第50話【暫しの休息(後編)】
ガララスが他の冒険者ギルドにも掛け合っている間、休息期間を取り3日間は屋敷でのんびりする事になったが、冒険に行けない為本城と高城から不満の声が上がった。
流石に勝手に出掛けて買い取って貰うものを増やしたりダ、ンジョンに挑むとなると3日以内に帰ってこれるかわからない。
確かに3人は屋敷にいても特にやることがない。九条はこっちの本を読んで知識をつけたりしている為にダイアラック王国の古い書物などを読んだりする時間に当てると言っているが、二人は特にやることもないからつまらないとぼやくのもわかる。
「う~ん。ならエレノアを連れてショッピングでもいってくるか?俺はニコラスとセリスに新しい薬造りを教えるつもりだが…」
『親分親分!』『その前に!!』『お話があります!』
今後の方針を部屋で話しているとグランド達が鎌から出てきた。色々と話さなければならない事があるらしくちょっと時間が欲しいらしいのだ。
鎌鼬に転生したのは良いが、具体的に何をしたら良いのかわからない。3匹の話は転生についてであった。
一応は妖怪・鎌鼬として生まれ変わったようだが徐々に身体が変化していく為に髪も黒から茶色に変わっていくというのだ。
そして、毛が完璧に変わると獣人族同様に繁殖期があり、性欲が押さえられなくなるというのだ。少なくとも寿命は500~600年あるが、精霊になりつつある3人が嫁であるので、
その心配はしていないという。
だが、3匹が気にしていたのは戦闘スタイルについてだ。
どうにもグランドとウィングの力で【砂塵魔法】が使えるようになったというのだ。
基本の4属性のうち2つの相性が良ければ覚えられる複合魔法というもので魔法使いでも実際に使えるのは本の一握りだ。
俺が覚えた砂塵魔法は砂を操るだけではなく、【乾燥】・【脱水】・【風化】なども操ることができるらしい。使い方によってはかなり便利な魔法であるのは間違いないだろう。
相手によっては有効的な攻撃手段になるためにこれは大きいし、何よりも使い方次第では薬造りにも役立つ魔法は大きい。
それらを利用して妖怪・鎌鼬としての素質をあげて欲しいというのだ。
そもそも、転生は次世代の勇者に力を貸す者達の事を示すそうで、精霊・妖精・獣人・妖怪の順に位が変わってくる。
特に妖怪は武器が特質的な者が多い為に転生する事自体が無いというのだ。
そして、コイツらは食事を必要としない。厳密にいえば本体が鎌自身である為にどちらかといえば鎌の手入れなどをして貰うのが良いらしい。
「…因みにだが、尻尾ってどうなるんだ?」
『基本そのまま!』『カッコいい』『親分カッコいいよ?』
いきなり尻尾が生えたので色々と不便な時もまだあるが、そのうちなれてくるというのだ。実際にイタチの獣人の姿に変わったようなものだ。
まぁ、いきなり尻尾掴まれるとかなりビックリしたが…。まさか、神経あるとは思ってなくて試しに尻尾動かしてみようと思ったら動いた為に俺はもう人間では無くなってしまったのだなと実感した。
すると、3匹が鎌鼬になったのは嫌だったかと聞かれた。個人的にはステータスが上がったから文句は無いし、3人が良ければ問題は全然ない。
そもそもこちらのが働いた分以上に成果も出るし、金も入ってる為に居心地が良いというと3人も同意した。
スマホもネットもなければカラオケやボウリングなどの娯楽もない世界であるが、そういった物を作ったりこの世界の娯楽に触れるのが楽しいからだ。飲みの会話だって冒険者として必要な情報収集の技術だが、前の世界だとただ上司に酒に付き合わされて説教臭くなってきて何の役にもたたないクソな飲み会に参加したことがあるが雲泥の差がある。
前の世界ではそんな娯楽をしている余裕も無かったが、冒険者として強くなり前の世界では絶対に手に入れる事ができなかった者が手に入っている。
こちらの世界のが人として生きている感じがしていたし、別に将来的に妖怪・鎌鼬として誰の力になるのも悪いことだとは思ってない。
前の世界で社会の歯車として生きる事が決して悪だとは言わないが、少なくとも会社や社会にあの世界に輝かしい未来があるとは思ってはない。
だからこそ必死になってまで魔王を倒して元の世界に戻りたいという気持ちが全くないのだろう。
帰れたところで先の見えない社会で生きていくよりも、冒険者として見たこともない世界を冒険して魔物を倒して稼ぐ方が危険ではあるが誰の為になるし、やりがいにもなる。
少なくとも、金の為だけに縛られる人生とは無縁なのがこの世界だ。絶対に魔王を討伐してやろうなどいう気持ちにはなれない。出来れば勇者など誕生せず、魔王も領土内で好き勝手してくれれば良いと心の底から願った。
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