閑話【崩れ掛ける関係】
明けましておめでとうございます。ストックが少し3話分は完成しました。閑話になりますが新年最初の投稿です。今年もよろしくお願いします。
ごく普通の何処にでもいる平凡な女子高生であった秋野楓は、卒業間近に癖の強いクラスメイト達とともに異世界召喚された1人でありクラス委員長であった。
何かと張り合う東条さんと西城さんの仲裁は当たり前であったが、クラスでも発言力と存在感があった本城さんや高城さん。
そして、学年でも常に成績がトップに近かった九条さん達三姫と呼ばれる学校のマドンナ達に支えられてきたが、その3人はクラスでも訳ありの草加丈という男とともに異世界を冒険することを決め、私の元から去っていてしまった。
異世界に来ても東条さんと西城さんは派閥を作って何かと張り合っている状態だ。
それに付き合ってられないと判断した東条さんのパーティーメンバーであった佐々木くんと吉屋くんは東条さんから離れて冒険者として活動し、新らしいパーティーメンバーとともに異世界を冒険すると言われてしまった。2人は東条さんの元に戻るつもりはないと強く否定する。
おそらく騎士団員になると西城さんに伝えて去って行った守谷くん、藤原くん、横谷くんも騎士団で仲間を見つけて戻ってこないような気がしていた。はぁっとため息を吐くとパーティーメンバーであり同じく学級委員長だった大城くんが大丈夫かと声をかけてきた。
「私は大丈夫なんだけどね。結局クラスはバラバラになっちゃったからね…」
「気持ちはわかるよ。結局卒業間近でもクラス内の溝は深まるばかりだったし…」
大城くんは私と同じく勇者適正が高く頼りになる存在である。私のパーティーは草加くんらの指導後に佐藤 悠人くんによって様々な憶測で考えて試してマリアス様の迷宮のボスモンスターであるストーンゴーレムを倒して冒険する事に慣れるためにベルウェインの港街の復興支援を手伝いつつ、辺りの魔物討伐などをこなしていた。
時々、冒険者ギルドで佐々木くんと吉屋くんを見かけるが新しく仲間になった女獣人の子らとパーティーしての動き方や反省点や改善点などを話し合って楽しそうに笑っている。東条さんのパーティーにいた頃は2人ともため息ばかりでつまらなさそうにしていた印象だった。だが、今の2人は生き生きとしている。多分、私が説得しても無意味だと悟ってしまった。
◇◆◇
ベルウェインの港街が安定し始めたので1度レイドリス城に戻ることを佐々木くんに伝えると、暫くはベルウェインの港街を拠点に見つけたダンジョン攻略をしてレベルアップを図ると教えてくれた。
すると、吉屋くんは出来れば東条さんには黙っていて欲しいとお願いされた。
「秋野さんには悪いけどね。俺らは勇者じゃないからこのまま冒険者続けたい。それに東条さんと西城さんのいざこざに巻き込まれずに済むし…」
「そ、そう…。けど、良いの?元の世界に戻れないんだよ?」
「…いや、現実的に無理な話でしょ?北の魔王領土を探索するだけでも10年は掛かるっていわれてるし、勇者のつるぎ抜けても勇者の試練のダンジョンを攻略しないと力貰えないなら帰れないって言ってるのと変わらないじゃない」
「それに俺達メノウさん達によくして貰ってるし、こっちの世界で生きる方向で頑張ってみるよ」
吉屋くんも佐々木くんも元の世界に戻れる可能性が低いと訊いた辺りから東条さんとの折り合いが悪くなっていたのは確かだ。
実際に帰れる確証もないのに東条さんの我が儘に付き合うほど2人はお人好しではない。ちゃんとこの世界で生きる術を身につける為に冒険者になり新しい仲間と楽しくやっている。わかったと伝えると佐々木くん達は砂浜の魔物討伐へと行ってしまい、そこで別れた。
もしも、次に会うとしたらエルドラだと佐々木くんはいう。最終的にはエルドラの高難易度ダンジョンの攻略にこのパーティーで挑戦するのが目的であるといっていたからだ。
私達もレイドリス城に戻るために帰路に着くと同じパーティーで仲の良い魔法使いの中村愛美が心配して声を掛けてきてくれた。
