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第11話 勤勉が過ぎる

 束の間の休息後、白琳が翡翠と共に執務室に戻ると美曜と掩玉が温かく迎え入れてくれた。


「陛下、翡翠様。お帰りなさいませ」

「ただいま。美曜、掩玉」


 翡翠も目礼して、美曜の言葉に応える。

 以前より晴れ晴れとした面持ちになった白琳を見て、掩玉は朗笑した。


「さっきより顔色が良くなられましたね。いい気分転換になったようで何よりです」

「そう? 確かに、今は随分と清々しく感じるわ」


 翡翠のおかげね。


 白琳は翡翠を一瞥し、「ありがとう」と改めて謝意を述べた。


「いえ、私は何も……」


 懸想する少女の清麗な微笑も相まって、翡翠は面映おもはゆくなりしどろもどろに答えた。その様子に女性陣は笑みを深める。

 こちらの本心に全く気付く様子の無い幼馴染に、それはそれで少し複雑だと翡翠は秘かに口の端を下げてへの字にした。


「そういえば、昼餉がまだでしたね」


 すぐにご用意いたします、と美曜は白琳に一揖してから背を向ける。

 掩玉も美曜の後を追って退室したので、白琳たちは先に私室に戻っておくことにした。


 それから彩り豊かな五味倶全(ごみぐぜん)の料理が白琳の前に並び、胃袋が瞬く間に満たされた。

 元々小食だったのだが、白璙の逝去によって以前までは更に食欲が無くなってしまっていた。しかし、今では自然と箸が進み、食の旨味を感じることができる。

 白琳はそれが何よりも嬉しかった。


 食事を済ませ、掩玉が淹れてくれた食後茶を啜っていると、突如扉が叩かれた。


「どうぞ」


 白琳が許可を出すと、入室したのは梟俊だった。


「御休息の最中、失礼致します。陛下、晡時ほじの初刻(十五時)になりましたら会議を行いますので、ご臨席いただきますようお願い申し上げます」

「分かったわ」

「それでは、また後程」


 主君の休息を邪魔してはいけないという配慮からなのか、あるいは無駄を嫌う淡白な性分からなのか、いずれにせよ梟俊は事務連絡を済ませるや否や白琳たちの元から颯爽と立ち去って行った。


 会議が始まるまでまだ少し時間がある。その間、白琳は早速先ほど受けた講義の復習でもしようかと思い立ったのだが――


「また根を詰めて体調を崩されるおつもりですか! 今日くらいは――いえ、数日の間はしっかりとお休みになってください」

「翡翠様の仰るとおりです。御言葉ですが陛下。もっと御自分のことを大切になさった方がよろしいかと」

「そうですよ陛下!」


と、翡翠たちから呆れ顔で諌止かんしされてしまった。


 ――何も、また無理をしようとするわけではないのだけれど……。


 だが、いくら弁明したところで彼らは聞き入れてくれないだろう。


「……はい」


 ここは大人しく従っておこうと、白琳は残りの時間を彼らとの歓談に費やすことにした。

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