第59話【西の街・ヴァルカンの変化(その3)】
九条の話によると、このダイアラック王国には大昔のホノル火山には火炎竜が棲んでおり、突如として姿を消したという文献があったそうだ。
ホノル火山で俺達のレベルでも太刀打ちできないならば、相当なダンジョンボスがいるのだろうと思っていたが、ドラゴンでは確かに分が悪い。
そして、その火炎竜と争っていていたのが妖魔王・ツルギという剣豪の大妖怪であったという。
「イザベルが探してるのは妖魔王・ツルギの力か?」
「…何故わかった? 確かにツルギを探してはいる」
「イザベルが使ってる大太刀に似た魔力をタンザアの森で感じたからな。妖怪だから大妖怪の気配に敏感になってたのかもしれないな…」
実際、グランド達が自分達よりも格上の大妖怪と言った言葉が気になったので九条に色々と調べて貰った。どうやら大森林やダイヤラック王国、隣国であるエリシリア王国には妖怪・妖精・精霊の類いの魔物がいるそうだ。
元々、エリシリア王国は日本文化に近い為、ダイアラック産の米も元はエリシリア王国から伝わった物らしい。
イザベルが探してる妖魔王・ツルギは剣豪の大妖怪であったが、元は俺達同様異世界人で転生して精霊になったようだ。
だが、と力を貸していたが扱う人間の愚かさに妖怪とない人斬り妖怪・ツルギなり、多くの人間や生き物の生き血を吸い大妖怪となり、多くの妖怪を従え妖魔王・ツルギと名乗るようになったそうだ。
そして、ホノル火山の火炎竜の王としてファイヤドラゴンロードと一騎討ちをし、激闘の末引き分けという形で幕を閉じた。
実際はお互いに弱ったところを天界の女神達に封印された伝承があったと九条が教えてくれた。
「んー、先にツルギかファイヤドラゴンロードのダンジョン踏破しねぇとヤバイかも知れないな…」
「どういう事?両方ともヤバい位強いから私達でも攻略できないってグランドちゃんがいってたじゃん?」
「桃華、ダンジョンは一定期間立つと【スタンピード】ちゅー現象が起こる。それを長い事放置しとくとダンジョンボスがでてくるねん…」
「んじゃ、妖魔王もドラゴンの王のダンジョンを攻略しないとヤバいって事じゃん!?」
本城が事の重大さに気付いて訊ねてきた。ウガールの討伐はハッキリいってレベルアップに繋がらなかった為に経験値効率を考えるとダンジョンに挑んだ方が得策なのは理解している。
だが、レベル50近いイザベルが単独で冒険者活動しているのもそう言った理由があるのだろう。
ハッキリいって、パーティーの人数が増えればやれる依頼は増えるがレベルアップするに連れて経験値がそれぞれに入る為にレベルアップしにくくなる。
イザベルは妖魔王・ツルギのダンジョンに挑む為に単独でレベルアップをしていたのだろうと自分の考えを話すとイザベルは唇を噛み締めて頷いた。
1度だけ挑戦した事があったが、妖魔王ツルギのもとまでたどり着く事ができなかった上、10階層フロアボスに敗北し、空間魔法で逃げ帰って来たと悔しそうに話す。
イザベルのレベルでも太刀打ちできないフロアボス相手となると、俺達がパーティーを組んだとしても太刀打ちできるか分からない。
少なくとも【レベル50の壁】を越えなければ踏破するのは難しそうだ。すると、黙って聴いていたバレッタ達は自分達もその中に含まれているのか訊ねられた。
実際問題、前衛で戦える獣戦士のバレッタと斥候で慎重派のフィーナ。そして、風魔法を獲得して雷鳴魔法を覚えたリリアン達にも協力しもらえたらかなり助かると伝える。
3人は顔を見合わせてレベルアップする手段をどうするべきか考え始めた。
実際ダイアラック王国周辺にはダンジョンも多く未踏破のものも多い。そこを踏破してレベルアップを目指すのが現実的だろう。
「まぁ、ヴァルカンの街が落ち着かない事にはどうしようもないけどなぁ。少なくとも騎士団もロックスさん以外にも頼れる人材育成しないとだし…」
「それにクラフト鉱山がダンジョン化してダイアラック王国は損してる状態やしなぁ。何かいい儲け話でもあればなぁ~」
「そう思うが、魔鉱石がある山は珍しいからな。ただ他の国との関係が悪くなれば最悪俺達を差し出す羽目になるかも知れねぇ。それは俺もヤダし、イザベル達も嫌だろうしな…」
そう訊ねると、全員が頷いた。確かに中央大都市『エルドラ』は冒険者達にとって憧れの場所なのはわかるが、冒険者の数が尋常ではないほど多いためにダンジョン内でフロアボス待ちということがあったり、そもそも攻略自体を諦めて日銭を稼いでいる冒険者が多いらしい。
それでも魔族領土からレアな魔物や魔獣が現れやすい為に他国の騎士団と協力すれば褒賞金もでるらしいが、こちらの金には困ってない。
何とかダイアラック王国の立場を護らなければ、俺達がエルドラに出される可能性が高い。イザベルも妖魔王ツルギとの関係もあるために離れる気はなくバレッタ達も故郷を離れる気はないという。
どうしたものかと昼食を食べ終えて考えていたが、いい案ができる事もなくため息をそれぞれがついた。
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