第72話【お泊り会】
ある程度の方針が固まり、ドラゴン退治の疲れもあるだろうという事で作戦の結構は2日後に決まった。その間、イザベル、バレッタ、フィーナ、リリアンは俺達の屋敷で泊まることになった。
まぁ、本城も高城が仲良くなったからお泊まり会をやりたいと騒ぐので許したが、全て片付いたらヘレナ達もと思っているが、そこまで屋敷に泊まる場所がない。
ヘレナは全てが片付いて落ち着いたら城に遊びにきてくれと言ってくれた。王城に泊まったことはないので本城と高城は大喜びしていたが、王族や貴族連中に顔を覚えられるのは面倒だと思っているが、いつかは顔を見せに行かなければなからないと思っているのでいい機会になるだろう。
ヘレナ達と別れ、屋敷へたどり着くとエレノアとエレンダが出迎えてくれた。冒険者ギルドで食事を済ませて来たことを伝えると、既に風呂の準備と部屋の準備を済ませていると礼儀正しくスカートの裾を上げて頭を下げた。
普段冒険者ギルドが提供している宿屋を利用している為、住んでいる屋敷を見てバレッタ達は驚いていたが、イザベルは平然としていた。
すると、エレンダが申し訳なさそうに部屋のベット数が足りないと言ってきたが、俺らの部屋に泊まってもらって俺が適当な場所で寝るから大丈夫だと伝えると、九条が不服そうな雰囲気を出してくる。
「えっと、それはお止めになった方が。九条様に怒られますよ?」
「ちょっと調べたい事があるから、先に女子達は風呂へ行ってくれ」
そう言い残してそそくさと書斎室に入っていくと、九条が悪い笑みを浮かべた。俺の後を着いてこようとしたグランド・ウイング・フィリーも一緒にいれてくれるというのでお願いした。女性陣が風呂に行っている間に上級悪魔の情報を再確認しておく必要がある。少なくとも、今まで戦ってきた中でタウキング・巨岩竜クラスが相手だ。
少なくとも今の冒険者メンバーだけでも勝てる可能性はあるが、騎士団の面子もあるし、ヘレナはこの国の第2王女で、ここで大きな功績をあげておけば色々と力にはなってくれるだろう。問題なのはその後だ。
仮に上級悪魔を討伐すれば、1度はダイアラック王国の国王に顔合わせしなければならない。そして、俺にはモーグルという大商人と仲が良い事がこの国の貴族連中にバレている。
そうなってくると、自分の娘を嫁にとすり寄ってくる連中もいるだろうが、ハッキリいってしまえば面倒くさい。少なくとも、本業は冒険者だ。貴族のいざこざに巻き込まれるのは面倒以外の言葉が出てこない。
「上級悪魔は近接型より闇魔法を得意として戦う魔法型のが多い。俺と本城が隙を作ってイザベルに攻撃を仕掛けてもらってから九条とリリアンの魔法攻撃で…」
対・上級悪魔戦に向けて対策を立てていると頬をつねられた。横を振り向くと九条の姿があった。既に女性陣は風呂から上がっているというのだ。普段、長風呂をする3人に加えてイザベル達がいたのに早いなと訊ねると、既に1時間は経っているといわれてしまい、風呂に入って明日の方針を伝えるようにといわれてしまった。
「あ、取りあえず4人ともウチらの部屋におるからな?お喋りしとるから風呂から上がったら部屋に来てな?」
「わかった。それならあの部屋のが色々と都合がいいからな。風呂から上がったら方針伝えて就寝でいいか?」
そう訊ねると、九条は了承して部屋に戻っているといい残して行ってしまった。いつもの九条ならここで1人で上級悪魔の対策を立てていたことに怒る筈なのに、頬をつねるだけなのは珍しい。
だが、こちらの世界に来て始めての同姓の友人ができてお泊り会のような感じで九条も浮かれているのだろうと、深くは考えずに風呂場に向かった。
この屋敷に来て1人で入るのは始めてであるが、やはり広い。個人的には足が伸ばせれば良いのだが、3人の事を考えるとこれくらいで十分だろうか。それに、まだ大金が懐にあり、これからまた入ってくる目安もあるため、収入源には問題はない。
風呂から上がり、体を拭いて服を来て廊下を歩いていると、エレノアがお盆の上に水を一杯コップにいれて用意してくれており、ありがたく頂いた。
「ただの水だよな? 何か甘い味がするような…?」
「水質を良くするためにウルル草を加えてますのでその味です。ご主人様が中々お帰りならないので気付いていないのでは?」
確かに、ここ最近まともに屋敷に帰ってきていないため、水も酒場や補給品から分けて貰った物を飲んでいたため気付かなかった。水質を良くするためにウルル草を使うようにいったのは俺だ。エレノアに謝罪すると忙しい上にそこまで気を使っていただくのは申し訳ないとそのまま引き下がった。
若干の違和感を感じたが、エレンダの尻を撫でて台所に戻っていく所を見ると、ただ単に欲求不満で今日はその日なのだろうと変に納得できた。自室であるが現在は女子会に使われているため、ノックをすると本城が扉を開けて腕を掴んで強引に中に引き込まれてしまった。
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