第69話【高額な為…】
ホノルの街に着くと既にイザベルがある程度報告を済ませてくれており、スムーズに事が進んでいった。
港の街・ヘイヴンの訓練所に倒した飛竜15匹。地竜8匹。岩竜3匹。そして巨岩竜をトレジャーボックスから取り出すと、ガララス達ギルドマスター陣が頭を抱えていた。
どうやら竜種の価値は高いらしく、今のダイアラック王国の情勢では到底払いきれる物ではないらしいのだ。
実際、中央都市【エルドラ】を含む8ヶ国の中でも領土も狭く、人も物資も不足している。レイドリス王国が勇者召喚を行ったのは、友好国であるエルドル王国とソドリア王国からの指示もあったからだろう。
隣国のレスリア王国とエリシリア王国は渓谷や岩壁に阻まれて陸路からの貿易は難しく、かといって造船技術に優れている訳でもない為、ダイアラック王国中から資金を集めたとしても、それに見合う金額が集まらないという問題があるからだという。
ダイアラック王国で、モーグルの弟子でもあるヴィクターも流石にお手上げといった状態であった。
ギルドマスター陣とヴィクターが悩んでいるのを見ていると肩を掴まれた。振り替えると見覚えるのある顔があった。俺達に良くしてくれているイケオジ商人のモーグルである。後ろにはアエリアとシャーリーの姿もあり、本城と高城が抱き着いていた。
モーグルはヴィクターに内緒で勝手にダイアラック王国に来たらしく、この騒ぎを聞き付けて直ぐに来たらしい。
モーグルはヴィクターの対応が商人としての嗅覚が甘いと指摘する。
「す、すみません。け、けど、流石にこの量を買い取るのは…」
「馬鹿野郎。そのまま買い取っても金がネェなら、分割払いの契約して商品として違う場所に売りに出すんだ」
モーグルはダイアラック王国の武具類はエルドラでも人気であり、竜種の骨や牙を利用して作った剣や槍。硬い鱗で造られた盾や鎧等は多少高くても買い取って貰えるという。
飛竜の皮もマントや皮鎧として人気がある為、この量を作って貰える職人と相談する必要がある。
だが、ダイアラック王国は船でしか輸出が難しいとガララスが伝えるが、モーグルは考えなしの人ではない。
「何の為に俺が来たと思ってるんだ?帆船2隻と荷馬車、それを引くライノサウルス2匹と従業員を連れてきてる」
モーグルはダイヤロードに帆船を泊めてあり、既に色々と準備を整えてくれていた。そしてヴィクターに「お前は東の道を通れるように土魔法の使い手を雇って上手くやってみろ。商人の腕の見せ所だぞ?」と言って肩を叩いた。
ヴィクターはモーグルに期待されているのが分かり、緊張しながらも返事をして直ぐに行動に移した。
モーグルはヴィクターの背中を見て腕組みをすると、俺の方を見てきた。
「これでダイヤラック王国の方は何とかなる。ただ、ドラゴンキラーの称号を手に入れたとなると、国からエルドラに向かわさせられる可能性があるぞ?」
モーグルの話を聞いた本城と高城は、このダイヤラック王国を気に入っている為、それは嫌だというと、モーグルはそこで提案として巨岩竜の魔石と地竜の牙等を献上し、それを何とかしないように交渉してくれるというのだ。
モーグルは商人として各国の王達と顔馴染みである為、話も通しやすいというのだ。
「それにジョウ達のツレなら俺がいくらでも支援してやるぞ?ポーションや避妊ジェルの流通網が増えればお前らの収入源にもなるだろ?」
「そりゃ助かります。最近はニコラスとセリスの面倒を薬師のグレイスという人に任せていて…」
「そうか。まぁ、仕事を任せるに当たって従業員の増加はお前の判断に任せるぞ?それにお前の事だ。このダイヤラックで見つけた儲け話を紹介してくれるんだろ?」
モーグルは豪快に笑ったが、ダイヤラック王国では主に九条ら三人がアイディアを出し、それを形にしていってくれた。その事を伝えるとモーグルは3人を見た。
共有型の巨大な入浴場。俺らの世界でいえば『銭湯』だが、この世界の風呂は上流階層の人間しか入ることが出来ない。個人で風呂を持っているのも、モーグルやヴィクターのような商人やガララス達冒険者ギルドのギルドマスタークラスのみだ。
そこで3人が考えたのは、混浴にする事であるが、やはり異性に裸を見られるのを恥ずかしがる人もいるだろうと水着を提案した。西の街・ヴォルカンは農民が多い為水着を着用しての入浴で、脱衣所は男女別になっている。
ただ、娼婦を兼用している南の街・ヘイヴンは水着は本人らの自由で指名料金もそこに加わる為に結構賑わっている状況だ。アメリアも売上額が上がった上にゆっくりと風呂に浸かれるのは有り難いと頷いた。
モーグルは話を聴くと、アエリアとシャーリーに視線を向けると2人は呆れたようにため息をついた。モーグルが水着のモデルになれというのが分かっていたからだ。
2人は諦めて本城と高城に連れていかれ、水着選びにいってしまった。モーグルは2人を見送るとこちらに視線を向け、今起こっている事態について訊ねてきた為、他の仲間達にも伝えたいたので同席しても良いか訊ねると了承してくれた。
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