 エミリは赤毛のおさげ。身長148㎝の小柄な少女。年齢はアルフレドと同じ16才。彼女はドラステワゴン七人のヒロインの中で、最も大きなバストと力を持っている。

 性格は元気、単純系で一人称は「アタシ」で、男は父親しか知らないからか、非常に惚れやすい。

 実家には大きな小麦畑があり、畑仕事の手伝いで強靭な膂力を得た、と本人は語っているが、母親からの遺伝である。

 明るくて優しい彼女だが、時には違う一面を見せることも?


     ◇ 

 

 アルフレド達、勇者一行は宿場町の前に集合していた。


 宿場町には宿屋以外も店があり、ここで暮らす人たちもいる。

 塀で囲まれているだけでなく、女神メビウスを讃える像があり、その聖なる火によって魔物を遠ざけている。

 近くのモンスターのレベルを考えれば十分と言える警備体制だった。


「ここにも女神像があるのね」

「ここにもって?」

「あら、知らないの?エミリの家の南西に同じ像があるの。ね、アルフレド」

「魔物はこの女神像には近づけないらしい。詳しいことは——」


 アルフレドとフィーネがエミリに説明をしている横を、亡霊のような顔の大男が通り過ぎる。

 そして、篝火の近くで蹲った。


 はぁぁぁああああ。疲れたぁぁあああ。

 いきなりドラステ世界に飛ばされて、気付いたらレイモンドで、アルフレドとフィーネは死亡ルート行こうとして、村を追い出されて、エミリの家が襲われて、家族を救出して、森を抜けてここまで来た。ここでもう一泊して、明日にはネクタに行ける‼

