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第91話【ヘレナからの提案】



  長であるグリフォンの妻が目を醒ますと、他のグリフォン達は頭を垂れた。群れの中では一番デカいし、何よりも長よりも存在感が桁違いだ。群れのボスはこのグリフォンだろう。

 

 じっとこちらを見てきたが、戻て来たイザベルを見て声を掛けた。イザベルが昔乗っていたグリフォンの『カルマ』という名前のグリフォンのようだ。

 

「カルマ、タイラントフォレストパイソンはあの通り討伐した。けど、森が滅茶苦茶に荒らされていて魔物もいなくなっている」

 

『全くあのアホ蛇め。食い意地だけはあるからね…。ただそれだと縄張りを移動させないとだけど…』

 

『嫁。それなら強き者らが話し合っていた。ダイアラック王国。人間の国に暫くおいて貰うのは…』

 

『悪い話ではない。だが、創造神・サガ様から魔王領土への干渉は禁止されてる。そして、人間の国に行けば我々の力を求める人間が必ず我らの力を利用する輩が出てくる…』

 

普通に考えたら神獣と呼ばれているグリフォンの力を利用するのは当然だろう。ただ今回に至ってはグリフォンの長であるカルマが出産中で動けず、他のグリフォン達ではタイラントフォレストパイソンに対応できなかった事と縄張り付近の獲物を食べられてしまった事が原因だ。

 

 イザベルが森から大きめの葉っぱをバレッタ達とあつめてれくたそうで、トレジャーボックスから様々な肉とヴァルカンの街で栽培されている果実を取り出してグリフォン達の前に並べた。だが、誰も食べようとしなかった。どうしたのか訪ねると、普段狩りをしてそのまま食べるので見た目が違うので困惑しているようだ。

 

 だが、カルマは普通に食べ大丈夫だと皆を安心させると、他のグリフォン達も食べ始めたのだ。長の旦那といっても立場的にはカルマがトップなのだろう。

 

『果実は久しぶりだ。生肉も地竜(アース・ドラコン)肉も久々に口にしたな。ドラゴン自体少ないからな…』

 

「ただ今の環境下だと狩りも難しいしだろう?それに巣も結構荒れてる感じみたいだしな…」

 

「それなら、グリフォン一族とダイアラック王国で同盟を結ぶのはどうだろうか?我々はダイアラック王国と同盟を結ぶ。人間同士の戦争や軍事介入はせんと宣言しておけば大丈夫だと思うのだが…」

 

『ふむ。確かに今の縄張りも限界が近い。まぁ、それでも我らを私利私欲の為に利用しようと近づいてくる者もいる。まぁ、人間ならば倒してしまえばいいだろう?』

 

 ヘレナの同盟の提案にカルマは現実的な考え方を見せた。確かに獲物がいなくなった森や縄張りとして安全とはいえない場所に留まるよりも人間の街で協力関係を気づけば獲物には困らない事と仮に私利私欲の為に近づいてきてもどうにかできる自信があるようだ。

 

 タイラントフォレストパイソンのような大食漢の大蛇に苦戦して助け求めにきたのに大丈夫なのかとか訊ねた。すると、カルマは奥の洞窟を利用して作った巣にある卵を顎で示した。

 

『グリフォンの雌は卵を暖めるから天敵への対応は基本的に雄の役割。まぁ、私よりも強いグリフォンがいないからしたないけど…』

 

「まぁ、それなら取りあえずはダイアラック王国で面倒見る方向でヘレナと同盟結んでくれるか?王女様だからこの場で決めれるだろ?」

 

「ああ、後で父上らに報告しておくから大丈夫だ。ただ当分の間はジョウのところで置いて貰いたい。騎士団も全員が信頼できる人間ではないからな…」

 

 騎士団も全員がヘレナ達のように国を護るために在籍しているわけではない。中には貴族出身で傲慢な騎士もいるが、ロックスがそう言った者達はソドリア王国の騎士団学園に入学させている為に少ない方ではあるらしい。

 

 だが、神獣の一角でもあるグリフォンの力を得る為に家の方が何をしてくるか分からないというのだ。それはヘレナの父親も該当する為にため息をついた。

 

 その辺りは前の世界でもそうだ。だが、少なくともダイアラック王国の貴族なら貴族淑女御用達の貴族の教会である『聖光教会』が絡んでくるだろう。

 

「正直いえば、ダイアラック王国内はなんとかできる。問題は他国だな。情報が少ないからな…」

 

『大丈夫だ。食事にさえありつければ我々グリフォンはドラゴンにも挑む勇猛な一族だ。人間ごときに遅れは取らん』

 

『旦那のいう通りよ。ユティリアの魂を解放してくれた強き者だから頼った…』

 

「…俺は強くねぇよ?本当に強けりゃ、妖怪化しなくてもすんだと思う。俺が『弱かった』から仲間を護るために『強い力』に頼ったちまった。過大評価だぞ?」

 

 実際妖怪化は最後の切り札として取っておきたかったというのが本音だ。半妖怪の鎌鼬(カマイタチ)のまま、フォロカルに勝つことが出来れば良かったが、理想的なパーティーメンバーで挑んだにも関わらず、切り札に頼ってしまった事は俺の心の弱さがあったからだ。

 

 察したパーティーメンバーの顔色を見た。やはり複雑そうな心境だ。俺だって目の前で九条達が同じ目にあったら同じ気持ちになる。他のパーティーメンバーが俺みたいにならないように俺が強くならなければない。リリアンに氷を溶かして貰ったタイラントフォレストパイソンをトレジャーボックスにしまった。

 

 手を叩いてグリフォン達を連れて街に戻る事を伝えると、全員が顔を上げた。カルマは巣を背中にのせて欲しいと頼まれたのでその通りにし、イザベルの空間魔法でヴァルカンの街に戻った。

 

 


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