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第16話【レイドリス王国からの依頼】



  クラスメイトとは最低限の関わりしかない。ウチの公立高校は学費と最低限の学力があれば卒業できる事を売りにしてる事が決め手になり進学した高校だ。

 

 元々、交遊関係の必要性を感じなかった。何よりも『自分にとって必要な人物』しか顔を認識が出来ない。

 

 顔はのっぺらぼうに見え服や髪型、声で人物を判別する。その為にクラスメイトといってもほぼ関わりのない人物の為、顔が見えないがそもそも名前を覚えるつもりはない。

 

 高校はあくまでも就活の踏み台であり、就職してからの人生のが長く、仕事関係での交友関係のが圧倒的に長い。

 

 たった三年の付き合いしかないし、家庭の事情で稼ぐ必要があった。高校の短い付き合いか就活に関わるバイトか天秤に掛けた時に俺は後者を取った。

 

 まぁ、向こうも俺の名前だけを知っていて俺自身については知らない筈だし、関係ないか。

 

 どうにもレイドリス王国は勇者候補に未踏破のダンジョン攻略をさせるようだ。

 

 そのダンジョン攻略に俺達も参加しろという通達のようだ。どうしたものかと考えていたが、本城が面倒くさいと拒否した。

 

「どうせ、王国に財宝も取られちまうんだろ?なら、アタシらは勝手にやるからほっといてくれよ?」

 

「それはダメよ。そもそも本城さん達が未踏破のダンジョンを攻略したことで決まったのよ?」

 

 どうやら廃教会のダンジョン攻略した事はレイドリス王国にも伝わっているようだ。

 

「何やエエように利用されとるみたいで癪やん。ウチもイヤやで?」

 

「私もそれなら他の場所に冒険に行きたいよ~!!」

 

 九条と高城もレイドリス王国にダンジョン攻略しても財宝を取られることが癪だと思っている。


確かにそれなら他の場所を冒険した方が良いのは同意だ。

 

 だが、今回レイドリス王国が攻略を目指している場所は少し特殊なダンジョンだというのだ。

 

 『マリアス』という大魔導士が造ったとされる【マリアスの迷宮】を攻略するというのだ。出てくる魔物は大した事はないが誰もボス部屋までたどり着く事ができていないらしい。

 

 レイドリス王国では「マリアスの迷宮は選ばれた者しか攻略できない」と言われているために勇者候補に攻略を頼むのは不思議な事ではない。

 

 その話を聞き、尚更関わりたくないと首を横に振った。どうにもクラスにはある派閥があったそうでその派閥がクラスメイト達を集めてグループが既に出来上がっているという。

 

 関わりたくない者は大城と秋野の元に集まり3グループ体制で訓練に励み、その力を見せつけるには良い機会なのだろう。

 

 困った3人は俺に意見を訊ねてきたが、はっきり言ってどうでも良い。だが、レイドリス王国を離れる理由付けにするには良いかもしれない。

 

 取りあえずは参加する方針で3人を説得するために日時と場所を訪ねると3日後に迎えが来るそうなのだ。

 

 どのみち強制参加させられる事には代わりないと三人に話すとため息をついて了承すると、2人はホッとした様子だ。

 

 2人が帰った後にどうするのか宿屋で話し合いをすることになった。


 部屋に戻ると、本城はベッドにダイブし、愚痴を言うと、高城がベッドに座り本城の頭を撫でる。

 

 俺と九条は椅子に座り、取りあえずはレイドリス王国に冒険者として実力を認めて貰う必要があることを伝えた。

 

 冒険者ギルドが認めても召喚したレイドリス王国のマルシュ王女に認めて貰えなければ国外に出るのは難しいだろうと説明をした。

 

 すると、高城が中央大都市の『エルドラ』に移動するのかと訊ねられたが首を横に振った。

 

「エルドラにいってもレイドリス王国の監視の目や冒険者としての稼ぎを国に何割か持ってかれる筈だ。コレットさんも王直属の冒険者パーティーに誘われたそうだ。『デメリット』もあるから割に合わないって言ってたな…」

 

「ああ、確かに国の代表冒険者的には扱われるんやっけ?けど、あれって冒険者として見つけた財宝の何割かは国に取られるんやっけ?」

 

「ゲッ!? ンな、最悪な所に入れられたくねぇぞ!?取り分減らされるなんて最悪じゃねぇかよ!?」

 

「えー、じゃあ、どうするの?丈くんは何か考えはある?」

 

「取りあえずは大魔導士・マリアスについて調べた方が良いな。もしかしたらモルツさんみたいに踏破後に出会えて何かしらの助言を貰えるかもしれないからな…」

 

 現在の持ち札にはレイドリス王国と縁を切る方法がない。

 

 1つだけあるとすればそのマリアスの迷宮を造った大魔導士・マリアスが何のためにその迷宮を作ったのか調べる必要があると話すと聞き込みは本城が調べは九条が担当し三日の間に高城に協力して貰ってダンジョンに備えて備蓄用のポーションと販売用の商品の製造に当たる事に決まった。

 

 一応確認したい事が1つある。クラスの派閥について訊ねると3人は困ったような難しい顔を見せる。

 

 早い話が女子グループ同士のつまらない意地の張り合いをしているだけの事だ。だが、3人もグループの幅を利かせる為に勧誘をされたが興味がなかったというのだ。

 

「派閥争いか。面倒だなぁ それ。ただでさえ名前も顔を覚えていないのに…」

 

「いや、顔と名前を覚えてないって…。あ、そうか。丈は出席単位分しか学校来てなかったから当然か」

 

「それに俺は『自分にとって必要な人物』の顔しか判断できん。正直クラスメイトだからと顔も名前も覚える気にならなかったしな」

 

「えっ!?待って!私達は判断できてるよね!?」

 

 高城が不安そうに言ってきたが、こちらの世界に来てから『必要な人物』になった為に顔はハッキリと分かっている。


だから3人の顔はハッキリと分かってると伝えると安堵したように微笑んだ。

 

 そう伝えると本城は装備した時にクラスメイト達が誰が誰かわからないのでないかと訊ねてきたが正直言って知ったことではないと言い切った。

 

 どのみちこちらの世界に来てしまった以上こちらの世界で生きる術を身につける必要はある。

 

 だが、冒険者として活動を共にしてきた三人は仲間であるが俺からすれば『ただクラスが一緒だった同年代の集まり』であるからだ。

 

 少なくともクラスメイト全員よりも今は仲間である3人の身の安全が重要だと話すと嬉しそうにしていた。


 

 


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