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第53話 帰還

 それから一カ月と少しの長旅を経て、白琳たちは無事祖国に帰還した。

 禁門前では留守を任せておいた九卿たちや一部の官吏たちが出迎えてくれ、一斉に拝礼する。


「陛下、それから皆様。お帰りなさいませ。無事お戻りになられたこと心よりお喜び申し上げます」


 九卿の一人が代表して口上を述べ、白琳は「ありがとう」と微笑む。


「ご帰還早々申し訳ございませんが、一つお伺いしてもよろしいでしょうか」

「何かしら」

「その、和平交渉の結果をお聞きしたく……」


 おずおずと問うた初老の宗正そうせい(王族関係の事務を司る)に対し、白琳は口角をあげて答える。


「交渉は成立したわ。これで中央荒原での戦は無くなった」

「なんと……!」


 金桂との国交や桂華再興については保留事項になっているうえに、会談において箝口令かんこうれいが敷かれたので、白琳の口から報告されることは無かった。

 宮廷会議の際、最初から和平に賛同していた彼は驚きつつも安堵の息をつく。


「それは良うございました」


 彼が喜びを噛み締めると共に、同じく和平賛成派の官吏たちも顔を明るくさせたり、拳を握ったりしていた。その一方で、反対派だった大多数の官吏たちは予想だにしなかった首尾に動揺していた。なかには交渉成立を快く思わず、歯噛みしている者もいる。

 白琳はそんな彼らの様子を垣間見つつも、宗正に問いかけた。


「留守中、何か変わったことは無かったかしら」

「あ、それが……」


 眉を曇らせて言い淀んだ宗正に、白琳はその顔から笑みを消す。


「何かあったの?」

「はい。実は、陛下が銀桂をお発ちになられてから和平に反対する民たちの門前抗議が毎日のようにありまして……。それだけでなく、一部の太守からも和平反対の意を示した書簡が届いているのです」


 和平交渉が正式に決議された後、白琳は国内に向けてその旨を告示した。恐らく、その告示を知った民や地方官吏たちがその交渉に納得できず、批判の声をあげ続けているのだろう。勿論、和平に承諾してくれている民も多くいるが、実際は反対派の方が賛成派を上回っているはずだ。


「そう。告示を出した時から大方予想はしていたけれど……」

「今のところ、六将軍や警備兵が目を光らせていたこともあって、大惨事には至っておりません。ですが、交渉が成立したという事実を知れば、反対派の民や地方官吏たちが黙っていないでしょう。益々抗議が過激化するやもしれません」

「そうね。警備兵や六将軍に更なる警備強化をお願いしておきます。あなたたちには沢山迷惑をかけてしまったわね。ごめんなさい」

「とんでもございません。民の声を聞き、その上で適切に処置するのも国吏である我々の務めでございますから」


 新米女王に対する疑心や懸念、そして今回のような抗議への対処。色々と不平不満はあるだろうに、宗正を始めとした九卿や官吏たちは嫌な顔一つせず恭しく拝礼した。


「……陛下に媚びを売りやがって」


 と同時に、ぼそりと謗言ぼうげんを吐く者もいた。

 小さく抑えられた悪態には気づくよしもなく、白琳は改めて謝意を述べて、彼らと共に禁門をくぐった。


 その後、銀漢宮の執務室でしばらく身を休め、白琳はすぐに宮廷内の人間を召集し、会談の首尾を報告した。

 禁門前で出迎えてくれた九卿たち同様、和平が無事結ばれたことに安堵する者やそれに驚いた者、長きにわたる戦乱の終結に喜ぶ者など、反応は様々だった。そしてやはり、金桂に対する偏見や差別の念が強いあまり得心していない官吏も一定数おり、解散後不平を並べながら会議の間を後にする姿が散見された。


 しかし、和平は既に決定事項であり、誰にも覆すことは出来ない。

 そのことを彼らも分かっているからこそ、反対派の官吏たちは白琳に異議を申し立てずに己の考えこそが正しいのだと、自己肯定するほか無かった。

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