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第39話 出自

 白琳は己の瞳よりも明るい群青の晴空を見上げながら語り始める。


「兄――第一王子であった白璙お兄様は、血族のなかで唯一わたしに手を差し伸べてくれた人でした」

「血族のなかで唯一?」

「はい。何せわたしの体には半分妓女の血が流れていますから」


 衝撃の事実に理玄は息を呑んだ。

 予想通りの反応だと言わんばかりに、白琳は理玄の驚愕を見ても表情を変えずに続ける。


「母――瑠婉は〈傾国〉の異名を持つほどの絶世の美しさを誇り、その評判は国中に広がっていたと言われています。やがて母の噂を聞きつけた好色家の父は当時母がいた妓楼を人知れず訪れ、母を後宮へと召し上げました」


 そして、わたしが生まれました。


 淡々と己が出自を打ち明ける白琳はこれ以上になく冷静で。まるで、他者の誕生譚を物語っているかのようだった。

 これほど淡然とした彼女を見るのは初めてだと思いつつ、理玄は静聴する。


「わたしが生まれる前から母は後宮内で陰湿ないじめに遭っていたそうです。王である父の寵愛を独占したうえに、富裕層の出が多い他の妃たちにとっては下賤でしかない妓女の過去を持っていたので……。特に、わたしが生まれてからはその虐めは益々苛烈になり、わたし自身も虐めの対象になってしまいました」


 遂には第二王子の玿銀お兄様やその母君――当時の正妃様からも罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせられるようになってしまって……。


 ――反吐が出る話だ。


 思わず理玄は渋面を作る。

 金桂には元々後宮という概念が無い。銀桂と違って女王の前例がいくつもあるというのもそうだが、初代金桂君が妃となったたった一人の女性を生涯愛したという逸話の存在が大きい。それゆえ、歴代の金桂君は皆妃を一人だけめとってきた。女君の場合も同様だ。


 伝聞していた内容よりも遥かに複雑な内部事情が窺い知れ、理玄は眼前の少女に対し憐憫の情を抱かざるを得なかった。


「父は数年も経てば母に対する執心も消えていて、わたしたちを庇いもしませんでした。何の後ろ盾も無い四面楚歌の状態のなかで、白璙お兄様だけがわたしと母を擁護してくださったんです」




『これからは僕が瑠婉さんと白琳を守っていきます。だから安心してください』

『あの、どうして私たちを庇ってくださるのですか……? それに、私たちにお味方すれば白璙様のお立場が……』

『大丈夫です。僕はこれでも第一王子。父上の次に権威があり、それは正妃である母上ですら及びません。それに――』




 血の繋がった妹とその母君を庇わない理由など、どこにありましょう。



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