第55話【クラフト鉱山ダンジョン化(中編)】
「そんな事できるか?あーしらも噂は知ってるけど…」
「ダンジョン化してて完成してないなら奪い取る。まぁ、宝物の間がねぇのが痛いが、そこは魔鉱石で我慢して貰うしかねぇがな…」
「えっ?宝物の間がないの?ダンジョンなのに?」
「こういう場合だとないな。ダンジョンボスがいないし、財宝を生み出す魔力が足りてないだろうな…」
九条とは冒険者としてやっていく上でこちらの冒険者として知識を調べていた。今回のケースは色々と条件が揃っているが、欠点があるとすればダンジョンを制覇しても宝物の間がない事だ。
ダンジョンになりかけの場合はダンジョン・コアがむき出しになっており、そこに上でやられた弱い魔物の死体を魔素として取り込んで成長する。
基本的に人の手が届かない所か気付きにくい場所にダンジョンが産まれる事が多いが、今回の場合は鉱山で直ぐに発見する事ができたのが大きい。
後何週間かすれば、ウガールが召喚したゴブリン・シャーマンを殺してダンジョンボスになり、そのまま弱い手下を手当たり次第殺してダンジョン・コアに魔素をため込んで完璧なダンジョンになっていた可能性が高い。
ウガールはまだ召喚したゴブリン・シャーマンのいいなりになっているが、そのうち力の差に気付いて邪魔な存在を殺してダンジョンを物にするだろう。ゴブリンはズル賢く狡猾だが、バカな魔物である。
取りあえずは目的の場所までたどり着いたら作戦を説明をすると伝え、ゴブリン達が出てきた穴を塞ぎ、グランドが見つけたウガール達が密集してる場所に通じる場所に歩みを進めた。
◇◆◇
「着いたぞ。この下がウガール達がたまってる場所だ。取りあえず少し休憩しながら話そう…」
「ここまで来る間にゴブリンとコボルトだけだったな…」
「こ、この下に数百から数千匹のゴブリンやコボルト、オークがいるんですよね?」
「…そうなってくると役割りと作戦が鍵になってくるけど?ジョウには策があるのか?」
イザベルが翡翠の瞳をこちらに向けて訊ねてきた。勿論無策ではない。計画はある。ポーチからある小瓶を取り出して九条に渡すと何なのか聴かれた。一言でいってしまえば良く燃える油である。
それをモーニングスターに着けてリリアンの火魔法を利用して大多数を葬る。そこに俺の風魔法で火を広げ、土魔法で生き埋めにし、残るであろう上位種を本城とバレッタ、イザベルとフィーナのコンビで相手をし、九条はリリアンと高城を護って貰うつもりだ。
「だが、ウガールは良いのか?そんな事をすれば暴れ出すのではないのか?」
「そこは俺がウガールを挑発して注意を引く。ウガールはそこまで知能は高くないからロック・ブラストでも頭に当てればキレて襲い掛かってくる」
ウガールはタウキングより魔法耐性が弱く体力もタウキングより低い。ただ統率力はタウキングよりも優れている為先に周りの手下達を潰しておいた方が良い相手だ。
ウガールの鎧や大盾は強い衝撃を与えると砕ける為にイザベルとバレッタの火力が必要になる。
仮に反撃されたとして本城ならば護って反撃する事ができる。鎧と盾を破壊したら油をウガールに掛けて高城とリリアンの火魔法で息の根を止めるつもりだ。
万が一、生きてた場合は九条のモーニングスターを巨大化させて押し潰す作戦を提案する。
質問はあるかと訊ねると、本城とバレッタが倒さなきゃならない上位種について訊いてきた。
「ウガールがいるとキングは産まれにくい。戦闘に特化した変異種のゴブリン・チャンピオン、コボルト・ナイト・オーク・ジェネラルだ。確認してきて貰ったが、各三匹で合計は9匹。だが、イザベルとバレッタ相手には役不足だろうな。フィーナと綾香がサポートに入るし、やばくなれば梨沙とリリアンの遠距離攻撃もある」
「逆にそこまで戦いやすい状況を作ってくる方がありがたいけど…?」
「あーしらも3人でパーティーやってるけど、こっちが有利になる戦法って中々無いんだよな…」
「当たり前だろ?そもそも相手はこっちに奇襲仕掛けたりダンジョンの罠に嵌めようとしてくるからな。桃華は今のうちに変身して魔力高めておいてくれな?」
そう告げると明るい返事をしてバニーガールに姿を変えた。知らない4人は唖然していたが、高城はリリアンとお揃いの兎耳だといって笑顔で接している。3人にはかなり難易度高い要求になる。
だが、B級冒険者が5人でサポートすれば充分行けるだろう。
覚悟ができたか訊ねると、全員が頷いた。
鎌先を地面に突き刺してウガール達が密集してる場所に続く通路を作り出して進んでいく。鎌鼬になって聴覚が発達したためか魔物が呻く声が良く聞こえる。獣人族の3人も聴こえているだろう。
暫く進むと、巨大な穴の中にゴブリンやコボルト、オーク達が密集している場所にたどり着いた。どうやらここで産まれた弱いゴブリンやコボルト達が抜け道を使って上に上がってきていたようだ。
そして、その中央には緑色肌した5メートルの巨体に巨大な大盾と鉄の棍棒を持ったウガールの姿を確認することができた。臨時のパーティーでどこまできるか。やってみようではないか。
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