第04話【九条梨沙】
元の世界に戻れない前提で制服を売り払い一番安い衣服と皮鎧を手に入れた。冒険者ギルドでの初依頼は初心者冒険者の定番の薬草採集である。冒険者としてのある程度の稼ぎを貯めておきたい為に依頼を受ける事にした。
ホットパンツを履いておへそを出した軽装でいかにも盗賊って感じの銀髪で少しだけ小柄でお胸も少しだけ残念気味の少女はドルダムの娘で現役冒険者で副ギルドマスターのコレットというらしい。本城はコレットに喧嘩腰で高城がそれを宥めている状態だ。
結局、本城と高城はコレットに鍛えて貰う事になり、何故か九条が依頼に同行する事になってしまった。
「本城と高城を放置していいのか?あの2人ってあんま頭よくねぇんだろ?」
「だからやろ? ウチの役職は『僧侶』やで?それなら魔物倒してレベルアップせんと戦力ならんやろう?」
ということでレベルアップを目的に着いてきた九条とパーティーを組んで薬草採集の為に草原地帯に訪れていた。今回集める薬草は『スキマ草』と言って石けんや塗り薬、ポーション等に使われる薬草であり岩の隙間や木の根元に自生する野草である。ギルドからある程度この辺りの薬草や魔物の情報は仕入れてきた。危険な事さえしなければ多分、大丈夫だろう。
「なぁ、草加くんちょっとええか?」
「何かご用ですか、三姫様?」
「…三姫様やなくて九条梨沙やで?ウチの事は梨沙ちゃん呼んでもエエで?」
「三姫様を名前でお呼びすると後が怖いので…」
できれば1人で行動したかったが、おそらくは九条には見透かされてる様な気がしてならない。冒険者の依頼は別に受注した冒険者ギルドに確認して貰わなくても他の冒険者ギルドで受理できる。このまま依頼を受けて他の街に移動して依頼を完了させる事ができてしまうのだ。
九条は俺があそこから離れると自分のリスクがかなり多い。1つは頭の悪い2人の面倒を見るのは手間だと考えたのだろう。
そして、自身が僧侶である為に前衛職と組むのが理想的なのは理解できる。冒険者ギルドにいた冒険者はおっさんばかりで九条らを厭らしい目で見ていたのを察知したのだろう。俺と行動をともにして守ってもらう方が現実的だと考えたのだろうかこちらの意志を見透かしているかのように関係を作ろうとしてきた。尋ねたかったのは自身の個人スキルについてだ。俺に自分のステータスを見せてくる。
九条 梨沙
・名前:クジョウ リサ レベル1
職業クラス:僧侶
固有スキル:破戒僧
選択スキル:
筋力+10 敏捷+5 体力+50
器用+20 知能+70 魔力+90
ステータスを見ると破戒僧と提示されていたのだ。
「破戒僧ってどうやと思う?」
「説明もないのでなんとも。にしても『破戒僧』って…」
「まぁ、神も仏も信じとらんしなぁ…」
要は聖職者の禁止されている肉や魚を食べて権力とか色欲とか持ってるって事だろう。まぁ、向こうの世界では当たり前だと思うが固有スキルの意味がわからない現状だ。取りあえずはスキルを使ってみるのが手っ取り早いが特に何の変化もないらしい。それで着いてきたというワケか。
「ウチは踊り子がよかったんやけどなぁ~」
いや、その美貌に巨乳で踊り子って…
「…国でも滅ぼす気ですか?」
「何でやねん!?普通にエエやんか!踊り子、可愛いやろ!?」
「三姫の中で一番淫らな身体してる方がやったら間違いなく戦争の原因になりますねー」
歴史にはくだらない事で戦争をした過去がある。その中でもいくつかは1人の美女によって引き起こされている。三姫の中でも黒髪ロングでナイスバディの九条梨沙が踊り子になれば一晩でどれだけの額を稼げる事だろうか。下手をすれば一国の王が妻にと色鮮やかな宝石類でも持って求婚にくる王族達の姿が目に浮かんでしまった。
もしも、魔王が九条の美貌に酔いしれて争いが無くなるのであればそれもありかもしれないが。こっちの避妊方法がわからないので何とも言えないが襲われないように気をつけてくださいとしかいえないぐらいの美貌の持ち主であることは間違いない。
「なぁ?何でウチには敬語なんよ?普通でエエんやで?」
「あー、俺と仲良くなってもメリットあるのか?」
「色々とあるで?ウチよりも記憶力がエエやん?まともに授業受けんでも優秀な成績をしてたしな。 草加くんと関係を作るのは『ウチら』に取ってはメリットがあるやん。それにもし、ウチが同行せんかったら一人で別の街か国に移動してたやろ?」
やはりバレていた。九条は俺と組むことでメリットがあると見込んで近づいてきた。確かに後衛職の九条と組むのは俺としても相談者が増える選択肢ができるためにメリットがある。
だが、九条は良くても後の2人。本城と高城が俺の事をどう思っているかが問題である。
「まぁ、本城と高城次第だろう? 少なくともただでさえ三姫と行動してクラスメイト達から恨まれてそうなのに…」
「というか、クラスメイトの名前覚えとるんか?」
「…名前はほぼ忘れてるし顔もわからねぇ。ただ三姫は学校に行くと必ず名前上がるし目立つからな…」
「なるほどなぁ~ウチらは名前と顔が一致するんやな?それはそれで嬉しい話やなぁ~」
糸目から妖艶な笑みを見せつけてくるが、こっちはもっと色っぽい姉ちゃんに誘惑されながらバイトしてきた精神力がある。誘惑されても多少の免疫力でどうにかなるが、まずは依頼をこなすのが先だ。
暫く探していると、岩影を見つけると目当てのスキマ草が無数に生えていた。だが、岩影にいたのはスキマ草だけでなく額から角のあるウサギの魔物であるホーンラビットの群れが住み着いている為に危険も隣り合わせだ。飛び出してきた為に強制的な戦闘になってしまったが、九条は意外にも持っていたメイスで叩き潰していた。
三姫の一人、九条梨沙は意外と容赦ない性格のようだ。
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