第22話【大魔導士・マリアス降臨】
マリアスの迷宮の宝物の間は廃教会ダンジョンよりも少し手狭だったが財宝は丁度もらった麻布の袋に入るくらいであった。
財宝回収を高城と本城に任せて九条とともに今現在伝わっている話をマリアスにすると困った顔をしていた。
確かにこのダンジョンは選ばれた者しか攻略が出来ないのは真実であるが、別に勇者を選ぶ為に造られたダンジョンではないというのだ。
九条と顔を見合わせてどういう意味か尋ねると、元々レイドリス王国の王座。つまりは王位継承のためのものであると話す。
おそらくマルシェ王女以外に王を継ぐ者が産まれなかったのではないかとマリアスは話す。
元々レイドリス王国の王女は北の隣国・エルドル王国と西の隣国・ソドリア王国の王子との政略結婚以外での価値がないというのだ。
『多分だけどマルシェ王女は古株の大臣や貴族達に利用されて君達を召喚しただけだと思うよ?』
「あの胡散臭い笑顔はそう言うことだったんか。あの王女も大変やなぁ~」
「だが、レイドリス王国の世話になり続けるつもりはないだろ?あの王女様の意思じゃなくてその重鎮達が俺達を利用しているなら尚更質が悪い。ここの財宝も難癖着けて国にとられるだろうな」
『う~ん。本来なら王位継承の為の王冠だけどマルシェ王女には僕から話すよ。勇者のつるぎに僕の意識を少しだけ移すからお願いしてもいいかな?』
どうにもマリアスは何かをやるつもりのようだが、問題があった。
台座に刺さっているつるぎは勇者にしか抜けない。
今この場で勇者の資格がある人物は誰もいない。マリアスを見ると台座ごと転移してくれると苦笑いした。
◇◆◇
一方でクラスメイト達のパーティーは散々な結果でダンジョンから追い出されてしまった。攻略に自信のあった西城も東条のパーティーも迷宮に行く手を阻まれてしまい外に出てきてしまった。
秋野率いるパーティーも似たような感じで何度も挑戦して出てくるの繰り返しであった。
疲弊したクラスメイトの女子達は危うくゴブリンやローパーの孕み袋になりそうになった者も多くいた。
ほぼ全員が座り込んでいる状態であった。
そんなクラスメイト達を見てマルシェ王女はため息をついた。
すると、扉の前に魔法陣が出現した為にダリウスが前に立ち剣を鞘から引き抜き息を呑んだ。
だが、その場に現れたのが俺達だった。
「ま、マジで勘弁してくれ…台座掘り起こす羽目になるなんて…」
「し、しんどかったぜ…」
「ほ、ホンマにええ加減にしてやぁ~」
「もう疲れたよぉ~帰って寝たいよぉ…」
結局台座が固定してあってそのままでは転移する事が出来ないためにその周りの床を剥がして地面を掘り、手作業で台座を掘り起こすという重労働をさせられた。
転移されて来た俺達が地面を座って息を切らしているのを見て慌ててダリウスが近づいてきた。
剣を鞘に収めて状況を説明し、鞄から飲み水を取り出して三人にも渡した。麻袋に詰めて財宝を手渡すとマルシェ王女に話があると伝えた。
「私に何か御用ですか?」
「俺達じゃ無くてマリアス様が…」
『ヤッホー♪大魔導士・マリアスだよ?初めましてレイドリス王国の現・王女マルシェ様…』
「えっ、あ、あなた方はいったい何を…?」
『あー、違う違う。僕が頼んだんだよ?マルシェ王女と話したいってね?』
マリアスは微笑むと指を鳴らしてマルシェ王女の頭に王位継承の証である王冠を載せたのだ。
元々、このマリアスの迷宮はレイドリス王国の王位継承の為に造られたものであり、その際に勇者足る存在を連れて挑むダンジョンだと説明をした。
ところが踏破したのは異世界人で勇者適正もなく、王位継承権のある人物を連れていなかった事が気になり、俺達に頼んで勇者のつるぎとともに外に出てきたと教えた。
『彼らには先に話したけど、勇者のつるぎを抜けたとしても魔王には勝てないよ?』
「そ、そんな!ですが、言い伝えでは…」
『んー、確かに女神にいわれて勇者のつるぎの管理は任されたんだけどね?【勇者の試練】っていうダンジョンを攻略して女神達に祝福をもらわないと魔王を倒す力は今のつるぎにはないしねぇ…』
「そ、そうだったんですか…」
マルシェ王女が少しがっかりした表情を見せたが、マリアスは王女が王位継承のダンジョンに挑むなんて面白いと笑い、王位継承の証である王冠をマルシェ王女に与えると宣言した。
『これで君はレイドリス王国の女王様だ。さて、僕は余りこの地に留まる事は出来ない。この場にいる兵士達は阿保な重鎮達でなくマルシェ女王の剣となり盾になることを誓え。さもなくば、勇者のつるぎは正義の力を失い、レイドリス王国は滅亡するだろう。エルドル王国とソドリア王国の共同領土になるかもね…』
「わ、私はどうしたら良いのでしょうか…?マリアス様、教えてください」
『うん。まだ君は幼い。ダリウス騎士団長や頼れる大人を頼りレイドリス王国の民を護れる女王になりなさい。ダリウス、その為の力をそなたの剣に与えよう』
「わ、私が…ははっ、確と承りました!」
ダリウスは跪いて腰のベルトを外して鞘に入った剣を両手に捧げた。マリアスは剣に聖なる加護を与えた為に決して悪用しないようにと忠告をした。
そして、見事にダンジョンを攻略した俺達を自由に冒険させるように告げると魔法陣に吸い込まれるように消えていってしまった。
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