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20話【マリアスの迷宮(後編)】



 流石にダンジョンの地形まで利用されてはこちらが圧倒的に不利な状況だ。衝撃波で吹き飛ばされないように何とか踏ん張っている中でその振動を利用して天井を崩して瓦礫を降らせてくるなんて質の悪い術だ。

 

揺れの振動で肩から滑り落ちてしまい瓦礫を避けながら九条と本城達を抱き抱えてゴーレムの身体の下に滑り込む。

 

 流石に装備品ありの女子三人を担いで走り抜けたが良く咄嗟に動けたなと、火事場の馬鹿力を発揮したようだ。

 

 ゴーレムはゴリラのような体型をしているために身体の下が瓦礫を防ぐのに丁度よかった。

 

 だが、この巨体で衝撃波を起こして瓦礫を降らせてくるゴーレムの攻撃は脅威なのは間違いない。

 

 だが、問題なのはレベルアップして強くなった俺と九条の攻撃が効かず、更には修復してしまう能力まである。

 

 圧倒的にこちらが不利だ。勝ち目がない。あるとすれば、ゴーレムの弱点はコアと呼ばれる魔力の結晶を破壊すれば壊れてしまうと冒険者ギルドで教えてもらった。

 

 コアを護るなら岩石が密集している胸の部分だろうが、そこを破壊できるだけの火力がパーティーにはない。

 

 どうしたら良いのか思考を巡らせるが、今手元にある手札ではどう考えても勝ち目はない。

 

 撤退するべきだろう。すると、高城は変身魔法で探偵になりゴーレムの身体をじっと見つめ始めた。

 

「んーと、コアは頭の部分にしかない見たい!」

 

「桃華の探偵の魔法少女スゲェな。コイツ一撃で倒せる魔法少女に変身できないのかよ?」

 

「何て言ったら良いんだろう。出来そうなのに出来ない感じ?」

 

「どういう意味や?もっと分かりやすく…」

 

 出来そうなのに出来ない感じ。それが高城の変身魔法の弱点なのだろう。本人も攻撃手段として戦闘型の魔法少女になろうと変身のイメージをしていたができない。

 

 何か理由がある筈だ。探偵やチアリーダーには成れている。変身出来ない理由が必ずある筈だ。

 

 思い出せ。高城がチアリーダーになった時の事、探偵になった時の事を…。何か、何かヒントがそこにある筈だ。

 

…そういえば、大岩の罠を押した時に何故、九条と本城を抱き抱えて走らなかったのだろうか?

 

 敏捷性のない二人を持ち上げて走る事など高城なら造作も無いことだ。

 

 実際に薬草採取と魔物討伐後の帰路に着く際に本城と九条を背負ってどちらが先に冒険者ギルドにたどり着くかレースできるだけのステータス値はあるのは確認済みだ。

 

 だが、探偵になった時は敏捷性がない二人を置いて俺に任せて先行していた。

 

 高城がそんな面白そう状況で遊びに誘わないのは変だ。

 

 もしかして、あの時は運べる力がなかったのでは?

 

 確証は無いが試してみる価値はある。高城に向き直って肩を掴んだ。

 

「桃華、もしかしたら魔力が足りない分を他のステータスで補ってるかもしれない。探偵になった時、本能的に二人を運ぶ力がないって思ってんじゃないのか?」

 

「あ、言われてみればそうかも。探偵の姿だと魔力とか頭は冴えるけど力がない感じあった!」

 

「今から酷な事を言うぞ?ここにあるマナポーションを飲めるだけ飲んでこのゴーレムの頭を吹き飛ばす魔法少女になるんだ」

 

「丈くん、幾らなんでもそれは賭けとしてリスク高いで?」

 

 勿論そんなことはわかっている。勝率は限りなく0に近いだろう。だが、魔力軽減の固有スキルを持ちながら変身魔法の魔力が自身の魔力以外のステータス値を魔力に回していたのであれば説明ができる。


 こちらの世界にある魔法は詠唱を覚えてしまえば発動できる。だが、全てがオリジナルで高城が望む魔法少女の姿になるのに膨大な魔力が必要だったらどうだろうか。

 

 魔力軽減をしても魔力が不足している為に変身する事が出来ない可能性が少しはある。

 

 この絶望的な状況下だからこそ魔法少女として活躍する状況は揃っている。

 

 ヒーローは仲間のピンチに遅れてやってくるものだろう。怪人役のバイトをやっていた時にそういう台詞を言っていたのを思い出した。



「俺は魔法少女になりたい桃華を信じる。ウチの魔法少女はこういう土壇場の場面で大活躍するヒーローだろ?」

 

「…わかった!ワタシも桃華に賭けるぜ!このデカブツぶっ倒す魔法少女になるってよ!」

 

「せやなぁ。桃華はここぞって時の運は強いからな。ウチも命賭けるわ。桃華はウチらの魔法少女やしな」

 

 本城と九条も賭けに乗った。問題は当の本人である高城の意思であるが、三人で話している間にマナポーションを既に飲み始めていた。

 

 本当に図太い性格をしているというか逞しい精神力の持ち主だ。高城の頭を撫でるとゴーレムの気を引く為に俺が囮になるといい腕を駆け上がった。ゴーレムの後ろにある石柱が倒れて重なった場所ならば衝撃波も軽減できると声を上げて指示を出した。

 

 三人はゴーレムの背後に移動し始めた。腕を駆け上がり注意が俺に向くようにゴーレムの視界に入りウロチョロと動き回りながら攻撃を仕掛ける。

 

 「一発限りのウインド・カッターッ!!!」

 

 鎌から風の刃を放つをゴーレムの胸元に傷が着いた。弱点は風魔法か。大声で高城に風を操る魔法少女をイメージしろと声を賭ける。

 

 すると、ゴーレムが腕を足場にした瞬間、腕を振り上げてきてしまい、身体が宙に舞った。


だが、ゴーレムの背後でマナポーションを飲み続けていた高城はついに覚醒して魔法少女に変身したのだ。

 

 カウボーイのような姿をした高城にお姫様抱っこされて床に着地すると、腰に着けていたホルスターから銃を取り出して銃口をゴーレムに向け引き金を引いた。

 

 それと同時にゴーレムは頭だけでなく上半身ごとを吹き飛ばされてしまい、その場に残った下半身が魔力源を失った事で崩壊し始めた。

 



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