第76話【魔族進攻を止めた英雄】
ロートンは若い頃はイケイケでヤンチャしていたらしく、一人でタウキングに挑んだ事もあるといっていた。そして、本城や高城に戦い方を教えてくれた。今もヴァルカンの街の孤児院の子ども達に実戦を想定した指導をお願いしている。ダグラスが知っているのは、ロートンさんは元々は大国・ガラハット王国のA級冒険者で国境を越えてきた魔族らの侵攻を食い止めた英雄の一人であり、ガラハット王国で多くの若い冒険者や騎士団育成に努めてきたというのだ。
ただ、当時のガラハット王国の国王は糞で、ロートンさんの教え子達を領土拡大の為に魔王領土に送り込み無駄死をさせ、それに激怒したロートンさんが国王を斬首したというのだ。ロートンさんは国王を殺した罪で死刑になる筈だったが、国王が多くの騎士や若い冒険者を見殺しにしたことに民達も激怒しておりロートンさんの死刑に反対する者が多かった。
それを聞き付けたモーグルがガラハット王国の重鎮達にロートンさんの買い取りを提案し、もし似たような事をすればガラハット王国にいる従業員らを他国に移してガラハット王国との取り引きを全て取り止めにするといったらしい。
モーグルは各国の資金を潤す大商人であり、その気になればその国の商売を取り止めて資金難にするのは難しくないというのだ。実際に各国の貴族や国王もモーグル商会を本気で怒らせないようにしているというのだ。
「噂じゃモーグルの大旦那は各国の騎士団より強ぇ連中を何人も抱えてるらしい。その気になれば国の乗っ取りなんてやればできる人なんだよ。あの人はよ」
「その一人がロートンさんなんだ。魔族侵攻の際にタウキングの他に単独で 上級悪魔を3体も倒しているからな…」
「モーグルのおっちゃんってスゲェ商人ってだけじゃなかったんだな…」
「ロートンさんも凄い冒険者だったんだね。あれ?けど、前にステータス見せて貰った時レベル45だったよね?」
ダグラスはそれは衰えのせいだというのだ。レベルアップしても年齢による衰えによってレベルが下がるのは人間も獣人も同様に起こるというのだ。実際に8年前はロックス団長もレベル52だったが今ではレベル45まで下がってしまっているというのだ。
それを防げる手段が 転生であるが、そもそも転生自体が稀で原理がわかっておらず、異世界の特権という考えを持つ学者や神から天命だという意見など様々な憶測が飛び交っている為、一般人には余り伝わってないもの要因の1つだろう。
実際に魔族侵攻の際に参加した冒険者や騎士団の殆どは上級悪魔やタウキング、ウガールによって戦死してしまっており、当時を知っている人間は極わずかしか居らず、ダグラスとヘレナもロックス団長から当時のことを聞いて知り、そこで活躍した英雄の1人がロートンさんであったと聞いていたからだ。
ヴァルカンの街で冒険者ギルドで指導官をお願いした時、騎士団の若手もお願いしてきたのはそういった背景があったからかと納得できた。
今のエルドラのある場所で魔族侵攻があったのは30年前で、当時を知っている者が少ないのは、その現場で生き残った者がそれだけ少なかったという事だろう。
実際に魔族侵攻については、魔族が城壁を破壊して攻め込んで来たが、多大な犠牲を出しながらも人類は勝利したとしか記載されてなかった。
昼食を終えるとそれぞれが身体を動かし初めて上級悪魔との戦いに備える。すると、本城と高城が声をかけてきた。
「つーか、来る前にロートンさんも上級悪魔の事教えてくれたら良かったんじゃねぇねぇか?」
「所がそういう訳にもいかねぇんだよ。上級悪魔は他の魔物と違って戦闘スタイルが個体によって違うらしい。近接型だったり遠距離魔法型だったり眷属召喚型だったりタイプがバラバラなんだ」
「そうなんだ。じゃあ、いつも通り臨機応変に丈くんと梨沙ちゃんから指示出して貰って戦った方が勝算があるってこと?」
「それもあるけどな?実際レベル40の人らが10人以上集まる事は少ないらしいからな。ぶっちゃけ過剰戦力気味やけどな…」
確かに上級悪魔を買い被っているといわれればそうかもしれない。だが、1度侵攻して敗北したにも関わらず、魔族が何の考えもなく事を起こすとは考えにくい。この30年は魔族とのいざこざは国境付近のガラハット王国、エルドラ、エルドル王国しかない上に大規模の侵略活動は記載がなかったからだ。
ただ少なくともロートンさんは何の心配もする様子もなくいつも通りに接してくれていた事から、俺らなら上級悪魔を倒せると信じてくれているような気がすると伝えると、3人はそうかもなと笑みを見せた。全員に覚悟ができたか訪ねると力強く頷き洞穴へ入っていった。
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