 ネクタでマリアと合流するタイミングでパーティから抜ければ、俺の死亡ルートは回避できるぅぅうううううううう‼


 エミリの家で一泊したとは言え、実は殆ど寝れていない。

 今日も、あの夜がやって来ると思うと、生きた心地がしない。

 でも、明日には解放される。


「あ、あのさ……。その、さっきはありがとう……」


 だから、フィーネのか細い声など聞こえない。

 彼は瞑目し、篝火の暖かさを感じている。


「ちょっと…。聞こえてないの?…もう」


 無視をしているのではなく、目を瞑っている。

 ゲーム内転生をしたとして、何故アルフレドではないのか。

 そして、そのアルフレドはフィーネルートを選択中。


「寝てるわけ…、じゃないわよね」


 そもそも、ステータスに見えないレイモンドの能力を知った今、出来ることは自分を慰めることだけだった。


 助かったのは運が良かっただけ…。しかもレイモンドの運に助けられた。

 とはいえ、新島礼の記憶を引きずり出しての、計算された生還だ。

 だけど、実はそれもレイモンドの運だったかもしれないとか、本当にとほほだよ。

 明日だ。明日で俺はこの「悪夢」から解放されるんだ。


「はぁ…。仕方ないわね。レーイ!」

「うわっ‼」

「何?本当に寝てたの?さっきから話しかけてるんだけど」


 今度は耳元でフィーネの声。

 レイは吃驚して、両肩を跳ね上げた。


「…え。何?」

「何って、助けてくれたでしょ」


 フィーネは両眉を吊り上げて、レイは片方の眉だけを吊り上げた。

 全体的に見れば、助けたような気もする。

 でも、個人的にフィーネを助けた自覚がない。


「ん?」

「ん?じゃないわよ。…さっきはありがと」

「ふぇ?」


 レイモンドの運命がチラつく。

 フィーネルートのイベントの一つを達成したアルフレドがチラつく。

 あのムービーイベントシーンのフィーネがチラつく。


 女々しい男だからという理由だけではない。彼女と関わることが一番まずい。

 彼女とセットで例の街に行けば、間違いなくアレが起きる。


 だが、次の瞬間、右脇腹に痛みが走った。


「だぁぁぁ、そこにはぁぁあああ!俺様のぉぉぉ秘孔がぁぁぁ!あぁぁぁぁぁるぅぅぅぅぅ‼」


 前世の記憶の影響か、そこを刺激されると頭が真っ白になる。

 そこに刺さったつまようじが死因だと推測されるのだ。

 両目を見開き、前後左右、上と下までギョロギョロと睨みを利かせた。


「な…。ちょっと、大袈裟すぎ。軽く小突いただけでしょ」


 するとそこに、フィーネの顔があった。


「な…、フィーネ?俺は…」

「なんで無視するのよ。奇声も上げるし」

「無視してない。疲れたからしゃがんでただけだ。それに脇腹は俺の弱点だから…、変な声でただけだ」

「へぇ。そんな弱点を持ってたのね」

「持ってるよ、弱点の一つや二つ。そんなことより、今後のことをアルフレドと話し合うんじゃなかったのか?」

「それはするけど、その前にお礼がしたかったのよ。あんた、私を守ってくれたんでしょ?」


 フィーネはレイが矢を弾いた音に反応して、即座に振り返っていた。

 そして、直感的にその矢が自分を狙ったものだと悟った。

 一人で森に向かい、矢を弾いたってことは、助けてくれたということ。

 でも、その自覚を彼は持っていない。

 ここに来るまで、フィーネはずっと


「守ったのはアルフレドだ。確かにヒーラーを守れと言ったのは俺かもしれないけど。一度言っただけで、その後はアイツの判断だ。感謝するなら」

「はぁ?それはそれ、これはこれでしょ?さっきの矢のことよ。ゴブリンの矢。アレは私を狙った矢。それを防いでくれたでしょ?」

「え…、いや。アレは俺を狙ったものだ…」

「それはないわ。私が大きな声を出した直後だったもの」

「違う。俺の矢だ」

「はぁ?弾いてくれたでしょ。素直に受け取りなさいよ」


 不自然な会話の流れが生まれる。

 どっちを狙ったかなんて、どうでもよい。

 偶然だ、と言いながら素直に受け取れば済む話。

 でもこの辺で、だんだんレイの様子がおかしくなる。


「アレは俺のだ。俺の雄々しさを妬んだ矢だが?俺は、無意識に防いで見せたけれども?」

「そんなわけない。アンタは両腕を伸ばしてたじゃない」

「その腕を狙ったんだ」


 森の様子がおかしくて、どんなリアクションをしたか、レイ自身覚えていない。

 だけど、ここは捻くれる。

 それくらい、今のフィーネが怖い。

 彼女はレイモンドを子供のころから知っている。

 作中で過去の描写は描かれない。


「はぁ?アンタ、何が言いたいのよ」


 酩酊状態かのようなレイを、フィーネは半眼で睨みつける。

 これはフィーネファンの間ではご褒美と言われるもの。

 彼女は優秀で、幼馴染で、綺麗で、可愛くて。

 レイモンドの気持ちも分かるというもの。


 ——でも、フィーネのイベントで殺される。


 ムービーで殺されるから、戦ってどうにかなるものではない。

 強くなって避けられるものではない。

 銃で打たれても、剣で切られても死なないキャラも、ムービーシーンでは呆気なく死ぬ。

 ゲーム世界である以上、フラグが立てば同じ現象が必ず起きる。

 そして、その後。最低の男として吊るし上げられる。


「とにかく!アレで私は助かったの!あんたがどう思おうとね。だから」

「あぁ、そうだ。思い出した。フィーネ、お前……。ってなんだよ。スライム塗れじゃねぇじゃねぇか。俺はあれを堪能したかったから、急いでここまで来たってのによぉ。何なら、今からスラドンを……」


