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第63話【襲撃(後編)】



 シーサーペントは海の魔物の中でも頂点の1角にはいる魔物である。小型な船ならひと一噛(ひとか)みで砕けてしまうほど鋭く長い牙と、長い身体を覆う硬い鱗に傷を付けるのは至難の技である。

 

 そして、シーサーペントが大陸でも恐れられているのは、口に備わった特殊な器官である。体内に溜め込んだ魔力と海水を凝縮して強力な水のブレスを吹き付けてくるからだ。

 

「ち、ちょっと流石に不味いかな~?ダグラス平気~」

 

「足場が砂浜で土魔法もうまく使えねぇしな。副団長、どうするよ?」

 

「流石に相手が悪すぎるわ。私の魔法も効果がありませんし…」

 

「そ、そろそろ私達も魔力が限界です…」

 

 海竜相手に何とか戦えていたが、相手は海の魔物の頂点に入る魔物である。するの、シーサーペントの身体が突如として竜巻に包み込まれた。

 

「逃げずに戦ってるだけマシだな。よく頑張ったな。ヘレナ副団長」

 

「クサカジョウ!どういうつもりですか!?シーサーペントは私達が…」

 

「勿論倒して貰いますよ?けど、今のヘレナ副団長の槍では、シーサーペントを貫く事も得意の氷結魔法を使いこなす事も出来ませんのでプレゼントです」

 

 そういって渡したのは、サハギン・キングが持っていた三叉槍である。俺の鎌同様に窪みがあり、水晶を嵌め込めば魔法が使えるようになるユニーク装備である。

 

 それぞれにポーションとマナ・ポーションを渡して回復させる。竜巻の中ではシーサーペントが暴れているようだ。

 

『ウイング、ちょっと切り裂いて大人しくさせろ。フィリーは適度に治して置いてくれ』

 

『了解!ズタズタにしてやるぜ!』『ハイハイ任せて!』

 

 指示を出すとウイングは竜巻を縮めてシーサーペントを風の刃でズタズタに切り裂き、フィリーが程よく治す手はずだ。その間にやることはこの騎士団パーティーの連携を増やす事だ。


 「その三叉槍があればヘレナ副団長の氷結魔法が扱いやすくなります。魔法使いのネルの樹木魔法と合わせれば、シーサーペントぐらいは押さえられるでしょう。後は支援魔法で前衛の二人で止めを…」

 

  「あ、貴方いったい何を考えているのですか…?」

 

 「俺はロックスさんから鍛えて欲しいと頼まれただけなので、その依頼をしているだけです。その三叉槍は偶然手に入れた物ですが、ヘレナ副団長や団員の力になってくれます」

 

 「…わかりました!聞きましたね!?この作戦で行きますよ!」

 

  「それではトドメはよろしくお願いいたします」

 

 そういって竜巻を解除すると鱗がボロボロになったシーサーペントの姿があった。ヘレナ達が身構えていたが、シーサーペントの視線は俺を見ていた。

 

 あのまま細切れに斬り刻んでやっても良かったが、それではこの若い騎士団の成長に繋がらない。俺と殺りたきゃ先にその人ら倒してからだと目で訴え掛けると、ヘレナ達に向かって咆哮が放った。

 

「ネム!先に樹木魔法で身体を縛り上げてください!」

 

「その後に私が氷結魔法で動きを完璧に封じ込めます!ネイルは私とダグラス、マグノリアに支援魔法を!3人でトドメを刺しますわよ!」

 

 「「「了解!!!」」」

 

 ヘレナが指示すると、団員達はその通りに行動し始めた。シーサーペントは先ほどの竜巻で弱ってはいるが、最初から仲間のスキルや魔法、性格を熟知した上で指揮を取れば、シーサーペント位倒せるレベルの騎士団員だ。

 

 問題だったのは、ヘレナの氷結魔法に耐えられる槍がダイアラック王国にはないまま、槍使いとして前線に出ていた事だ。サハギン・キングが持っていた三叉槍がユニーク装備の槍で偶然見つけて持ってきたが、あの武器ならばヘレナを大きく変えてくれる気がして持ってきたのだ。

 

 その予想は的中した。ネルの樹木魔法で動きを封じ込められて砂浜に押し倒されたシーサーペントは直ぐ様全身を氷漬けにされた。そして支援魔法で強化されたダグラスの槌、マグノリアの斧、ヘレナの槍が首、頭、鼻先に直撃し、シーサーペントはそのまま力尽きて起き上がる気配はない。


 見守っていると、イザベルと高城、リリアン達が近付いてどういうつもりだったのか訊ねられたが、ロックスさんがいなくなってもやっていける自信を着けさせて欲しいとロックスさん本人から依頼されていただけの事だ。

 

 それにまだ序の口に過ぎない。こっちの計画をめちゃくちゃにしている魔族に仕返しをしてやりたいが、全体的にレベルが足りない。もう少しレベルアップしてから必ず落とし前はキッチリとつけされて貰うつもりだ。

 

 1つ誤算があるとすれば、シーサーペントを倒した事で騎士団全員が急激にレベルアップした為、激痛に襲われてしまっていた。異世界人である俺達は急激なレベルアップをしても頭痛を感じる事はないが、こちらの世界では急激なレベルアップの先には激しい頭痛が待っている。

 

 少なくとも全員が20後半から30前半のレベルになったろう。イザベルと高城も1つレベルアップし、リリアンも2つレベルアップした。

 

 すると、高城の前に英国淑女風の美女が姿を現したのだ。マジシャンのようなハットを取り、高城に頭を下げた。

 

『私はクジャ。奇術師(マジシャン)のクジャです。よろしくお願いいたします。桃華さん』

 

「私の精霊!?クジャさんね!よろしくね頼りにしているからね!」

 

 クジャは天真爛漫な高城の笑みを見て微笑むと、スキルが取り付けられているブレスレットの中に入っていってしまった。取りあえずはこれで後は九条だけだ。

 レベルアップの頭痛に苦しむ団員達の元に駆け寄り介抱していると、アメリアさんが南の冒険者達を連れて駆け付けてくれた。ヘレナ副団長率いる王国騎士団がシーサーペントを討伐した事を伝えると周りがざわついた。


 シーサーペントの身体の傷やレベルアップの影響で頭痛に苦しんでいるのが何よりの証拠だ。

 南の街の住人は、サハギンの大群とシーサーペントを倒した騎士団とイザベルを讃えた。

 

 向こうはどうなったろうか。心配であったが、九条と本城がいるから大丈夫だろうと思っていたが、俺の顔を見てフィーナが様子を見に駆け付けてくれたそうだ。


ヴァルカンの方も片付いたようで、ようやくひと息つけると顔を上げて、ひと息ついた。

 


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