第67話【妖怪化】
巨岩竜は岩竜の変異種個体であり、竜種の中でも5本の指に入る強さを持つ岩石の巨竜が今目の前にいる。
地竜を5匹と岩竜5匹を引き付けれて姿を現した。
こちらの方が分が悪いのは火を見るよりも明らかだ。
流石のイザベルや強気な本城やダグラス、マグノリアも俺を見ている。
俺だって初めての経験であるが、何とかするしかないと腹を括った。『アレ』を試すのには丁度いい敵だろうし、今後の使えるか見極める必要がある。
イザベルとヘイナの2人には地竜と岩竜らの討伐を頼み、俺が巨岩竜と戦うと指示を出した。
本城と高城はそれを聴いて戸惑って止めるように言ってきたが、最強種の1角と戦える手段など持ち合わせてない。
あるとすれば、グランド達から聞いた妖怪や獣人特有の方法である。
九条には予め、もしもの時は一時撤退後にロックスさんらと合流して討伐隊を作る方向で話をするように伝えてある。
心配する2人に取って置きがあるから心配するなと頭を撫で、そっちは任せると伝えると覚悟を決めて巨岩竜に単身で攻撃を仕掛けた。
すると、こちらを警戒するように唸り声をあげ、地竜や岩竜には手を出すなといった感じで首を動かす。四足歩行の全身が岩石に覆われ翼はないが20メートルはあるであろう巨体を持つ巨竜はこちらに向かって咆哮をあげた。
◇◆◇
九条に強制的に休暇を取らされ、暇であった為にグランドに妖怪としての力は鎌鼬の力である3匹以外に何かできないのか訊ねた。
すると、グランドは俺の今の状態は『半人半妖』である為に【妖怪化】という力がある事を話始めた。
精霊や妖精は武具に宿ってその力を高める事ができ、身体強化された状態であるというのだ。
そして、妖怪と獣人にも【妖怪化】と【神獣化】といって本来の姿になり力を倍増させる変身能力があるというのだ。あくまでも妖怪としての知識として知ってるだけで、実際になった事はない為にどうなるのかグランドも分からないと首を振った。
ただ【妖怪化】は並みの魔物では相手にならない為、試すのであれば竜種の上位個体でなければ暴れ足りずにその場で暴走してしまう可能性があるという。
岩竜の変異個体で竜種の中でも5本の指に入る巨岩竜ならば試すのに十分な相手であり、唯一対抗できる手段といっても過言ではない。
巨大な力を持つ危うさは身をもって体験しておいた方がいいだろう。少なくとも、今後の事を考えると【妖怪化】の力をある程度は知っておいた方がいい。
結果的にそれで仲間や大切な嫁達を護れる手段が増えるのであれば無茶だろうが通りにしてやる。
『グランド!ウイング!フィリー!【妖怪化】するにはどうすればいい? 』
『『『親分妖怪化するのか!?』 』』
3匹が声を揃えて聴いてきた。巨岩竜相手に策を立てても無意味だろう。なら少しでも勝ち筋がある妖怪化に掛けるしかないと伝えると、3匹は俺の周りを走り始め、竜巻の中に閉じ込め始めた。
すると、グランド、ウイング、フィリーの順に俺の体内に入ってくると体内に流れる魔力量が跳ね上がる感覚に襲われた、相棒の草刈り鎌2本にも3匹の魔力が入り込み妖怪化した為なのか、少し巨大化していた。
これが妖怪化か。少し鎌がでかくなったのと尻尾が3本になっただけで、他は特に変化は見られない。武器の中に入ってしまった3匹に訊ねると、ここからは俺次第だという。
妖怪化は本来の妖怪・鎌鼬の力を全て使いこなせるようになるが、妖怪としての格をあげるために強い魔物を倒し勝ち続けなればならない。
【弱肉強食】
人間の世界でも妖怪の世界でも、弱い者は強い者に淘汰されるのは変わりない。だが、力あるものが弱き者を護るのも真の強者の役割でもあるからだ。
強者しか結局は何も護れない。いや、建前上護っているフリをして民衆を騙しているといった方がいいのだろうか。例え弱者を護れる力があっても、救わずに社会から弾き出すのが前の世界の規律だった。結局は自分に従ってくれる従順な奴隷作りをしていたのが、俺達がいた世界だ。結局は親の社会的地位1つで夢や憧れへの努力が全て無駄になる社会だ。
母親もそうだ。親父が残した遺産を独り占めてして息子に出す学費を惜しんだからこそ捨てたのだ。だからこそ、生きる為に働いた。社会的な立場ややりがいなどあの社会にはない。社会的地位のある者が恵めた先の知れた世界に戻る気などはない。
俺はこっちの世界で生きる。生きるために強くなる。強くなって向こうの世界では手に入れられなかった『大切な物』を護れる強さが欲しい。 そう強く思うだけで身体中から魔力が溢れ出ていたせいだろうか。巨岩竜は虚勢を張るように咆哮をあげ始めた。
そんな吼えるなよ。そんなデカい図体して、そんな虚勢を張られたら惨めにズタズタにしてやりたくなるじゃねぇかよ。
不敵な笑みを巨岩竜に向けると、危険を感じ取ったのか大地魔法を発動させて岩の棘を放ってきた。ようやく向こうもやる気になってくれたようだ。空中跳躍で避けて同じ目線の位置まで上がると両鎌を構えて襲い掛かった。
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