すると、斥候で陸上部出身の足達良司があれは仕方ないと頷くとバスケ部だった高橋 優斗と山田 直人が同意して頷く。
「確かにあのレベルの美女・美少女の女獣人がパーティーメンバーだとな。東条さんの性格考えるとあっちになるよなぁ…」
「付与魔法について話聞いたけど、めちゃくちゃ丁寧で優しかったし、東条さんとは真逆だもんなぁ…」
「確かにあれなら元の世界に戻れなくてもいいかなぁって思うよなぁ~」
「ちょ、ちょっと!足達くん!高橋くん!山田くん!」
3人を咎めたが、実際問題まだ勇者のつるぎを抜けてない上に勇者の試練のダンジョンの場所もわからない。更には魔王領土攻略に実際何年掛かるか分からない。
そして、残された猶予期間は後2年半ちょっとしかない。現実的に考えるとこっちの世界での生き方をちゃんと探した方が正しいのではないかと口に出した。
3人とも勇者適正はBランクとCランクであるが、職業的に勇者ではなく、その仲間であることを自覚しているからだろう。だが、肝心の勇者が何時までたっても現れないのであれば、元の世界に戻れる可能性などないに等しい。
それなのに勇者に選ばれるまで東条さんや西城さんの我が儘に付き合って得があるのか訊ねられた。当然答えられる筈がない。3人のいう通り、付き合う道理や一緒にいるメリットが少ない。
すると、大城くんが足達くん達を宥めていると佐藤くんは何か考えているように見えてどうしたのか訊ねる。
「あ、ゴメンね?ちょっと勇者について考えてたんだけどさ。もしかして 転生と関係あるんじゃないかって…」
「んなもん、どうでも良いよ、俺は。前の世界でも選ばれた勝ち組なんて決まったろ?けど、こっちの世界は実力さえあれば、冒険者か騎士団で食ってけるだろう?それに治癒術師の佐藤はそのまま、マルシェ女王の回復役として務められるじゃねぇかよ?」
「た、確かにそうかも知れないけどさ?3人とも他のパーティーでやってける自信があるの?もしかしたら、東条さんや西城さんのパーティーみたいになるかもしれないよ?」
確かに佐々木くんや草加くんは周りに恵まれているが、冒険者は基本的に荒くれ者が多く騎士団は規律が多い。3人の性格を考えるとかなり厳しいのではないかと思っている。
3人は怒るタイプではなくわりとちゃんと話を聞いてから判断するタイプなので結構悩んでいた。すると、今まで黙っていた久保田大樹が口を開いた。
「まぁ、異世界来て、女獣人やハーフエルフの美女や美少女がいる世界なのにいつまでもヤれねぇクラスメイトとパーティー組んでも面白みねぇもんな…」
「ちょ、久保田くん!?それはいくらなんでも酷すぎるでしょ!?」
「…けど、東条さんや西城さんとパーティー組めて自慢してた連中は皆パーティーから離れてるじゃねぇかよ?アイツらより良い女が他にいるならそっちに行くのが男の性だろう?」
「そりゃわかるわ。勝手に召喚されて帰れませ~ん。 肝心の勇者はおりませ~ん。勇者候補は自力で勇者のつるぎを持ち帰れない実力です。元の世界に戻るの諦めてこっちで楽しみながらヤれる方向性に変えた方が良いかもな~」
そう言うと4人とも笑い始めた。確かに呼び出されたのは魔王を倒すためだ。
そして、その魔王を倒せるのが勇者であり私達にはその適正がある筈だ。
それなのに、未だに勇者は現れない。草加くん達が持ち帰ってきてくれた勇者のつるぎを抜くことすらできていない状態だ。
元の世界に帰れる希望などない。4人とも言っていることは何も間違ってはない。
早めに諦めて、こちらの世界に順応して異世界ライフを満喫できれば、それで充分だという考えになってきてしまったのだろう。大城くんが軽く咎めると、4人とも悪びれる気もなく、先頭を歩いて今後どうするか話し始めている。
ああ、私のパーティーもダメだったんだと拳をギュッと握り締めた。
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