 だから、反射的に嫌われることを言う。

 慣れていない行動だけれども、そうしなければならない。

 頑張って顎をシャクレさせ、嫌われるような表情を作って見せる。

 その為に練習したのだ。


「バカ!そればっかり! 一応、感謝はしたからね。私は借りを作っておきたくなかっただけよ」


 そして、フィーネは深ーい溜め息を吐きながら、宿の中に消えた。

 その間もその前も、レイの背中は冷や汗でびっしょりと濡れていた。


「フィーネの気持ちも理解してやれ」、「レイ君、流石にあれはちょっと」とアルフレドとエミリに言われても、身動き一つ取れなかった。


 ムービーは先に作られたものだから、その内容が変わることはない。

 マルチシナリオのゲームなら在り得るが、ドラステは違う。

 次の街で別れることが、彼にとっての身の安全の確保である。

 そして何より、そのイベントで何が起きるかを彼らに話すわけにはいかない。


 だから全員が宿に消えた後、彼は吐き捨てるように言った。


「そんなこと、分かってるよ…」


     ◇


 宿はまさにファンタジーという作りをしていた。

 一階が飲み屋及び食事処があり、二階部分が宿泊施設になっている。

 大部屋の方が安上がりだが、ここも期間限定仲間の前で、レイモンドらしく金持ちアピールをした。

 そして、全員分の個室代をレイが支払った。


 これまたゲームあるあるで、財務大臣は主人公だから、戦いで手に入るお金はアルフレドの懐に入っている。

 顰めっ面の店主が座るカウンターに、シャツに縫い付けられた貴金属と宝石を、一つずつ置いて、交渉をした。


 エミリの家で一泊して良かった。エミリの家が大きくて良かった。

 スタト村は裕福には見えなかった。

 レイモンドが親からありったけを吸い取っていたのだろう。

 だから本当は、村に帰すべき。でも、嫌ったまま捨てて欲しいから、今回は返さない。


「無事にパーティを抜けたら、こっそり返してもいいけど」


 そして、荷物とも呼べない荷物を部屋に置いて、一階の食堂へ向かう。

 一階には明日で仲間ではなくなる顔見知りが座っていた。

 一つのテーブルを囲んでいるのが見える。


「外が気持ち良さそうだなぁぁぁぁあああ」


 だが、レイはそこに向かわず外に出てテラス席移動。

 しかも一番遠い席に一人で座った。


「俺は街に行くのが目的だから、俺抜きで編成を含めて話し合っておいた方が良い。マリアは——」


 と、アルフレドには言ってあるから、不自然ではない。

 そして近くに誰もいないのを確認して、彼は神妙な面持ちになった。


「昨日と今日で起きた、奇妙な現象を考えよう。スタト村の住民十数名とエミリの両親が生き残った。それも奇妙だが、彼らには悪いが関係ない。進行上、アルフレドもエミリもあそこに戻らない。いや、エミリは終わった後に戻るっけ。でも、ゲーム中は戻らないし、やっぱり関係ないな」


 初めてのゲーム内転生だから、細かく知る必要がある。

 明日終わるとしても、アルフレドが世界に平和を齎すまでは油断ならない。

 だから、確かめるようにここまでを振り返る。


「俺にとって重要なこと、そして奇妙だったことは、エミリの出会いイベントがカットされたことだ。断定することは危険だけど、チュートリアルを早く終わらせ過ぎたからだろう。エミリは一人で逃げてくる予定だったけど、まだ両親が襲われていた段階だった。時間が関係するのはスタト村の最初にも言えることだ。ゲーム進行上問題は起きていない。だけど、俺にとって大事なのはムービーシーンはカットされ得ること」


 敢えて声を出しているので、何度か周りを確認する。

 だったら、声に出さなければよい。

 それでも声に出しているのは、ストレス発散の為、自分を慰める為、言い聞かせる為だ。


「俺の死にイベはカットできる。エミリは坂道下にワープしなかった。遠くからの瞬間移動はない。で、森の話も重要だ。ゲームと同様に、見えないエリア枠が存在している」


 二日間だけでも、見えてくる。

 その為の実験ばかりやっていたから分かってくる。


「ふぅぅ…」


 と一息ついて、両手の拳を握った。

 勝ち確定BGMも聞こえてきそうだ。


「いける。あの場に、あの時に、俺がいなければ助かる。デスモンドの街。アルフレド達が辿り着いた時に、俺がその街に居なければ、レイモンドの死にイベントは発生しない‼」


 ゲーム世界だから当然と言われるかもしれないけど、現実世界でもあり、首を傾げる部分もあるから、そして何より自分の命がかかわっているんだから、確信が持てるまで探るべきだ。


「後は、綺麗さっぱり捨ててくれたらいい」


 そして、この行為の臆病さにも気付いている。

 人付き合いが苦手なのは、人に嫌われたくないからだ。

 だから、嫌われムーブは相当のストレスだった。

 自分から振りたくない。相手に振って欲しい。


「分かってる。俺の心が弱いからだ」


 もう一つ、自分でも分かっていること。

 もしかしたら、これが一番強い気持ち。


 ——仲間(・・)に情を抱きそうで、怖い。


「普通に接すれるなんて、無理なんだ。俺は不器用なんだ。それに…、あと少しなんだ。ネクタに辿り着ければ…」


 ネクタでの出会い。それは新たな出会いであり始まり。

 ドラステがドラステワゴンとして蘇ったキッカケがある。

 だから、何も問題ない。


「そもそも、パーティはレイモンドを合わせて五人になる。でも、パーティ編成は四人までだ」


 旧作では、そこで一人と別れなければならなかった。

 その設定が少しでも残っていれば、すんなりと別れられる。


「ま…。リメイク前もレイモンドとは別れられないって、嫌がらせ仕様だったけど」


 旧作のゲーム名は「ドラゴンステーションー光の勇者と五人の花嫁ー」だった。

 そしてリメイク版は「ドラゴンステーションワゴンー光の勇者と七人の花嫁ー」だ。

 二人のヒロインが追加されているのだ。

 なんかうまいこと、出来るかもしれない。

 だって、滅茶苦茶な設定がここでぶち込まれるのだ」


「マリアの登場ムービーシーンの二つ目、数歩歩いたところで次のムービーが始まる。そこでマリアは、パパがステーションワゴンを買ってくれるって!と言う。そのイベントが始まる前に、俺は…」


 その「パパが買ってくれる」イベントで、レイモンドは車の免許を自慢げに披露する。

 世界観は何処に行った?とツッコまれるバカ設定だ。

 そしてその後、レイモンドはステーションワゴンを運転するのだが、勇者とヒロインたちのトークが、そんな車内で行われる。

 旧作で嫌われに嫌われたレイモンドに対するイジメとしか思えない展開が、ネクタ以降で待っている。


 さて、これで仲間に残りたいと思いますか、という話なのだ。


「それは流石につれぇわ!」

「何がそんなに辛いのよ」


 その時、凛とした彼女の声がして、レイは椅子から転げ落ちた。

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